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35話
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この新しい暮らしの中で不可解な出来事が毎日続いている。
それは2日目の早朝に気がついた。
使わせて貰っているアルベルトさんの亡き母君のログハウスの玄関先に、真新しい台所用品が木箱の中入って置かれていた。
鍋とか包丁とか山盛り状態だった。一人暮らしの俺には大量過ぎて困惑してしまったが、邸内の誰かの好意なのだからと思い、その時は有り難く受け取る事にした。
3日目にはシーツや毛布や枕の真新しい寝具が玄関先に置かれていた。
4日目にはタオルや石鹸やバスローブなどの新品の入浴用品が、これまた玄関先に置かれていた。
流石にこれは…と思い、先ずはフリオさんに聞いてみたところ、フリオさんは知らないようでかなり驚いていた。
フリオさんが他の人にも聞いてくれたが、皆知らないとの事だった。仕方ないのでフリオさんと相談して様子を見る事にした。
5日目 食器類
6日目 日用品
7日目 礼服から下着までの衣類
どれも新しい生活には必要な物ではあるが…どれも一人暮らしには大量過ぎて持て余すどころか置き場所に困る。
この1週間続いた笠地蔵でゴンぎつね状態を打開する為に、俺は丁寧にお礼状を書きこれ以上は必要がない旨を書き加えて、玄関先に風で飛ばされないよう石を上にしてお礼状を置いた。
その結果…。
8日目 砂糖・塩
9日目 木の実
10日目 果物
11日目 蜂蜜
12日目 卵
13日目 小麦・大麦・ライ麦
今度は食べ物と言うか食材攻撃が始まってしまった…。
8日目から13日目までの食材を見ると、まるでパンを作って焼いてみろ的に俺を挑発してきてるのかと錯覚してしまい、伊達に500年も間自給自足の引き篭もりをしてた訳じゃねぇぞっ!Lvカンストの体力を舐めんなよっ!と躍起になって、13日目は徹夜で置かれた食材をほぼ使いきるぐらい生地を作り、捏ねて焼きまくって大量の食パン・菓子パン・惣菜パンを作ってしまった…。
この時、妙なハイテンションになっていて、もしかしてパン屋として店開けるんじゃないかと1人高笑いしてしまった。恥ずかしい…。
そして14日目、大量のパンを焼き上げて達成感に浸りながら夜明けに玄関に出ると、まさかの米俵が3つ置かれいるのが目に入った。俺は米俵を前に呆然と立ち尽くしたのは言うまでもない。
これはまさか新手のクエストか何かなのかと、この世界には無い筈のクエストが発生しているのではとまた変な錯覚しそうになった。
でも、今更だがこの世界にも米があったのかと思うとちょっと嬉しくなったのは内緒である。
勝手に都合よく考えて、これも神々の思召し…としておこう。
大量に作ったパンは当然1人で食べ切れる訳もなく、グティエレス家の人たちにお裾分けし、それでも余ったパンはセクアナ神の教会の近くにある孤児院へ寄付した。
孤児院の院長さんはセクアナ神の司祭で、孤児院に居る事の方が多いらしく教会が無人になっていたのはそういう訳かと納得。
結果的にセクアナ神への奉仕にもなったので、結果オーライになるのかな?
2週間もゴンぎつね状態が続き、これはもう誰がやっているのか捜しだしてやろうじゃないかってなった。勿論、俺1人でやったんだけど。
俺的に1番疑わしいのは…グティエレス家の人々ではなく、あのドライアドだ。
だけど気紛れで人を惑わす事もある悪戯者のドライアドが、こんな律儀な真似をするのだろうかと疑問にも思った。
ならば本人に直接聞けばいいだけの事だ。
宿り木は街の広場に立つ月桂樹だ。
日中は沢山の人目があるので、寝静まった深夜にグティエレス邸を抜け出し、念には念をと【潜伏】を使って広場へとやって来た。
宿り木となっている月桂樹に手を添えて目を閉じ心の中でドライアドへと呼びかけると仄かに全身を発光させたドライアドがスッと姿を現した。
『こんばんは。夜分遅くにすみません。少々お聞きしたい事がありまして…』
『こんばんは。用件はわかっているわ。お礼の品の事でしょ?受け取って貰えて嬉しいわ』
『やはり貴方でしたか…大変ありがたいのですが、お気持ちは十分伝わってきましたので、これ以上はご遠慮させて頂きたいのですが…』
『あら、そうなの?でも、あれだけじゃ私の気持ちが収まらないわ。他に欲しい物…と言っても私があげれるのは限られているけど、ないの?』
『もう沢山頂きましたので、欲しい物はもう…あぁ、でしたらお米を半年に1回頂けると嬉しいです』
『米がいいの?なるほど御告げ通りなのね…』
『御告げ…それはどちらの神からの御告げでしょうか?』
『地母神・アーニャ様よ。貴方にお礼がしたいと思っていたら、毎晩貴方の住む小屋の前に贈り物が置いてあったのを真似しようとしたけど、何を贈ればいいのか困っていたらアーニャ様から御告げがあったの』
『そうですか…私からアーニャ様にお礼をお伝え頂けますか?おそらく私からはお伝え出来ませんので』
結論。
食料などを置いたのは妙に律儀なドライアドで、それより前はドライアドではなく他の誰かという事だ。
その他の誰かってのは、ドライアドも知らないと言っいたから結局正体は未だわからず。
でも、ドライアドの贈り物以外は置かれていない。
と、すれば…俺が書いた礼状を受け取って、これ以上は必要が無いと理解して貰えたという事かな。
なら、もう捜し出す必要もないなかぁ。
正直言ってしまえば、捜し出すとかちょっとだけ面倒になったのもある。害があるって訳でもないし…。
ドライアドからの贈り物も無くなった筈の15日目の朝。
玄関先には、小さな白い花1輪が置かれていた。
多分ドライアドがした事だろうと思った俺は、どこまでも律儀なドライアドだなぁと苦笑しつつ、花を拾って一輪挿しの花瓶に活けた。
それから毎日ずっとこの小さな白い花が1輪置かれ続けている。
ほんと律儀なドライアドだよなぁ。
--------------------------
体調をまた崩しました…(^^;)
更新がだいぶ遅れてしまいましたが、また少しずつ更新していきますm(._.)m
それは2日目の早朝に気がついた。
使わせて貰っているアルベルトさんの亡き母君のログハウスの玄関先に、真新しい台所用品が木箱の中入って置かれていた。
鍋とか包丁とか山盛り状態だった。一人暮らしの俺には大量過ぎて困惑してしまったが、邸内の誰かの好意なのだからと思い、その時は有り難く受け取る事にした。
3日目にはシーツや毛布や枕の真新しい寝具が玄関先に置かれていた。
4日目にはタオルや石鹸やバスローブなどの新品の入浴用品が、これまた玄関先に置かれていた。
流石にこれは…と思い、先ずはフリオさんに聞いてみたところ、フリオさんは知らないようでかなり驚いていた。
フリオさんが他の人にも聞いてくれたが、皆知らないとの事だった。仕方ないのでフリオさんと相談して様子を見る事にした。
5日目 食器類
6日目 日用品
7日目 礼服から下着までの衣類
どれも新しい生活には必要な物ではあるが…どれも一人暮らしには大量過ぎて持て余すどころか置き場所に困る。
この1週間続いた笠地蔵でゴンぎつね状態を打開する為に、俺は丁寧にお礼状を書きこれ以上は必要がない旨を書き加えて、玄関先に風で飛ばされないよう石を上にしてお礼状を置いた。
その結果…。
8日目 砂糖・塩
9日目 木の実
10日目 果物
11日目 蜂蜜
12日目 卵
13日目 小麦・大麦・ライ麦
今度は食べ物と言うか食材攻撃が始まってしまった…。
8日目から13日目までの食材を見ると、まるでパンを作って焼いてみろ的に俺を挑発してきてるのかと錯覚してしまい、伊達に500年も間自給自足の引き篭もりをしてた訳じゃねぇぞっ!Lvカンストの体力を舐めんなよっ!と躍起になって、13日目は徹夜で置かれた食材をほぼ使いきるぐらい生地を作り、捏ねて焼きまくって大量の食パン・菓子パン・惣菜パンを作ってしまった…。
この時、妙なハイテンションになっていて、もしかしてパン屋として店開けるんじゃないかと1人高笑いしてしまった。恥ずかしい…。
そして14日目、大量のパンを焼き上げて達成感に浸りながら夜明けに玄関に出ると、まさかの米俵が3つ置かれいるのが目に入った。俺は米俵を前に呆然と立ち尽くしたのは言うまでもない。
これはまさか新手のクエストか何かなのかと、この世界には無い筈のクエストが発生しているのではとまた変な錯覚しそうになった。
でも、今更だがこの世界にも米があったのかと思うとちょっと嬉しくなったのは内緒である。
勝手に都合よく考えて、これも神々の思召し…としておこう。
大量に作ったパンは当然1人で食べ切れる訳もなく、グティエレス家の人たちにお裾分けし、それでも余ったパンはセクアナ神の教会の近くにある孤児院へ寄付した。
孤児院の院長さんはセクアナ神の司祭で、孤児院に居る事の方が多いらしく教会が無人になっていたのはそういう訳かと納得。
結果的にセクアナ神への奉仕にもなったので、結果オーライになるのかな?
2週間もゴンぎつね状態が続き、これはもう誰がやっているのか捜しだしてやろうじゃないかってなった。勿論、俺1人でやったんだけど。
俺的に1番疑わしいのは…グティエレス家の人々ではなく、あのドライアドだ。
だけど気紛れで人を惑わす事もある悪戯者のドライアドが、こんな律儀な真似をするのだろうかと疑問にも思った。
ならば本人に直接聞けばいいだけの事だ。
宿り木は街の広場に立つ月桂樹だ。
日中は沢山の人目があるので、寝静まった深夜にグティエレス邸を抜け出し、念には念をと【潜伏】を使って広場へとやって来た。
宿り木となっている月桂樹に手を添えて目を閉じ心の中でドライアドへと呼びかけると仄かに全身を発光させたドライアドがスッと姿を現した。
『こんばんは。夜分遅くにすみません。少々お聞きしたい事がありまして…』
『こんばんは。用件はわかっているわ。お礼の品の事でしょ?受け取って貰えて嬉しいわ』
『やはり貴方でしたか…大変ありがたいのですが、お気持ちは十分伝わってきましたので、これ以上はご遠慮させて頂きたいのですが…』
『あら、そうなの?でも、あれだけじゃ私の気持ちが収まらないわ。他に欲しい物…と言っても私があげれるのは限られているけど、ないの?』
『もう沢山頂きましたので、欲しい物はもう…あぁ、でしたらお米を半年に1回頂けると嬉しいです』
『米がいいの?なるほど御告げ通りなのね…』
『御告げ…それはどちらの神からの御告げでしょうか?』
『地母神・アーニャ様よ。貴方にお礼がしたいと思っていたら、毎晩貴方の住む小屋の前に贈り物が置いてあったのを真似しようとしたけど、何を贈ればいいのか困っていたらアーニャ様から御告げがあったの』
『そうですか…私からアーニャ様にお礼をお伝え頂けますか?おそらく私からはお伝え出来ませんので』
結論。
食料などを置いたのは妙に律儀なドライアドで、それより前はドライアドではなく他の誰かという事だ。
その他の誰かってのは、ドライアドも知らないと言っいたから結局正体は未だわからず。
でも、ドライアドの贈り物以外は置かれていない。
と、すれば…俺が書いた礼状を受け取って、これ以上は必要が無いと理解して貰えたという事かな。
なら、もう捜し出す必要もないなかぁ。
正直言ってしまえば、捜し出すとかちょっとだけ面倒になったのもある。害があるって訳でもないし…。
ドライアドからの贈り物も無くなった筈の15日目の朝。
玄関先には、小さな白い花1輪が置かれていた。
多分ドライアドがした事だろうと思った俺は、どこまでも律儀なドライアドだなぁと苦笑しつつ、花を拾って一輪挿しの花瓶に活けた。
それから毎日ずっとこの小さな白い花が1輪置かれ続けている。
ほんと律儀なドライアドだよなぁ。
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体調をまた崩しました…(^^;)
更新がだいぶ遅れてしまいましたが、また少しずつ更新していきますm(._.)m
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