95 / 354
第二章 超ハードモードの人生を終わらせるために頑張ります
行くわけないでしょ
しおりを挟む久々のアレク化した殿下から必死で逃げ出したのは一週間前。
逃げ出したところで、次の日には教室で会うんだから、結局のところ逃げ切れはしないんだけどね。
いつも以上に引っつかれたわ。まだ十歳だから許される距離だけど、後二年経ったら絶対許されないわね。そんな距離感だった。
人の目をはばからず、教室でも食堂でも特に気にもとめない。……マジで勘弁してほしいわ。人に見られて喜ぶ性癖はないんだからね。突き飛ばして逃げ出したいけど、相手は王族。出来る訳ないじゃない。それでも嫌がる素振りを見せてるのに、殿下は気付かない振りを決め込んでる。周囲も、何故か生温かい目で見られるし、精神がゴリゴリと音をたてて削られたわ。遠くから、ディア様たちが睨んでたしね。
全く。そもそも、私ちっとも悪くないのに。理不尽過ぎるわ。
それでも、唯一心落ち着く時間が魔法学の基礎講座の時間って、本末転倒でしょ。
至って静かだわ。誰も話し掛けてこないからね。前からそうだったけど。ディア様はケーキ屋さんのことなど、始めからなかったことのようにしてるし。教室内では睨んでこないしね。まぁいいけど。
その日も、いつもと同じよいに殿下との攻防を終えて帰って来たら、珍しくお父様に執務室に来るように言われた。ユズの件以来ね。
私、何かした? ここ最近は大人しくしてた筈だけど。ちょっぴり不安になる。だって、執務室に呼ばれる時って何かあった時だけだからね。思いつくのは、ケーキ屋さんの一件くらいね。それもひと月経ってるし、違うよね。
そんなことを考えながらノックをする。そして執務室に入ると、眉間に皺を寄せたお父様が待っていた。私を見ると笑みを浮かべる。
「疲れてないかい? マリエール」
「私は大丈夫ですわ。……パパの方が疲れてるみたい。大丈夫なの?」
お父様が何かいいたそうにしている。もしかして、この話し方? ためしに、お父様が喜ぶようにパパ呼びしたら、眉間の皺がなくなったわ……クライシスさんが良い笑顔だこと。
「パパは大丈夫だよ。ちょっと、信じられない招待状を貰って腹が立っただけだから」
「招待状ですか?」
そう尋ねると、嫌々ながらも見せてくれた。
あ~~これは、信じられないわ。公爵家としては、反目しながらも最低限の繋がりが欲しいから出すのは分かるけど……これはちょっと、私でも嫌だわ。
「出席しなければいけませんか? 私は心底出席したくはないのですが」
話し方が元に戻ったことを残念そうにするお父様。
「嫌なら出席しなくていい。グリード家としても、特に付き合わなければならない相手でもないからな」
ですよね~~
その方がディア様にとってもいいんじゃないの。嫌いな相手に誕生日を祝われてもね……私なら絶対嫌だわ。っていうか、出せる神経疑うわ。だって政敵に出すんだもの。証拠はないとはいえ、間接的に私を害しようとしたのに信じられない。
「では、出席しない旨をお伝え下さい。パパ」
満面な笑みで答える。若干、パパを強く発音してね。
「ああ。分かった。ただ、学園で何か言われるかもしれないから、そのことは頭に入れといてくれ」
確かに、何か接触してきそうですわね。
「分かりましたわ。パパ」
そう答えると、私は執務室を後にした。
一応、明日殿下の耳に入れとかないといけないわね。ほんと面倒くさいわ。
37
お気に入りに追加
5,452
あなたにおすすめの小説
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
選ばれたのは私ではなかった。ただそれだけ
暖夢 由
恋愛
【5月20日 90話完結】
5歳の時、母が亡くなった。
原因も治療法も不明の病と言われ、発症1年という早さで亡くなった。
そしてまだ5歳の私には母が必要ということで通例に習わず、1年の喪に服すことなく新しい母が連れて来られた。彼女の隣には不思議なことに父によく似た女の子が立っていた。私とあまり変わらないくらいの歳の彼女は私の2つ年上だという。
これからは姉と呼ぶようにと言われた。
そして、私が14歳の時、突然謎の病を発症した。
母と同じ原因も治療法も不明の病。母と同じ症状が出始めた時に、この病は遺伝だったのかもしれないと言われた。それは私が社交界デビューするはずの年だった。
私は社交界デビューすることは叶わず、そのまま治療することになった。
たまに調子がいい日もあるが、社交界に出席する予定の日には決まって体調を崩した。医者は緊張して体調を崩してしまうのだろうといった。
でも最近はグレン様が会いに来ると約束してくれた日にも必ず体調を崩すようになってしまった。それでも以前はグレン様が心配して、私の部屋で1時間ほど話をしてくれていたのに、最近はグレン様を姉が玄関で出迎え、2人で私の部屋に来て、挨拶だけして、2人でお茶をするからと消えていくようになった。
でもそれも私の体調のせい。私が体調さえ崩さなければ……
今では月の半分はベットで過ごさなければいけないほどになってしまった。
でもある日婚約者の裏切りに気づいてしまう。
私は耐えられなかった。
もうすべてに………
病が治る見込みだってないのに。
なんて滑稽なのだろう。
もういや……
誰からも愛されないのも
誰からも必要とされないのも
治らない病の為にずっとベッドで寝ていなければいけないのも。
気付けば私は家の外に出ていた。
元々病で外に出る事がない私には専属侍女などついていない。
特に今日は症状が重たく、朝からずっと吐いていた為、父も義母も私が部屋を出るなど夢にも思っていないのだろう。
私は死ぬ場所を探していたのかもしれない。家よりも少しでも幸せを感じて死にたいと。
これから出会う人がこれまでの生活を変えてくれるとも知らずに。
---------------------------------------------
※架空のお話です。
※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。
※現実世界とは異なりますのでご理解ください。
お飾り公爵夫人の憂鬱
初瀬 叶
恋愛
空は澄み渡った雲1つない快晴。まるで今の私の心のようだわ。空を見上げた私はそう思った。
私の名前はステラ。ステラ・オーネット。夫の名前はディーン・オーネット……いえ、夫だった?と言った方が良いのかしら?だって、その夫だった人はたった今、私の足元に埋葬されようとしているのだから。
やっと!やっと私は自由よ!叫び出したい気分をグッと堪え、私は沈痛な面持ちで、黒い棺を見つめた。
そう自由……自由になるはずだったのに……
※ 中世ヨーロッパ風ですが、私の頭の中の架空の異世界のお話です
※相変わらずのゆるふわ設定です。細かい事は気にしないよ!という読者の方向けかもしれません
※直接的な描写はありませんが、性的な表現が出てくる可能性があります
結婚の約束を信じて待っていたのに、帰ってきた幼馴染は私ではなく義妹を選びました。
田太 優
恋愛
将来を約束した幼馴染と離れ離れになったけど、私はずっと信じていた。
やがて幼馴染が帰ってきて、信じられない姿を見た。
幼馴染に抱きつく義妹。
幼馴染は私ではなく義妹と結婚すると告げた。
信じて待っていた私は裏切られた。
兄を溺愛する母に捨てられたので私は家族を捨てる事にします!
ユウ
恋愛
幼い頃から兄を溺愛する母。
自由奔放で独身貴族を貫いていた兄がようやく結婚を決めた。
しかし、兄の結婚で全てが崩壊する事になった。
「今すぐこの邸から出て行ってくれる?遺産相続も放棄して」
「は?」
母の我儘に振り回され同居し世話をして来たのに理不尽な理由で邸から追い出されることになったマリーは自分勝手な母に愛想が尽きた。
「もう縁を切ろう」
「マリー」
家族は夫だけだと思い領地を離れることにしたそんな中。
義母から同居を願い出られることになり、マリー達は義母の元に身を寄せることになった。
対するマリーの母は念願の新生活と思いきや、思ったように進まず新たな嫁はびっくり箱のような人物で生活にも支障が起きた事でマリーを呼び戻そうとするも。
「無理ですわ。王都から領地まで遠すぎます」
都合の良い時だけ利用する母に愛情はない。
「お兄様にお任せします」
実母よりも大事にしてくれる義母と夫を優先しすることにしたのだった。
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
初恋の幼馴染に再会しましたが、嫌われてしまったようなので、恋心を魔法で封印しようと思います【完結】
皇 翼
恋愛
「昔からそうだ。……お前を見ているとイライラする。俺はそんなお前が……嫌いだ」
幼馴染で私の初恋の彼――ゼルク=ディートヘルムから放たれたその言葉。元々彼から好かれているなんていう希望は捨てていたはずなのに、自分は彼の隣に居続けることが出来ないと分かっていた筈なのに、その言葉にこれ以上ない程の衝撃を受けている自分がいることに驚いた。
「な、によ……それ」
声が自然と震えるのが分かる。目頭も火が出そうなくらいに熱くて、今にも泣き出してしまいそうだ。でも絶対に泣きたくなんてない。それは私の意地もあるし、なによりもここで泣いたら、自分が今まで貫いてきたものが崩れてしまいそうで……。だから言ってしまった。
「私だって貴方なんて、――――嫌いよ。大っ嫌い」
******
以前この作品を書いていましたが、更新しない内に展開が自分で納得できなくなったため、大幅に内容を変えています。
タイトルの回収までは時間がかかります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる