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第51話 乙女ゲームと五大公爵家
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「ああ、若いもんたちが旧交を温めるのは良いが、今はそれどころじゃないだろう。まず解決しなきゃならないのは王宮でのもめごとじゃないのか?」
私たちが話しているのを聞いてリーダー格の騎士が言いました。
「そうですね、セイダさん……」
エミール王子が気まずそうに笑いました。
「とりあえず、対策を話し合うためにここにいる者のほか、研究施設や医療施設の者にも参加してもらいたい」
サラ様が言いました。
「誰か、医療施設の方にも知らせに行ってくれ」
セイダさんが声をかけ、研究施設の方はサラ様が声をかけ、私たちはみな大会議室の方へ移動することにしました。
「あの、サラ様……」
私は歩きながら声をかけました。
「なんだい、リーニャ?」
「少し気になることがあるのです。確か、数百年前にルルージュ家が滅びたのも王家が婚約者を断罪してからだし、ティオのお母様の家もそう。『虹色』もしかしたらそういう展開かもしれないし、偶然にしてはできすぎのような?」
「何が言いたいんだい?」
「つまり、前世の乙女ゲームは恋愛主体の娯楽だったけど、公爵家没落という観点から見ると……」
「君は私たちの前世の乙女ゲームが公爵家を滅ぼすために作られたものだと言いたいのかい?」
「可能性です。ただ、私たちが関係あるゲームは公爵家がどうなっていたかは?」
「ヴァイスハーフェン家は没落していたね。ブリステル家は覚えていない、ミリアならもしかしたら覚えているかも、でもそれがいったい?」
「公爵家が滅んで得するのは一体だれでしょう?」
「なるほど一考の価値はあるな。だとしたら……」
サラ様はしばらく思案していました。
大会議室には、研究施設の責任者と運営元ヴァイスハーフェン家のサラ様。
騎士団一行、エミール王子やバルドリックもいます。
医療施設からも責任者と治療師を束ねる長、そしてアルツ氏。
さらにエルフの一行。
「あの、ミリアは来てますか? 少し訪ねたいことがあるのですが……」
「ミリア?」
あ、しまったここじゃもしかして別の名前?
「ユリア・ポーラスのことです。彼女も呼んでいただけますか?」
サラ様が訂正してくれました。
研究所の人間が呼びに行ってくれたそうです。
「やあ、久しぶりだね。記憶が戻ったって連絡は受けていたけど、すっかり元の姿だ。君の記憶をなくす処置については話すと長くなるので、今は申し訳ないけどそれどころじゃない。君に聞きたいことがあったんだ。『虹色コンチェルト』のパート1でブリステル家がどうなったか覚えているかい?」
入ってきたミリアにサラ様は単刀直入に聞きました。
ミリアはその質問にうろたえました。
前世の乙女ゲームなんてこの世界で理解される代物じゃないし、転生者同士と分かっていても、暗黙の了解で「秘密」にするものだと思い込んでいたのでしょう。
「あ、あの……」
「困惑するのも分からなくはないが、ストーリーでは悪役令嬢が断罪されたのちブリステル家がどうなったか教えてほしいんだ」
「ブリステル家は軍事のかなめなので内乱が起こりかけますが、なんとかうまく抑えられ、フェリシアを含めブリステル家の者は全員死にます」
ミリアの答えに集まった人間はみな首をかしげました。
「いったい何の話だ? 内乱?」
騎士団長セイダさんが疑問を口にしました。
「すまない、いろいろ混乱していると思う。これから私が話すことを聞けばさらに信じられないかもしれないけど全部本当のことだ。この問題を解決するために必要な情報となるので聞いてほしい」
サラ様がその場に集まった人たちを一通り見まわしました。
そして、軽く息を吐き話を始めました。
「ここにいるリーニャ。そしてミリア、ここにいる人にとってはユリアかな。そして私たち三名にはこの世界に生まれる前に別の世界で生きていた記憶がある。我々はどうも同じ世界の同じ国にいて、乙女ゲームという娯楽を知っているのだが、その中のストーリーに出てくる人物の名前や境遇がこの世界の王家や公爵家の人物と全く同じなんだ」
「それはいったいどういう意味ですか?」
王族出身のエミール王子が質問をしました。
「乙女ゲーム自体は単純な恋愛ゲームで、王族や貴族の子弟を男爵など身分の低い少女と結ばれるというストーリーなのだが、それを邪魔する存在として王族と婚約者の地位にある公爵令嬢が存在する。彼女らのことは『悪役令嬢』と呼ばれたりする。この場では私やフェリシアがその役に当たっていたな」
「それで『悪役』って言葉がミリア君の口から……」
フォーゲル先生がかつての階段落ち事件の時のことを思い出しておっっしゃられました。
「ええ、ことが単に恋愛のさや当てだけなら害がないが、そのストーリーの中ではブリステルとヴァイスハーフェンの二つの公爵家が滅ぼされている。ティオレの母のいるヴェルダートルや数百年前のルルージュやメレディスにしても、もしかしたら、同じようなゲームのストーリーになぞらえて滅ぼされたのかもしれない」
「あー、ちょっとよくわからないのだが、どうしてこの世界にいる人物の情報が、別の世界にもれて『オトメゲーム』とやらに使われたりしているんだい?」
セイダさんが頭をひねりながら疑問を口にしました。
「魔物が封じられているあの洞窟は異世界に通じているとの話なら聞いたことがあるぞ。この世界に対しての物理的な影響力なら封印でなしにできるが、精神攻撃なら多少は使えていたのかもしれない。ましてや異世界なら……」
ティオレが考えながら言いました。
「五つの公爵家がことごとく乙女ゲームの断罪イベントの後に滅ぼされているのは偶然ではないかもしれない、と、リーニャが言ってね。そのあと考えたんだ。五大公爵家が滅んで得するのは誰か、かつてその先祖である五人の英雄たちに封じられた魔物ではないかと!」
私たちが話しているのを聞いてリーダー格の騎士が言いました。
「そうですね、セイダさん……」
エミール王子が気まずそうに笑いました。
「とりあえず、対策を話し合うためにここにいる者のほか、研究施設や医療施設の者にも参加してもらいたい」
サラ様が言いました。
「誰か、医療施設の方にも知らせに行ってくれ」
セイダさんが声をかけ、研究施設の方はサラ様が声をかけ、私たちはみな大会議室の方へ移動することにしました。
「あの、サラ様……」
私は歩きながら声をかけました。
「なんだい、リーニャ?」
「少し気になることがあるのです。確か、数百年前にルルージュ家が滅びたのも王家が婚約者を断罪してからだし、ティオのお母様の家もそう。『虹色』もしかしたらそういう展開かもしれないし、偶然にしてはできすぎのような?」
「何が言いたいんだい?」
「つまり、前世の乙女ゲームは恋愛主体の娯楽だったけど、公爵家没落という観点から見ると……」
「君は私たちの前世の乙女ゲームが公爵家を滅ぼすために作られたものだと言いたいのかい?」
「可能性です。ただ、私たちが関係あるゲームは公爵家がどうなっていたかは?」
「ヴァイスハーフェン家は没落していたね。ブリステル家は覚えていない、ミリアならもしかしたら覚えているかも、でもそれがいったい?」
「公爵家が滅んで得するのは一体だれでしょう?」
「なるほど一考の価値はあるな。だとしたら……」
サラ様はしばらく思案していました。
大会議室には、研究施設の責任者と運営元ヴァイスハーフェン家のサラ様。
騎士団一行、エミール王子やバルドリックもいます。
医療施設からも責任者と治療師を束ねる長、そしてアルツ氏。
さらにエルフの一行。
「あの、ミリアは来てますか? 少し訪ねたいことがあるのですが……」
「ミリア?」
あ、しまったここじゃもしかして別の名前?
「ユリア・ポーラスのことです。彼女も呼んでいただけますか?」
サラ様が訂正してくれました。
研究所の人間が呼びに行ってくれたそうです。
「やあ、久しぶりだね。記憶が戻ったって連絡は受けていたけど、すっかり元の姿だ。君の記憶をなくす処置については話すと長くなるので、今は申し訳ないけどそれどころじゃない。君に聞きたいことがあったんだ。『虹色コンチェルト』のパート1でブリステル家がどうなったか覚えているかい?」
入ってきたミリアにサラ様は単刀直入に聞きました。
ミリアはその質問にうろたえました。
前世の乙女ゲームなんてこの世界で理解される代物じゃないし、転生者同士と分かっていても、暗黙の了解で「秘密」にするものだと思い込んでいたのでしょう。
「あ、あの……」
「困惑するのも分からなくはないが、ストーリーでは悪役令嬢が断罪されたのちブリステル家がどうなったか教えてほしいんだ」
「ブリステル家は軍事のかなめなので内乱が起こりかけますが、なんとかうまく抑えられ、フェリシアを含めブリステル家の者は全員死にます」
ミリアの答えに集まった人間はみな首をかしげました。
「いったい何の話だ? 内乱?」
騎士団長セイダさんが疑問を口にしました。
「すまない、いろいろ混乱していると思う。これから私が話すことを聞けばさらに信じられないかもしれないけど全部本当のことだ。この問題を解決するために必要な情報となるので聞いてほしい」
サラ様がその場に集まった人たちを一通り見まわしました。
そして、軽く息を吐き話を始めました。
「ここにいるリーニャ。そしてミリア、ここにいる人にとってはユリアかな。そして私たち三名にはこの世界に生まれる前に別の世界で生きていた記憶がある。我々はどうも同じ世界の同じ国にいて、乙女ゲームという娯楽を知っているのだが、その中のストーリーに出てくる人物の名前や境遇がこの世界の王家や公爵家の人物と全く同じなんだ」
「それはいったいどういう意味ですか?」
王族出身のエミール王子が質問をしました。
「乙女ゲーム自体は単純な恋愛ゲームで、王族や貴族の子弟を男爵など身分の低い少女と結ばれるというストーリーなのだが、それを邪魔する存在として王族と婚約者の地位にある公爵令嬢が存在する。彼女らのことは『悪役令嬢』と呼ばれたりする。この場では私やフェリシアがその役に当たっていたな」
「それで『悪役』って言葉がミリア君の口から……」
フォーゲル先生がかつての階段落ち事件の時のことを思い出しておっっしゃられました。
「ええ、ことが単に恋愛のさや当てだけなら害がないが、そのストーリーの中ではブリステルとヴァイスハーフェンの二つの公爵家が滅ぼされている。ティオレの母のいるヴェルダートルや数百年前のルルージュやメレディスにしても、もしかしたら、同じようなゲームのストーリーになぞらえて滅ぼされたのかもしれない」
「あー、ちょっとよくわからないのだが、どうしてこの世界にいる人物の情報が、別の世界にもれて『オトメゲーム』とやらに使われたりしているんだい?」
セイダさんが頭をひねりながら疑問を口にしました。
「魔物が封じられているあの洞窟は異世界に通じているとの話なら聞いたことがあるぞ。この世界に対しての物理的な影響力なら封印でなしにできるが、精神攻撃なら多少は使えていたのかもしれない。ましてや異世界なら……」
ティオレが考えながら言いました。
「五つの公爵家がことごとく乙女ゲームの断罪イベントの後に滅ぼされているのは偶然ではないかもしれない、と、リーニャが言ってね。そのあと考えたんだ。五大公爵家が滅んで得するのは誰か、かつてその先祖である五人の英雄たちに封じられた魔物ではないかと!」
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