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「あ、ごめん、すぐ乾かすねー」
「ん」
動かしながら乾かすってこんな感じ?
難しい、余裕で出来ると思ったんだけどなあ……
「もう終わる?腰死ぬんだけど」
「んー、もちょっとー」
「適当でいいよ」
「皇輝がちゃんと乾かせって言ったんじゃん」
「俺はいんだよ、碧がいっつもテキトーだろうから言ってんの」
「……!」
中腰で屈んだ状態の皇輝の横からドライヤーをかけていたもんだから、急に腰を抱かれて動揺した。
危ない、皇輝の頭にドライヤー落とすとこだった。
物を持ってる時にそんなどきどきしちゃうことするんじゃないよ!
「終わり終わり、まじでこれ腰きっつ」
「もっ……も!」
「何かわいい顔して」
「もおおおお」
「かわいい牛だな」
「!」
ドライヤーを取り上げられて、ついでのようにちゅっとキスをされた。
何それ何それなにそれ何その慣れたような流れ!
嬉しいようなムカつくような、でもやっぱり嬉しくて、怒るに怒れない。
もうそろそろ腹減ったんじゃない、さっきのピザ頼も、と肩を叩かれる。
多分にやけてしまってる顔を見られたくなくて、拗ねたようにそっぽを向くと、そんなことはお見通しと言わんばかりに頬をつつかれた。
なんなの悔しい、でもお見通しとばかりにわかってもらってるのも嬉しい。
何やられても嬉しいんだからもう僕だめだ。
ピザを待ってる間、つけっぱなしだったテレビを並んで観たりして。
ほんとはくっついてみたいんだけど、でもご飯前だしそんな空気になっても困るし、それより何よりなんかちょっと、自分からくっつくのも恥ずかしくて、ちょっとそわそわしてしまう。
ちょいちょいちょっかいを掛けて来たのは皇輝だ、そりゃあ意識してしまってもおかしくない。僕の頭がそういうことばっかなんじゃない。
……そんなにおめでたい頭じゃないんだから。
◇◇◇
「はーピザ久しぶりに食ったわ」
「僕も」
雑談をしながら片付ける。
綺麗な部屋だからしっかり綺麗に片付けなければ、と思ってしまって、自分の家ではしない癖にきっちりテーブルまで拭きあげる。
うん、ぴっかぴかだ。
「俺の部屋行ってて」
「へあ」
「お茶淹れてく、俺今日やる映画観たいんだよな、いい?」
「え、あ、うん」
だよな、もし途中でおばさん達帰ってきてもあれだし、ほら、ねえ?途中で部屋に移動するよりは最初から部屋で落ち着いて観た方がいいからで、そんな、そんな、ねえ、そんな……
「……あーやだ、僕の頭がやばい」
なんか皇輝の行動全部えっちな方向に持ってってない?
思わせぶりな行動しやがって、って思うんだけど、もしかして皇輝からしたら普通のことだったんじゃない?
皇輝じゃなくて、僕がすけべなんじゃないの?
そりゃあ皇輝のこと考えてひとりでしたりしましたよ、ええしました。
でもこんな、家にお邪魔してずっとそんなことばっか考えてる僕の頭がピンク過ぎるんじゃないの、皇輝なんてずっとしれっとした顔してるじゃないか。
「恥ずかしい……」
階段を上がる度にずれそうになるズボンを抑えながら皇輝の部屋に向かう。
……トイレ。
ちらっと見て、一回抜いた方が……と考える。
いやいやいやいや、人様のおうちだぞ、それに皇輝はお茶淹れてるだけだ、すぐにこっちに来る。そんな早業は無理だ。
って馬鹿か、またなんでそんな方向で考えちゃうんだよ、僕の頭と躰は猿になっちゃったのか。
……どうしよ、皇輝の部屋入ったら更に興奮しちゃったりしない?
皇輝の匂いや、ベッドを見てしまって平気でいられる?考え方もっと暴走しない?
「あれ、まだ入ってなかったの」
「!」
「丁度良かった、ドア開けてよ」
「う、うん」
扉の前でもだもだしていたからか、皇輝に追いつかれてしまったようだ。
皇輝は両手にマグカップ、脇にスナック菓子を抱えていた。トレイを使え、確かあったぞ、見たぞ。
「どっか適当に座って」
「うん……」
促されて、ベッドを背もたれにしてクッションの上に座ることにした。
ベッドの上はだめです、爆発します。
皇輝も隣に座って、テレビをつける。
まだ映画が始まるには少しだけ早くて、テレビには広告だけが流れていた。
「観たことある?今日のやつ」
「ない、ホラーだっけ」
「そう、碧と観れて丁度良かった」
「……僕が怖がると思ってる?」
「いや、俺が」
「え」
「だって広い家にひとりでホラー観るって結構怖くない?」
「……確かに」
でもそんなこと言われたら僕も怖くなるやつでは?そもそも別にホラー得意って訳でもないし、なんならこわいのはちょっとお断りだし……やっぱりやめないかな。やめないか。
「こわかったらこわ~いってくっついてきてもいいからな」
「しないよ!」
「電気消す?」
「消さない!」
本当はこわくないだろ、電気消すって!
いつもいつもこうやっておちょくるんだからな、わかってるんだからな!
「皇輝が!こわいなら!くっついてきてもいいけど!」
「あー、じゃあこわかったら碧にくっつくわ」
「……ひぇ」
「引くなよ」
引いたけどきゅんとしちゃったじゃないか、皇輝が僕にくっつきたくてくっつくんなら嬉しいって思っちゃうんだぞ、今の僕はもう恋愛脳になっちゃってる。我ながらうざい。
「ん」
動かしながら乾かすってこんな感じ?
難しい、余裕で出来ると思ったんだけどなあ……
「もう終わる?腰死ぬんだけど」
「んー、もちょっとー」
「適当でいいよ」
「皇輝がちゃんと乾かせって言ったんじゃん」
「俺はいんだよ、碧がいっつもテキトーだろうから言ってんの」
「……!」
中腰で屈んだ状態の皇輝の横からドライヤーをかけていたもんだから、急に腰を抱かれて動揺した。
危ない、皇輝の頭にドライヤー落とすとこだった。
物を持ってる時にそんなどきどきしちゃうことするんじゃないよ!
「終わり終わり、まじでこれ腰きっつ」
「もっ……も!」
「何かわいい顔して」
「もおおおお」
「かわいい牛だな」
「!」
ドライヤーを取り上げられて、ついでのようにちゅっとキスをされた。
何それ何それなにそれ何その慣れたような流れ!
嬉しいようなムカつくような、でもやっぱり嬉しくて、怒るに怒れない。
もうそろそろ腹減ったんじゃない、さっきのピザ頼も、と肩を叩かれる。
多分にやけてしまってる顔を見られたくなくて、拗ねたようにそっぽを向くと、そんなことはお見通しと言わんばかりに頬をつつかれた。
なんなの悔しい、でもお見通しとばかりにわかってもらってるのも嬉しい。
何やられても嬉しいんだからもう僕だめだ。
ピザを待ってる間、つけっぱなしだったテレビを並んで観たりして。
ほんとはくっついてみたいんだけど、でもご飯前だしそんな空気になっても困るし、それより何よりなんかちょっと、自分からくっつくのも恥ずかしくて、ちょっとそわそわしてしまう。
ちょいちょいちょっかいを掛けて来たのは皇輝だ、そりゃあ意識してしまってもおかしくない。僕の頭がそういうことばっかなんじゃない。
……そんなにおめでたい頭じゃないんだから。
◇◇◇
「はーピザ久しぶりに食ったわ」
「僕も」
雑談をしながら片付ける。
綺麗な部屋だからしっかり綺麗に片付けなければ、と思ってしまって、自分の家ではしない癖にきっちりテーブルまで拭きあげる。
うん、ぴっかぴかだ。
「俺の部屋行ってて」
「へあ」
「お茶淹れてく、俺今日やる映画観たいんだよな、いい?」
「え、あ、うん」
だよな、もし途中でおばさん達帰ってきてもあれだし、ほら、ねえ?途中で部屋に移動するよりは最初から部屋で落ち着いて観た方がいいからで、そんな、そんな、ねえ、そんな……
「……あーやだ、僕の頭がやばい」
なんか皇輝の行動全部えっちな方向に持ってってない?
思わせぶりな行動しやがって、って思うんだけど、もしかして皇輝からしたら普通のことだったんじゃない?
皇輝じゃなくて、僕がすけべなんじゃないの?
そりゃあ皇輝のこと考えてひとりでしたりしましたよ、ええしました。
でもこんな、家にお邪魔してずっとそんなことばっか考えてる僕の頭がピンク過ぎるんじゃないの、皇輝なんてずっとしれっとした顔してるじゃないか。
「恥ずかしい……」
階段を上がる度にずれそうになるズボンを抑えながら皇輝の部屋に向かう。
……トイレ。
ちらっと見て、一回抜いた方が……と考える。
いやいやいやいや、人様のおうちだぞ、それに皇輝はお茶淹れてるだけだ、すぐにこっちに来る。そんな早業は無理だ。
って馬鹿か、またなんでそんな方向で考えちゃうんだよ、僕の頭と躰は猿になっちゃったのか。
……どうしよ、皇輝の部屋入ったら更に興奮しちゃったりしない?
皇輝の匂いや、ベッドを見てしまって平気でいられる?考え方もっと暴走しない?
「あれ、まだ入ってなかったの」
「!」
「丁度良かった、ドア開けてよ」
「う、うん」
扉の前でもだもだしていたからか、皇輝に追いつかれてしまったようだ。
皇輝は両手にマグカップ、脇にスナック菓子を抱えていた。トレイを使え、確かあったぞ、見たぞ。
「どっか適当に座って」
「うん……」
促されて、ベッドを背もたれにしてクッションの上に座ることにした。
ベッドの上はだめです、爆発します。
皇輝も隣に座って、テレビをつける。
まだ映画が始まるには少しだけ早くて、テレビには広告だけが流れていた。
「観たことある?今日のやつ」
「ない、ホラーだっけ」
「そう、碧と観れて丁度良かった」
「……僕が怖がると思ってる?」
「いや、俺が」
「え」
「だって広い家にひとりでホラー観るって結構怖くない?」
「……確かに」
でもそんなこと言われたら僕も怖くなるやつでは?そもそも別にホラー得意って訳でもないし、なんならこわいのはちょっとお断りだし……やっぱりやめないかな。やめないか。
「こわかったらこわ~いってくっついてきてもいいからな」
「しないよ!」
「電気消す?」
「消さない!」
本当はこわくないだろ、電気消すって!
いつもいつもこうやっておちょくるんだからな、わかってるんだからな!
「皇輝が!こわいなら!くっついてきてもいいけど!」
「あー、じゃあこわかったら碧にくっつくわ」
「……ひぇ」
「引くなよ」
引いたけどきゅんとしちゃったじゃないか、皇輝が僕にくっつきたくてくっつくんなら嬉しいって思っちゃうんだぞ、今の僕はもう恋愛脳になっちゃってる。我ながらうざい。
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