ネトゲ世界転生の隠遁生活 〜俺はのんびり暮らしたい〜

瀬間諒

文字の大きさ
上 下
35 / 48

34話

しおりを挟む
 グティエレス家の人々は俺が思った以上に歓迎してくれて、使用人仲間で殆ど歓迎会的なお茶会までしてくれた。場所は厨房だったけど俺的には豪華な部屋よりも厨房の方が人の生活感が感じられて良かった。
 やっぱ、何より皆んなのその気持ちが嬉しくて仕方なかったんだ。
 でも、使用人仲間だけの筈が何故だかアルベルトさんがしれっと参加して楽しそうに皆んなと談笑していた。
 エディさんにこっそり聞いたら、意外とさみしがり屋でこういう集まりには都合が合えば必ず参加するらしい。それじゃ使用人同士で主人への愚痴とか言えないんじゃないかって聞いたら、「旦那様に愚痴なんかないです。言いたい事があれば皆直接言いますから」と、あっけらかんとして言われた。
 家族同様に扱っているのかなとは思っていたけど、本当にそうだった。
 お貴族様にしてはかなり珍しいよな。
 
 
 火傷の痕が無くなった事もアルベルトさんから説明があったのか、誰1人理由とか聞いてこなかった。
 ただダフネさんがソソっと寄って来て「火傷が無くて本当に良かったです」と、こっそり耳打ちしてきたぐらいだった。
 ダフネさん…もとい、ダフネちゃんは可愛い。俺にもし娘がいるとしたらダフネちゃんみたいな可愛い子だったらなと思ってしまうぐらいだ。




 グティエレス家に来て1カ月程経った。

 俺のグティエレス家での1日の流れと言えば…。


 AM4:30 転移魔法陣で繋げたセーフハウスで起床
               セーフハウスの庭園と畑の世話
               自己鍛錬

 AM6:30 朝食
               身支度

 AM7:00 グティエレス家に出勤
               トマスさん夫妻・マルセロさんの手伝い

 PM12:00 トマスさん夫妻宅で昼食
                 休憩

 PM15:00 フリオさん・イネスさんの手伝い

 PM19:00 グティエレス邸の厨房で夕食

 PM20:00 セーフハウスに帰宅
                 自己鍛錬
                 入浴

 PM23:00 就寝


 ざっとこんな感じだ。
 なかなか規則正しい良い流れだと自画自賛してしまう。

 いくらグティエレス家に勤める事になってもセーフハウスの管理は疎かにする気はないし、自己鍛錬は習慣に近いけどするとしないとではその日のコンディションが微妙に違うから、ほぼ欠かさずやっている。


 グティエレス家での仕事も殆ど雑多な手伝いだけなんだけど、もっぱら力仕事が多い。
 ドライアドの1件で、俺が怪力の持ち主だと思われているぽいけど、若い男ってのがマルセロさんしかいないから自ずとから力仕事が回ってくるみたいだ。
 それはそれで別に問題はない。
 前世では運動の類いは一切禁止されていたせいもあってか、今生の俺は見た目によらず身体を動かすのは好きだし、前世の記憶が蘇ってからは更に嬉しさまで感じている。
 汗と泥に塗れる事にも抵抗もないよ。


 500年前は小さな国が入り乱れての戦争ばかりで時代の流れで生きる為に戦い、厄災をもたらす魔物討伐でも戦っていたっけ…。ずっと戦いに明け暮れてたよなぁ。
 元々そういうコンセプトのゲーム内容だから仕方ないんだけど。
 それから500年間セーフハウスに引き篭もり静かな生活をしてたけど、こうした穏やかな普通の人としての生活も悪くない。むしろ、楽しいぐらいだ。


 2週間が過ぎたところで、トマスさん夫妻から意外な申し出があった。
 昼食を一緒に食べて欲しいという事だった。
 断る理由がある訳でもないけどお邪魔するのはどうかと思い躊躇していると、マリアさんからどうしてもと請われて承諾してからは、毎日トマスさん夫妻宅で昼食をしている。

 最初の昼食の後、マリアさんが後片付けで席を立った時にトマスさんから申し出の理由を話してくれた。
 トマスさん夫妻には家出した息子がいるらしく、その息子が家出した時の歳と俺が同じぐらいで被って見えるそうだった。
 マリアさんが息子さんの事を思い出して気落ちしているのを見兼ねてトマスさんがマリアさんに俺を昼食に誘ってみるのはどうかと持ちかけたらしい。
 俺が息子さんの代わりにはならないとは思うけど、それでマリアさんの気持ちが癒されるならと、改めてトマスさんに昼食を一緒に食べる事を承諾した。

 超親不孝な俺が今更って感じだけど、トマスさん夫妻に親孝行のほんのちょっとな真似事しても…養父オヤジ、いいよな。
 
 

 マルセロさんはちょっと気弱でボンヤリしてるところがある純朴そのものな好青年だ。俺より少し上の26歳だそうだ。
 厩番としてアルベルトさんの愛馬ともう2頭の3頭の世話をしている。
 初めて手伝いに入った時、俺が馬の世話をした事がないと思ったのか、初心者にでもわかりやすいようにとお手本を見せて手振り身振りを入れて丁寧に教えてくれた。その時の姿が馬が好き好きで堪らないのがもろ分かりで、ついつい微笑んでしまうぐらいだ。

 毎日の手伝いをしながら話をしている内に知った事は、マルセロさんは近くのパン屋の次男坊でエディさんとは幼馴染み。
 根掘り葉掘り聞くのは俺の性には合わないので自分からは何も聞かないが、マルセロさんがたまに溢す言葉の端々にから察するに、エディさんの事が好きらしい。
 俺がちょくちょくエディさんと話をしていてるのを気にしているぽかった。
 妙な誤解をされるのは厄介なので、エディさんやダフネちゃんは仕事仲間であって恋愛対象として見れないとさり気なく言っておいた。
 しかし、あのエディさんに恋心を寄せるとは…マルセロさん怖い物知らずなのか、あるいは器がデカイのか…。

 まぁ、頑張れっ!マルセロさん。



 フリオさんは俺に対してどことなく遠慮をしている気がする。
 俺が進んで手伝いを申し出でても、1度は必ずやんわりとお断りをされてしまうが、俺がめげずに申し出るので渋々…って感じだ。
 気にかけてよく声をかけてくれているから、嫌われている感じではないんだよな…。
 アルベルトさんから俺について何か聞いているのかな?
 でも聞いたところで、遠慮する必要がどこにもないような。
 思い切ってイネスさんにそれとなく聞いてみると、何故だか困ったような顔をし苦笑いをされて何も答えてはくれなかった。
 イネスさんの側にいたダフネちゃんも同じように苦笑いをしているだけだった。
 ならば、ここはエディさんにと思い、イネスさんとダフネちゃんの気になる苦笑いの事も踏まえてストレートに聞いてみた。
 エディさんは苦笑いではなく悪い顔をして含み笑いを俺に向けて「いずれわかりますよ」とだけ答えただけだった。

 超気になるんですけどー!!

 

 夕食は基本グティエレス邸で食べる事になっている。
 アルベルトさんが急な仕事や用事で食事を済ませて帰る事は多々あるので19時までにアルベルトさんが帰宅しなければ、厨房でイネスさん親子とフリオさんの4人で食べている。
 やっぱりイネスさんの作る料理は美味しい。マリアさんの料理も美味しいんだけど、イネスさんのは別格だ。
 思えばこのひと月アルベルトさんと食事をしたのは3回ぐらいだ。邸内でもあまり姿も見てない気がする。

 思った以上に多忙な人だったみたいだ。

              

 グティエレス家での暮らしは本当に楽しい。
 人じゃない俺がいつまでこの暮らしが続けられるかわからないけど、今はこの暮らしを大切にしたいと思っているんだ。








しおりを挟む
感想 88

あなたにおすすめの小説

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

青少年病棟

BL
性に関する診察・治療を行う病院。 小学生から高校生まで、性に関する悩みを抱えた様々な青少年に対して、外来での診察・治療及び、入院での治療を行なっています。 ※性的描写あり。 ※患者・医師ともに全員男性です。 ※主人公の患者は中学一年生設定。 ※結末未定。できるだけリクエスト等には対応してい期待と考えているため、ぜひコメントお願いします。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました

taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件 『穢らわしい娼婦の子供』 『ロクに魔法も使えない出来損ない』 『皇帝になれない無能皇子』 皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。 だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。 毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき…… 『なんだあの威力の魔法は…?』 『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』 『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』 『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』 そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜のたまにシリアス ・話の流れが遅い

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

処理中です...