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「はい終わり……なんでズボン抑えてんの」
「いやこれ大きくて、抑えてないとずれる……」
「もう脱げば」
「他所様のおうちでパンイチはどうかと思って」
「上着てるし大丈夫だよ」
借りた皇輝の服は当然僕には大きくて、下に弟とかもいないし、サイズアウトした服を取ってる訳もないから替えもない。
一応履けはするんだけど、少し動くと脱げてしまいそうになるので、ずれては上に引き上げ、ずれないように抑えたりで忙しい。
「でもさあ」
「いいじゃん、碧だとワンピースみたいだし」
「よくはないよ」
「彼氏んちに泊まりに来ましたって感じでかわいくて俺はすきだけど」
「ふぁっ」
またそういうことをしれっという!
その通りだけど!でも!普通は!そんな顔で言わない!多分!
「はいはい、じゃあ次俺も入るから碧は戻ってて、テレビでもゲームでもしてていいから」
「うん……いやズボン離して」
「脱ぐんでしょ?」
「ぬ……がない!」
「えー、脱いだ方がかわいいよ」
「かわいくなくていい!」
なんかあんなこと言われて脱ぐのも意識してるみたいで……いや意識してるけど、恥ずかしいし、自分で脱げるのに脱がされそうになってるのも恥ずかしいしで、皇輝の手を叩き落としてリビングに戻る。
中学の頃からってのは上手く隠してた癖に、バレてしまってからは割とストレートに投げてくるから困る。
想定外過ぎる。
あんなにかわいいかわいい言われるなんて思ってなかった。
……そりゃ嬉しくないかと言われたらめちゃくちゃ嬉しいに決まってんじゃん!ってなるんだけど。
でもだからといって照れない訳ではない。
恥ずかしいし、どういう顔していいかわからないし。
でもだから言うなって言う訳じゃなくて……
……寧ろ言ってほしくて、ああ、でもやっぱり恥ずかしい。
「み、みず飲も」
キッチンにお邪魔して、グラスを探す。
さっき使われたお皿やグラスが綺麗に洗われ、伏せられていた。
これでいいや、とグラスを借りて、冷蔵庫を開けるのは躊躇われて水道から直接注ぐ。
それを口にしながら、ぐるりと周りを見てみる。キッチンまで綺麗な家。
お手伝いさんが週に何回か来るって聞いたことある。食事の作り置きとか、清掃とか。
昔は遠足のお弁当すらお手伝いさんの作ったものということで、暗い家庭なのではないかと噂もあった。
本人はあっさりしたもので、別にそういうのは気にしてないと。
確かに両親とも仕事や友人との約束なんかで家にいることは少ないらしいが、三者面談とか、卒業式入学式とか、大事な用事は来てくれるし、愛情がない家庭ではないみたいだった。
お母さんも明るい人で、うちの母さんともお互いの息子のことでたまに連絡を取ってるみたいだし、以前遊びに来た時は急いでケーキを買いに行って僕に持ってきたこともある。行動力がある。
一人息子で、幼児の頃は過保護だったようで、今くらい放っておかれる方が気が楽だとも言っていた。
まあわからないではない。うちだって甘やかしはしないけど、割とうるさい方だから。
グラスを洗い、同じように伏せておく。
リビングに戻ってテレビをつける。バラエティ番組では美味しそうな料理の特集をしていた。
お菓子のせいでお腹も膨れたと思っていたけど、お腹空いてきたかも。ピザ楽しみ、なかなかとることないからなあ。
そんなことを考えてると、うっすらドライヤーの音が聞こえた。
皇輝も上がったらしい。
よーしよしよし、そんなん僕もドライヤーしに行くしかないよね!
人のなんて乾かしたことないけど、自分のとそんな変わることはないだろう。
「こーき!ドライヤー僕が!す……る……なんで上着てないの?」
「いや急に入ってきて言う台詞じゃない」
勢いよく扉を開くと、上半身裸の皇輝が髪を乾かしていて、そんなこと想定してなかったから動きが止まってしまう。
あああ、部活後の着替えを思い出してしまった。
「何、碧が乾かしてくれるって?」
「う、そ、そのつもり……だったけど」
「だったけど?」
「……上、着て」
「だからなんでそこに拘んのかな」
「いいから!早く!」
勝手にドライヤーかけにきて、勝手に服を着ろと騒ぐなんて随分迷惑なやつだな、わかってるけどさ、でもほら、折角なら出来ることやっておきたいっていうか……
皇輝に乾かして貰ったの、気持ち良かったから、同じように思ってくれたら嬉しいなあって……
「着たけど」
「しゃがんで」
「ええー……」
「届かないもん」
「俺の腰が死ぬやつ」
ぶつぶつ文句を言いながらも中腰になってくれる。
ドライヤーを手に取って、スイッチを入れる。
僕の塩素にやられた髪と違って、つやっつやのさらっさらの綺麗な髪。
お風呂上がりで一番匂いが強い時だからかな、確かに同じ匂いがする。やばい、にやけちゃう。同じ匂いってやばい。
良かった、明日休みで。
こんな同じ匂いで学校行ったら弄られちゃうだろうし。
「熱い」
「えっごめん」
「同じとこに当てないで動かして」
「そうしてるつもりなんだけどー、ううん、人のやるの難しい、皇輝上手かったのにな、誰かのやったことある?」
「ないけど」
「えー、気持ちかったのにな」
「……気持ち良かったの?」
「うん、だから僕も皇輝にしようと思って」
はー……とでっかい溜息。びっくりしちゃった。
そんなに熱かったかな、と思ってると、また手が止まってるぞ、と言われた。
「いやこれ大きくて、抑えてないとずれる……」
「もう脱げば」
「他所様のおうちでパンイチはどうかと思って」
「上着てるし大丈夫だよ」
借りた皇輝の服は当然僕には大きくて、下に弟とかもいないし、サイズアウトした服を取ってる訳もないから替えもない。
一応履けはするんだけど、少し動くと脱げてしまいそうになるので、ずれては上に引き上げ、ずれないように抑えたりで忙しい。
「でもさあ」
「いいじゃん、碧だとワンピースみたいだし」
「よくはないよ」
「彼氏んちに泊まりに来ましたって感じでかわいくて俺はすきだけど」
「ふぁっ」
またそういうことをしれっという!
その通りだけど!でも!普通は!そんな顔で言わない!多分!
「はいはい、じゃあ次俺も入るから碧は戻ってて、テレビでもゲームでもしてていいから」
「うん……いやズボン離して」
「脱ぐんでしょ?」
「ぬ……がない!」
「えー、脱いだ方がかわいいよ」
「かわいくなくていい!」
なんかあんなこと言われて脱ぐのも意識してるみたいで……いや意識してるけど、恥ずかしいし、自分で脱げるのに脱がされそうになってるのも恥ずかしいしで、皇輝の手を叩き落としてリビングに戻る。
中学の頃からってのは上手く隠してた癖に、バレてしまってからは割とストレートに投げてくるから困る。
想定外過ぎる。
あんなにかわいいかわいい言われるなんて思ってなかった。
……そりゃ嬉しくないかと言われたらめちゃくちゃ嬉しいに決まってんじゃん!ってなるんだけど。
でもだからといって照れない訳ではない。
恥ずかしいし、どういう顔していいかわからないし。
でもだから言うなって言う訳じゃなくて……
……寧ろ言ってほしくて、ああ、でもやっぱり恥ずかしい。
「み、みず飲も」
キッチンにお邪魔して、グラスを探す。
さっき使われたお皿やグラスが綺麗に洗われ、伏せられていた。
これでいいや、とグラスを借りて、冷蔵庫を開けるのは躊躇われて水道から直接注ぐ。
それを口にしながら、ぐるりと周りを見てみる。キッチンまで綺麗な家。
お手伝いさんが週に何回か来るって聞いたことある。食事の作り置きとか、清掃とか。
昔は遠足のお弁当すらお手伝いさんの作ったものということで、暗い家庭なのではないかと噂もあった。
本人はあっさりしたもので、別にそういうのは気にしてないと。
確かに両親とも仕事や友人との約束なんかで家にいることは少ないらしいが、三者面談とか、卒業式入学式とか、大事な用事は来てくれるし、愛情がない家庭ではないみたいだった。
お母さんも明るい人で、うちの母さんともお互いの息子のことでたまに連絡を取ってるみたいだし、以前遊びに来た時は急いでケーキを買いに行って僕に持ってきたこともある。行動力がある。
一人息子で、幼児の頃は過保護だったようで、今くらい放っておかれる方が気が楽だとも言っていた。
まあわからないではない。うちだって甘やかしはしないけど、割とうるさい方だから。
グラスを洗い、同じように伏せておく。
リビングに戻ってテレビをつける。バラエティ番組では美味しそうな料理の特集をしていた。
お菓子のせいでお腹も膨れたと思っていたけど、お腹空いてきたかも。ピザ楽しみ、なかなかとることないからなあ。
そんなことを考えてると、うっすらドライヤーの音が聞こえた。
皇輝も上がったらしい。
よーしよしよし、そんなん僕もドライヤーしに行くしかないよね!
人のなんて乾かしたことないけど、自分のとそんな変わることはないだろう。
「こーき!ドライヤー僕が!す……る……なんで上着てないの?」
「いや急に入ってきて言う台詞じゃない」
勢いよく扉を開くと、上半身裸の皇輝が髪を乾かしていて、そんなこと想定してなかったから動きが止まってしまう。
あああ、部活後の着替えを思い出してしまった。
「何、碧が乾かしてくれるって?」
「う、そ、そのつもり……だったけど」
「だったけど?」
「……上、着て」
「だからなんでそこに拘んのかな」
「いいから!早く!」
勝手にドライヤーかけにきて、勝手に服を着ろと騒ぐなんて随分迷惑なやつだな、わかってるけどさ、でもほら、折角なら出来ることやっておきたいっていうか……
皇輝に乾かして貰ったの、気持ち良かったから、同じように思ってくれたら嬉しいなあって……
「着たけど」
「しゃがんで」
「ええー……」
「届かないもん」
「俺の腰が死ぬやつ」
ぶつぶつ文句を言いながらも中腰になってくれる。
ドライヤーを手に取って、スイッチを入れる。
僕の塩素にやられた髪と違って、つやっつやのさらっさらの綺麗な髪。
お風呂上がりで一番匂いが強い時だからかな、確かに同じ匂いがする。やばい、にやけちゃう。同じ匂いってやばい。
良かった、明日休みで。
こんな同じ匂いで学校行ったら弄られちゃうだろうし。
「熱い」
「えっごめん」
「同じとこに当てないで動かして」
「そうしてるつもりなんだけどー、ううん、人のやるの難しい、皇輝上手かったのにな、誰かのやったことある?」
「ないけど」
「えー、気持ちかったのにな」
「……気持ち良かったの?」
「うん、だから僕も皇輝にしようと思って」
はー……とでっかい溜息。びっくりしちゃった。
そんなに熱かったかな、と思ってると、また手が止まってるぞ、と言われた。
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