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なんとしてでも、結婚してみせます
第九話 久し振りにリーファとお茶会です
しおりを挟む「……ふ~ん。だからこの頃、やたら忙しいそうに走り回っていたのね」
いつものテラス席で、久し振りにリーファとお茶会です。
私の話を最後まで聞いた後、リーファが溜め息混じりな呆れた声で言います。少しだけ不機嫌そうに。
「執務と皇女の仕事をおろそかにはできませんから、僅かな時間を見付けては捜し回っていましたの」
なので、リーファと遊びに行く時間は全く取れませんでした。
「なるほど、だから私との約束を破ったのね……」
じとっとした目で、リーファに睨まれました。
かなり、怒ってますね。ランチとデザートを奢っても許してくれなさそう。別に、約束をしていなかったので破ってはいないのですが……ここは、素直に謝った方がいいですわね。
「ごめんなさい、リーファ」
私は手を合わせて謝ります。
「…………」
「リーファ……?」
無言の親友に、恐る恐る私は声を掛けます。
「セリア、ほんとに悪いと思ってる? 今回のこともそうだけど、セリアは全部一人で背負い込みし過ぎなのよ!! 私に相談するのは難しいのはわかるけど、それでも、色々とやりようはあったでしょ!!」
語気の強さは、リーファの心配心のあらわれ。語気とは違い、リーファは辛そうな苦しそうな表情をしていました。
その表情を間近で見て、私は思い出す。
教室で、私に何度も話し掛けようとしていたリーファの姿を。その時の心配そうな彼女の表情を。
私って、本当に馬鹿ですわ……
物事が起きると、視野が狭くなってしまう。自分ではそれほど狭くないと考えていても、実際は違った。
スミスを頼らずに怒られた時もそうでしたが、大切な親友も悲しませていたのですね。
気付くと同時に、胸の奥がギュッと締め付けられて痛みます。
「…………ごめんなさい。リーファ」
その言葉しか浮かんできませんでした。
「ほんとに、悪いって思ってる?」
リーファにそう訊かれ、私はコクリと小さく頷きます。
「……相談ができなくても、誠意のある態度をとるべきでしたわ」
心のどこかで、リーファなら大丈夫って思っていました。
愚かですわ。なんて、私は馬鹿なの。
人の心もなまものなのに。体の傷は見えるけど、心の傷は見えないのに。私はーー。
「親友に無視されるのって、かなりキツいものなんだからね」
泣きそうな表情でリーファは言います。
「ここに誓いますわ。二度と、リーファを悲しませたりはしません」
この言葉に力はなにもないけれど、私の心に深く刻み込みます。
「本当に?」
「ええ、誓いますわ」
「なら、許してあげる」
リーファの顔に笑顔が戻ります。
「ありがとう、リーファ」
私の顔にも笑顔が戻ります。
少しの間の後、リーファが呆れながら言います。
「……それにしても、家族皆で鬼ごっこって、セリアの家族って変わってて楽しいよね」
何十にもオブラートに包んでこれよね。
変わってるっていうか、普通ではないですわ。他の王族や貴族では、絶対ありえませんもの。下手したら、平民の中でもないでしょうね。
「退屈はしませんわ。傍から見る分には楽しいかもしれませんが、巻き込まれると、これほど面倒くさい家族はいませんわね」
苦笑しながら、私は答えます。
「その面倒くささがいいんでしょ?」
微笑みながらリーファは訊いてきます。
「まぁ、癖になりますよね」
正直な気持ち。
「あ~あ。セリアに先越されちゃった。セリア、婚姻おめでとう!!」
満面な笑みでリーファは祝福してくれました。
「ありがとう、リーファ」
私がお礼を口にすると、リーファがずいっと顔を寄せてきました。
「で、セリア、どうだった?」
小さな声で尋ねてきます。目がらんらんと輝いてます。ちょっと引くぐらいに。
「どうだったとは?」
「とぼけちゃって。婚姻したんでしょ。だったら決まってるじゃない」
そこまで言われたら、鈍感な私でも理解できますわ。瞬時に顔が真っ赤になります。
「なっ、何を訊いてますの!? まだに決まってるでしょ!!」
思わず、立ち上がって叫んでしまいましたわ。
いくら親友とはいえ、そういう面はあけすけに訊くものじゃないでしょ!! 興味あるのは理解できるけど。せめて、誰もいない私の部屋ならわかりますが。
「あっ、そうか。さすがに、結婚式の前に子供ができたら駄目よね」
納得顔で呟くリーファ。
「確かにそうですけど、口にすることではありませんわ!!」
抗議する私に、リーファはニヤリと笑い答えます。
「何言ってるのよ。一緒に下着を買いに行った仲じゃない」
リーファのニヤリ顔は、お茶会が終わっても消えませんでした。
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