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第45話 ブリステル家で対策会議
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王宮から派遣された衛兵隊は、代表が一人屋敷に入り国王からの書簡を渡した以外は敷地内に入らず、ブリステル公爵邸の周りを囲んでいるだけでした。
それでもすごい数!
公爵邸の敷地の面積自体がすごいですから、それを余さず覆う数というと、ええと……、数えることは難しいですが相当な数というわけです。
フェリシアに連れられて私たちが屋敷に入ると、彼女の両親らしきお二人が沈痛な面持ちでいらっしゃいました。
「これは、ヴァイスハーフェン嬢。おお、ミンディ先生もいらしてくれたのですか!」
サラ様とミンディをまず確認して、中年の男の方、おそらく彼がフェリシアの父でブリステル公爵、が言いました。
「ええ、愛弟子の窮地に駆け付けないわけないでしょう」
ミンディが即座に公爵に答えました。
「今回の状況について混乱されておられると思います。そのことについて説明をしにまいりました、それからこの二人は……」
続いてサラ様が説明をされました。
「初めまして、公爵。私はフェリシア嬢の通う学園で教鞭をとっておりますフォ―ゲルと申します」
「私はフェリシアと同じクラスで、生徒会でもご一緒させていただいておりますリーニャ・クルージュと申します」
公爵夫妻と初対面の私とフォーゲル先生は自己紹介をしました。
「エドゼルが反逆罪でとらわれている、と、言うのをご説明いただけますか?」
サラ様は王宮での一連の出来事を説明いたしました。
「ヴェルダートル! なぜ今さらその名が? それにフェリシアとハーフエルフがって何のことですか? エミール王子殿下と婚約解消して以来、私どもは娘の結婚について何も動いておりませんぞ!」
公爵は驚きとも怒りともとれる反応を見せました。
「その、たしかに言いがかりじみているのは事実です。王宮には少々怪しげな空気が充満していましたし、それの正体がつかめず私たちもなんとも……。そうだ、フェリシア自身は何か思い当たることがあるかい? 王妃の言っていたハーフエルフっておそらくティオレのことだと思うのだけど」
フェリシアはサラ様の話を聞いて少しもじもじしていました。
言いにくそうなそぶりをしているところ、ミンディの方が口をはさみました。
「エドゼルがエルフ王との話を終えた後にぷりぷり怒っていたのってフェリシアのことでしょう。なんでも夜に息子に頼んで連れてきてもらったのどうのと……」
「「「「「「……?」」」」」」
ミンディの言葉をその場にいた者たちは理解できず首をかしげました。
「ああ、私たちはエルフ王と個別に面談したでしょう。他の人はどんな話をするのかなと思って、闇と風の術で盗み聞きしちゃった」
文字通り『てへぺろ』って表情でミンディは言いました。
そして話を続けます。
「何でもエルフ王がフェリシアのなにがしかを気にして、息子のティオレに連れてくるように頼んだって。エドゼルは人の妹をなに夜半に連れだしてるんだって怒り心頭だったわね。エルフ王としては君の妹にも会ったことあるよって軽い気持ちで言っていたみたいだけどね」
それでエドゼルはあの時怒っていたのですか、納得。
「そりゃ、悪かったな。俺も母親によく言われるけど、親父は人間界の常識に少し疎いところがあるからな」
その場に集う面々とは違う声が聞こえ、私たちはそちらの方に顔を向けました。
ティオレです。
公爵は彼が噂の主だと知ると噛みつかんばかりに言いました。
「貴様がうちの娘を!」
「ちょ……、落ち着いて……」
「やかましい! 勝手に人の娘連れ出して何した!」
「それはさっきサラ会長やそこの女の人が……」
「よくも娘をキズモノに!」
「キズモノになんてされてません、お父さま!」
理屈が通じずただただお怒りの父親の公爵とうろたえるティオレ。
見かねて割って入ったフェリシア。
いやいや、今そんなこと言い合いしている場合じゃないでしょう。
「とにかく、俺は異変を察知して救援に来たんだ。五人がエルフの集落から帰る間際、親父がその長に連絡用の石を渡したんだ。そこから王宮の様子がわかってブリステル公爵家の人々をいますぐ王都から避難させた方がいいって話になってさ」
ティオレがここに来た理由を説明しました。
「ああ、それはアルツ氏が預かった石のことかい。彼は駐屯地の医療施設に残るから、それをエドゼルに託したんだっけ」
フォーゲル先生が思い出しながら言いました。
「ああ、エドゼルは今、牢につながれている。彼をエサにブリステル家全員の登城を促しているようだが行っちゃだめだ。王宮の奴らは一家全員を処刑する気満々だぜ」
「なぜそれがわかる?」
ティオレの忠告に対し、ブリステル公爵が理由を尋ねました。
「ハーフエルフがどうとか言っているけど、その存在自体は別に珍しいものでもなんでもない。過去にミューレアと結ばれたのが王子だったから注目を浴びただけだ」
ティオレは語り始めました。
「人との間に子をもうけるエルフは過去にいくらでもいたし、そういう存在がひっそりと生きている事例はいくらでもある。そういうエルフの血筋を引いた者たちと協力して人間社会の情報を俺たちは集めている。王宮にもそんなエルフの味方が少なからずいるのさ」
「ふむ、君もそういう存在の一人ということかい。ただ君はかつて滅んだ公爵家の血筋を引いているのではないのか? そういう意味では少し特殊なのでは?」
「ウ~ン、そうなのか……」
サラ様の指摘にティオレは困惑したように頭を掻きました。
「悪いがそういう人間の基準は俺には関係ない。というか、関係を持たせられるの事態迷惑というか……」
「ヴェルダートル、それが君の母親の元姓なんだろ」
「サラ会長、だから何なんだよ。確かにおふくろは過去に国王と悶着があって、森に追放されたのを親父たちエルフに助けられたらしいけど、おふくろに冤罪かけたのは王家の方だろ。それでまたまた言いがかりつけてくるとかさ」
ティオレは自分の母が王家によって受けた被害をチクリと指摘しました。
少し気まずい空気が流れた瞬間、またまた別の声がその場に響きました。
「説得はすんだか、ティオレ」
それでもすごい数!
公爵邸の敷地の面積自体がすごいですから、それを余さず覆う数というと、ええと……、数えることは難しいですが相当な数というわけです。
フェリシアに連れられて私たちが屋敷に入ると、彼女の両親らしきお二人が沈痛な面持ちでいらっしゃいました。
「これは、ヴァイスハーフェン嬢。おお、ミンディ先生もいらしてくれたのですか!」
サラ様とミンディをまず確認して、中年の男の方、おそらく彼がフェリシアの父でブリステル公爵、が言いました。
「ええ、愛弟子の窮地に駆け付けないわけないでしょう」
ミンディが即座に公爵に答えました。
「今回の状況について混乱されておられると思います。そのことについて説明をしにまいりました、それからこの二人は……」
続いてサラ様が説明をされました。
「初めまして、公爵。私はフェリシア嬢の通う学園で教鞭をとっておりますフォ―ゲルと申します」
「私はフェリシアと同じクラスで、生徒会でもご一緒させていただいておりますリーニャ・クルージュと申します」
公爵夫妻と初対面の私とフォーゲル先生は自己紹介をしました。
「エドゼルが反逆罪でとらわれている、と、言うのをご説明いただけますか?」
サラ様は王宮での一連の出来事を説明いたしました。
「ヴェルダートル! なぜ今さらその名が? それにフェリシアとハーフエルフがって何のことですか? エミール王子殿下と婚約解消して以来、私どもは娘の結婚について何も動いておりませんぞ!」
公爵は驚きとも怒りともとれる反応を見せました。
「その、たしかに言いがかりじみているのは事実です。王宮には少々怪しげな空気が充満していましたし、それの正体がつかめず私たちもなんとも……。そうだ、フェリシア自身は何か思い当たることがあるかい? 王妃の言っていたハーフエルフっておそらくティオレのことだと思うのだけど」
フェリシアはサラ様の話を聞いて少しもじもじしていました。
言いにくそうなそぶりをしているところ、ミンディの方が口をはさみました。
「エドゼルがエルフ王との話を終えた後にぷりぷり怒っていたのってフェリシアのことでしょう。なんでも夜に息子に頼んで連れてきてもらったのどうのと……」
「「「「「「……?」」」」」」
ミンディの言葉をその場にいた者たちは理解できず首をかしげました。
「ああ、私たちはエルフ王と個別に面談したでしょう。他の人はどんな話をするのかなと思って、闇と風の術で盗み聞きしちゃった」
文字通り『てへぺろ』って表情でミンディは言いました。
そして話を続けます。
「何でもエルフ王がフェリシアのなにがしかを気にして、息子のティオレに連れてくるように頼んだって。エドゼルは人の妹をなに夜半に連れだしてるんだって怒り心頭だったわね。エルフ王としては君の妹にも会ったことあるよって軽い気持ちで言っていたみたいだけどね」
それでエドゼルはあの時怒っていたのですか、納得。
「そりゃ、悪かったな。俺も母親によく言われるけど、親父は人間界の常識に少し疎いところがあるからな」
その場に集う面々とは違う声が聞こえ、私たちはそちらの方に顔を向けました。
ティオレです。
公爵は彼が噂の主だと知ると噛みつかんばかりに言いました。
「貴様がうちの娘を!」
「ちょ……、落ち着いて……」
「やかましい! 勝手に人の娘連れ出して何した!」
「それはさっきサラ会長やそこの女の人が……」
「よくも娘をキズモノに!」
「キズモノになんてされてません、お父さま!」
理屈が通じずただただお怒りの父親の公爵とうろたえるティオレ。
見かねて割って入ったフェリシア。
いやいや、今そんなこと言い合いしている場合じゃないでしょう。
「とにかく、俺は異変を察知して救援に来たんだ。五人がエルフの集落から帰る間際、親父がその長に連絡用の石を渡したんだ。そこから王宮の様子がわかってブリステル公爵家の人々をいますぐ王都から避難させた方がいいって話になってさ」
ティオレがここに来た理由を説明しました。
「ああ、それはアルツ氏が預かった石のことかい。彼は駐屯地の医療施設に残るから、それをエドゼルに託したんだっけ」
フォーゲル先生が思い出しながら言いました。
「ああ、エドゼルは今、牢につながれている。彼をエサにブリステル家全員の登城を促しているようだが行っちゃだめだ。王宮の奴らは一家全員を処刑する気満々だぜ」
「なぜそれがわかる?」
ティオレの忠告に対し、ブリステル公爵が理由を尋ねました。
「ハーフエルフがどうとか言っているけど、その存在自体は別に珍しいものでもなんでもない。過去にミューレアと結ばれたのが王子だったから注目を浴びただけだ」
ティオレは語り始めました。
「人との間に子をもうけるエルフは過去にいくらでもいたし、そういう存在がひっそりと生きている事例はいくらでもある。そういうエルフの血筋を引いた者たちと協力して人間社会の情報を俺たちは集めている。王宮にもそんなエルフの味方が少なからずいるのさ」
「ふむ、君もそういう存在の一人ということかい。ただ君はかつて滅んだ公爵家の血筋を引いているのではないのか? そういう意味では少し特殊なのでは?」
「ウ~ン、そうなのか……」
サラ様の指摘にティオレは困惑したように頭を掻きました。
「悪いがそういう人間の基準は俺には関係ない。というか、関係を持たせられるの事態迷惑というか……」
「ヴェルダートル、それが君の母親の元姓なんだろ」
「サラ会長、だから何なんだよ。確かにおふくろは過去に国王と悶着があって、森に追放されたのを親父たちエルフに助けられたらしいけど、おふくろに冤罪かけたのは王家の方だろ。それでまたまた言いがかりつけてくるとかさ」
ティオレは自分の母が王家によって受けた被害をチクリと指摘しました。
少し気まずい空気が流れた瞬間、またまた別の声がその場に響きました。
「説得はすんだか、ティオレ」
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