94 / 354
第二章 超ハードモードの人生を終わらせるために頑張ります
隠す気は全くないんですね
しおりを挟む「大変だったな。マリエール」
顔を合わせるなり殿下はそう切り出した。
殿下が何を指して言ったのか、直ぐに分かったよ。ていうか、何で知ってるの。あ~~影か。納得。
ということは、店内にいて、その様子を逐一報告させてたってことよね。それを隠そうともしないところが、殿下だわ。ある意味潔いって思えないこともないけど。殿下の性質を身に沁みて知ってる私でもちょっと引くわ。おくびにも出さないけどね。
「あれぐらいは、たいしたことではありませんわ。何もしなくても自滅してくれましたから」
私としては嫌味を笑みで返しただけだからね。殆ど何もしていない。勝手に自分で爆弾を撒いて、自分がそれに引っ掛かっただけだからね。
「確かにそうだよな。でも、これで今年の社交界楽しくなりそうだよな」
それはそれは楽しそうな笑みを浮かべながら、殿下は言った。
「社交界が始まるのは二か月先ですよね。その時までには消えるのでは?」
人の噂、特に貴族間の噂は消費期限が短いからね。直ぐに食べないと食べれなくなる。一週間前の出来事でも、ものによっては噂されないこともあるからね。昨日までされてても。
それが常識な世界で、二か月前、それもケーキ屋さんでの出来事だよ。噂のうも囁かれないのでは。
「ああ。それ一つなら囁かれないな。噂にすらならないな」
「だったら?」
「言っただろ。それ一つならって」
ああ、そういうことね。殿下の言いたいことも狙いも理解出来たわ。
「つまり、色々付け加えるということですね。因みに大元は、アーティ伯爵家の不祥事ですか。アーティ伯爵家がポーター公爵家との傘下だったことは有名ですもの。どうして、男爵家に降格されたのか……今年の社交界は大盛り上がりですよね」
自然と浮かぶのは黒い笑み。十歳の子供がする表情じゃないよね。当然、殿下の表情も。
たぶん、殿下は裏から何かするつもりね。
「俺たちが参加出来ないのが残念だけどな」
同感です。
「影からパーティーの様子を観察するのも楽しそうですわね」
さり気に提案してみました。殿下を止めたりしませんよ。
「そうだな」
殿下もノリノリですね。反対にインディー様と護衛さんの表情は暗いですけど。そこは、見なかったことにしましょう。それはさておき、話を元に戻しますが、
「……それにしても、驚きましたわ。学園側がアーティ様の退学の理由に関して隠さなかった事に」
「隠しても無駄だろ」
「確かにそうですが……」
そうだとしても、マジ驚いたんだから。さすがに詳細までとはいかないけど、学園は退学の理由をちゃんと発表した事にね。当然それは、子供から親まで伝わる訳で。まぁこの時点で、まだ多数の親は半信半疑だったと思うよ。だけどね……
それから駄目押しとばかりに、男爵に降格。
それが、決定打となったね。
確かに殿下の言う通り、隠しても無駄だって分かるけど……
それまで何かと煩かったポーター公爵家は一応静観してる。
そんな中で、ディア様による私に対しての暴言。さぞかし、公爵様は頭が痛いでしょうね。だからこそ腑に落ちないのだ。ディア様のお兄様の態度がね。普通なら、慌てて止める筈でしょ。
「気にするな。奴が何考えてるか探りをいれてるから」
さすが殿下。私の不安な理由を正確に把握してるみたい。心強い台詞ですが、背中のゾワゾワが止まらない。
「それよりも……」
背中のゾワゾワの方が気になって、かなり不機嫌そうな殿下の声に気付かなかった。気付いた時にはもう遅い。
「カイン殿下……?」
危険を察知した私は反射的に立ち上がり距離をとる。危ない。危ない。捕まる所だった。
「マリエールにそんな気がないのは分かってるけど、俺以外の男を気にするのはとても不愉快だ」
ヒェ!! 久々のアレク降臨ーー。
一定の距離を保ちながら後退る私。ゆっくりと近付いてくる殿下。
「マリエールには、いつも俺だけを想っていて欲しい。俺がそうだから」
それ、殿下が言うと恐怖の言葉だわ。
応援ありがとうございます!
1
お気に入りに追加
5,406
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる