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くらげ

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おいたちラプソディ4

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アルバムをめくり小学生だというのに大人びた姿を見せてくれる圭介さんを愛でる。
鈴村さんに押し付けられたというお稽古事の写真の中。一枚の写真に目が釘付けになった。

「白馬に乗った王子様!」

白い馬に跨る圭介さんがどこからどう見ても王子様でしかなくて。
美しすぎて神々しい。目が焼けちゃう。
きゃあきゃあはしゃいでいたら、鈴村さんが良いことを思いついたと言った。

「そうだ。サクラも先生達のところに通いなさい。学んでおいて悪いものではないよ。これからは和装で過ごすことも増えるだろうし、この前のようにお転婆な姿を人様にお見せするのは“メッ”だよ」
「あれは。だって。圭介さんがいたから、つい走っちゃったんです」
「言い訳は聞かない」

下手なことを言って余計に怒らせてしまった。
お茶でもお花でも通うから。
鈴村さんの“メッ”は怖いから許して。

「唯、乗馬は絶対に駄目だよー」
「なんで? 楽しそうなのに」

お習い事リストの中で1番興味があるのは乗馬だ。
馬に乗れるなんてすごく楽しそう。
なのに圭介さんは反対するの?

「だって尻の皮剥けちゃうし。やめといた方がいい」

乗馬って、おしりの皮が剥けるの?

「そんなもの最初のうちだけで、剥けたらより丈夫になって良いではないか」
「鈴さん理論は乱暴なんだよ。だいたいなんで乗馬すすめてきたのー? 運動系の習い事なら他にもあったじゃん」

当時は言えなかった不満をここぞとばかりに訴える圭介さん。

「だって圭君が王子様になりたいって言ってたから。それなら馬にくらい乗れなきゃ」

鈴村さんグッジョブです。
白馬に乗った圭介さんは国宝級王子様でした。
でも写真だけじゃなくて本物の王子様な圭介さんが見たいな。
期待を込めた目線を送ってみる。ほらほら。僕のお願いに気付いて。

「本格的に習うのはオススメ出来ないけど、軽く体験ぐらいなら。俺も最近アニアに会ってないし、そろそろ顔出さないと怒られる。唯も一緒に行く?」
「アニア?」
「この写真の白い馬。気難しい子なんだけど、仲良くなれば賢くて乗りやすい奴だよ。でもしばらく会わないでいると、会った瞬間に唾かけて怒るのー」

顔を覚えて拗ねたりもするなんて。本当に賢い馬だ。

「じゃあアニアが寂しくないようにたくさん会いに行ってあげないとですね。その時はぜひ僕も」

白馬に乗る圭介さんを見られるなら、どこまでもお供します。

「サクラはやめておいた方が良いのでは?  アニアは嫉妬深い子だから蹴られてしまうよ」
「さすがのアニアも俺の大事な人だよって説明したら、背中に乗せてくれるって」
「女の嫉妬を軽く見てはいけないよ。まあ、行けば分かるさ」

アニアはメスの白馬なのか。
蹴られるのは嫌だ。
でも仲良くなれたらいいな。

アルバムには乗馬以外の習い事や学校行事の写真も並ぶ。
こんなこともあったねと圭介さんが笑うから、僕も当時のことをあれこれ聞いて。
ソファに並んで座って穏やかで楽しい時間。
修学旅行で行ったオーストラリアの思い出話に花が咲く。
中学生の圭介さんに抱かれているコアラがちょっと羨ましくて。圭介さんの胸に抱きついた。

そこに大きな音を立ててドアが開いたから。
ちょっとビックリして、軽く抱きついていたのを強くギュッとしがみつく感じになっちゃった。

「てめぇらサボってんじゃねえよ。佐倉も監視すんじゃねえの? 飯ん時は俺のコト見捨てたくせに圭はいいのかよ! ズルくね!」

玲司君が依怙贔屓反対だと叫ぶ。
ごめん。圭介さんの写真が可愛すぎちゃって。
贔屓しているつもりはないんだ。

「俺はもう終業するからな。5時過ぎてるしイイだろ」
「もうそんな時間? うん。いいんじゃない? 玲司君も一緒に写真を見ようよ。圭介さんがすっごく可愛くて格好良いから」

察しの良い鈴村さんは向かいのソファに移動してくれてありがとう。
ほら。僕の隣あいたよ。ここ座って。
僕の両隣に座るのはやっぱり圭介さんと玲司君がしっくりくる。
ふたりの真ん中が僕の定位置。

玲司君も座ってアルバム見よう。
赤ちゃんのときの写真もあって、すごくカワイイんだ。
アルバムを最初の1ページ目に戻す。
玲司君がソファに回り込みながらアルバムの中の写真をちらりと見た。

「捨てたヤツ見つかったんだ。良かったな。栞奈の時に捨てるんじゃなかったって言ってたじゃん」

僕気づいちゃった。
圭介さんの胸にくっついてたから。
栞奈って名前を聞いた瞬間。圭介さんの心臓の音が跳ね上がったの。
ねえ。栞奈って誰?
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