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第二章 超ハードモードの人生を終わらせるために頑張ります

隠す気は全くないんですね

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「大変だったな。マリエール」

 顔を合わせるなり殿下はそう切り出した。

 殿下が何を指して言ったのか、直ぐに分かったよ。ていうか、何で知ってるの。あ~~影か。納得。

 ということは、店内にいて、その様子を逐一報告させてたってことよね。それを隠そうともしないところが、殿下だわ。ある意味潔いって思えないこともないけど。殿下の性質を身に沁みて知ってる私でもちょっと引くわ。おくびにも出さないけどね。

「あれぐらいは、たいしたことではありませんわ。何もしなくても自滅してくれましたから」

 私としては嫌味を笑みで返しただけだからね。殆ど何もしていない。勝手に自分で爆弾を撒いて、自分がそれに引っ掛かっただけだからね。

「確かにそうだよな。でも、これで今年の社交界楽しくなりそうだよな」

 それはそれは楽しそうな笑みを浮かべながら、殿下は言った。

「社交界が始まるのは二か月先ですよね。その時までには消えるのでは?」

 人の噂、特に貴族間の噂は消費期限が短いからね。直ぐに食べないと食べれなくなる。一週間前の出来事でも、ものによっては噂されないこともあるからね。昨日までされてても。

 それが常識な世界で、二か月前、それもケーキ屋さんでの出来事だよ。噂のうも囁かれないのでは。

「ああ。それ一つなら囁かれないな。噂にすらならないな」

「だったら?」

「言っただろ。それ一つならって」

 ああ、そういうことね。殿下の言いたいことも狙いも理解出来たわ。

「つまり、色々付け加えるということですね。因みに大元は、アーティ伯爵家の不祥事ですか。アーティ伯爵家がポーター公爵家との傘下だったことは有名ですもの。どうして、男爵家に降格されたのか……今年の社交界は大盛り上がりですよね」

 自然と浮かぶのは黒い笑み。十歳の子供がする表情じゃないよね。当然、殿下の表情も。

 たぶん、殿下は裏から何かするつもりね。

「俺たちが参加出来ないのが残念だけどな」

 同感です。

「影からパーティーの様子を観察するのも楽しそうですわね」

 さり気に提案してみました。殿下を止めたりしませんよ。

「そうだな」

 殿下もノリノリですね。反対にインディー様と護衛さんの表情は暗いですけど。そこは、見なかったことにしましょう。それはさておき、話を元に戻しますが、

「……それにしても、驚きましたわ。学園側がアーティ様の退学の理由に関して隠さなかった事に」

「隠しても無駄だろ」

「確かにそうですが……」

 そうだとしても、マジ驚いたんだから。さすがに詳細までとはいかないけど、学園は退学の理由をちゃんと発表した事にね。当然それは、子供から親まで伝わる訳で。まぁこの時点で、まだ多数の親は半信半疑だったと思うよ。だけどね……

 それから駄目押しとばかりに、男爵に降格。

 それが、決定打となったね。

 確かに殿下の言う通り、隠しても無駄だって分かるけど……

 それまで何かと煩かったポーター公爵家は一応静観してる。

 そんな中で、ディア様による私に対しての暴言。さぞかし、公爵様は頭が痛いでしょうね。だからこそ腑に落ちないのだ。ディア様のお兄様の態度がね。普通なら、慌てて止める筈でしょ。

「気にするな。奴が何考えてるか探りをいれてるから」

 さすが殿下。私の不安な理由を正確に把握してるみたい。心強い台詞ですが、背中のゾワゾワが止まらない。

「それよりも……」

 背中のゾワゾワの方が気になって、かなり不機嫌そうな殿下の声に気付かなかった。気付いた時にはもう遅い。

「カイン殿下……?」

 危険を察知した私は反射的に立ち上がり距離をとる。危ない。危ない。捕まる所だった。

「マリエールにそんな気がないのは分かってるけど、俺以外の男を気にするのはとても不愉快だ」

 ヒェ!! 久々のアレク降臨ーー。

 一定の距離を保ちながら後退る私。ゆっくりと近付いてくる殿下。

「マリエールには、いつも俺だけを想っていて欲しい。俺がそうだから」

 それ、殿下が言うと恐怖の言葉だわ。




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