恋愛サティスファクション

いちむら

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おいたちラプソディ3

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「考えたところで良い案も思いつかなくて。仕方がないから保健室登校することにしたんだ。転校する前の学校でも保健室登校してたから慣れてたし。でも私立はやっぱり違うよね。保健室で適当に本読んで過ごそうとしたら、自主学習用にってパソコンくれたよ」

結局いじめはそのまま?
パソコンを支給されても根本的な解決にはなってない。

「俺、その時までパソコンに触れたことなかったから楽しくてさ。家にも自分用のパソコン一式用意してもらって、朝から晩まで遊んでた」

楽しかったというのは本当なんだろう。
思い出して語る圭介さんの瞳がキラキラしてる。

「楽し過ぎて学校サボって家にいたら怒られて。学校行ってもスペック低いノートパソコンしか借りられないから、行く意味ないのに。貧乏人の俺が教室に居ても、育ちの良い他の生徒の授業妨害にしかならないし。そもそも教育を受けさせる義務はあっても、受ける義務はないんだ。怒られる筋合い無いって突っぱねて、部屋にこもってた」

さすが浮きこぼれ。大人相手に議論してしまうなんて。
でも、つばさプロジェクトの人は子供の圭介さんに言い負かされちゃ駄目だよ。
そこは頑張って学校に通う必要性を説かなきゃ。

「そんな感じで過ごしてたら、年末にイギリスから一時帰国した鈴村さんに、こっぴどく叱られて」
「1日中部屋で過ごすなんて不健康じゃないか。たしかに子供に教育を受ける義務はないよ。しかしね、一人で過ごしていては思考が偏るだろう。たくさんの人に触れて学ぶべきだ」

鈴村さんが強権を発動したから圭介さんはまた学校に通うになったんだ。
暴君なところもあるけど、子供の圭介さんに対して強く言えたのは鈴村さんの良いところ。

「鈴さんは考功の教師に直談判して、俺の待遇改善もしたよね」
「通う価値のない学校に大切な子を置いておくことは出来ないからね。当然のことをしたまでだよ」

鈴さんに言われて改善するなら、最初からいじめの対応をしてくれたら良かったのに。

「冬休みが終わって3学期が始まると、教頭室に俺の机を用意してくれてさー。手隙の先生達が日替わりで、あれこれ教えてくれる特別待遇。内容が小学生向けかって言われると、首傾げちゃうものもあったけど、小学生向けの学習なら教科書読むだけで良かったし。鈴さんに言われたからって、急にやる気出し過ぎだよね」
「先生達の個別授業で勉強は出来ても、同世代の子との交流とかそういう情緒面の学びっていうのも大事なんじゃ」

ずっと大人とだけ過ごすのはあんまり健全じゃない気がする。
引きこもりよりは良いけど、せっかく学校に通うなら同級生と過ごす時間も大切だよ。
どれだけ学校の勉強が出来たとしても、人として成長出来なければ、未熟な大人にしかなれない。
これは中学時代の恩師の言葉。僕の大事にしてる人生の教訓のひとつ。

「そうそう。唯みたいなこと言ってくる外部理事がいたんだよ。年に1回予告してから来て、普段の様子を見たつもりになってる奴に、理想論だけ語られてもねー」

僕の大切な教訓から思う小学生の生活が理想論だと切り捨てられた。

「仕方がないから体育や図工みたいな実技科目は教室で受けて、5教科は個別授業にしてもらった。学生って立場は弱いからねー。何もかも自由にってわけにはいかない」

妥協の結果だと圭介さんは言う。
けれども写真の中の圭介さんは様々な活躍を見せてくれる。
体育祭のリレーのアンカー。音楽祭では合唱のピアノ奏者。
やっぱり同世代の子達と過ごすことでしか得られないものはあったはずだよ。

「あとは放課後に習い事詰め込まれたのも、鈴さんのせいだよね」
「君のために厳選した講師の者達なのだから文句は言うな。学びは人生を豊かにするのだから」
「大量の習い事を放課後に詰め込まれただけの、丸投げな対応だけどね」

外注のが良かったって。
鈴村さんは教えるの下手そうだし。
僕は鈴村さんを頼ったせいでこの数日間大変なことだらけになったから。

「水泳、書道、ピアノ、お茶、お花に乗馬って。小学生にやらせるラインナップじゃないでしょー」

水泳や習字、ピアノは習ってる子いたけど。お茶やお花までは確かにやりすぎ感。
さらに乗馬って習えるものなの?
しかもそれを1人の子供が一度に習わされるのはむしろ虐待では?

「まさか全部に通うとは私も思わなかったし。一通り試してみて相性の良いところに通うのかと」
「そーいうのはちゃんと先生達に伝えておいてよ。皆、鈴さんのお願いだからって、本気出して俺の事しごくんだもん。最初に提示された目標達成したら終わるのかと頑張ったら、伸びしろがあるって余計に高い目標設定されて」

子供の頃の圭介さんはとっても頑張り屋さんだったんだね。
本人がこなせちゃうから、まわりの大人もやらせちゃう。
出来ないわけじゃないから無理しちゃう。
それを無理だと思うことも、投げ出すこともしないで。
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