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第38話 エルフの王を訪ねて
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魔法陣で移動した先は駐屯所の裏庭でした。
私たちは駐屯所の中に案内され、今日はそこに泊まり、明日日が昇ってから駐屯所の人の案内でエルフの集落に向かうことになるそうです。
「じゃあ、ミンディさんは闇得意でフェリシアの家庭教師になったのですか?」
ペルティナの叔母に当たるミンディさんの話を夕食を取りながら耳を傾けておりました。
「フェリシアはね、さすがは公爵家の血筋というか、持っている魔力量が多くてね。魔力の含有量っていうのはただ多ければいいってもんじゃなくてね、それをコントロールできる精神力を兼ね備えているかってことも重要なの。なまじ含有量が多いと、子供の頃の情緒に不安定さがでてくるのよ」
なるほど、勉強になります。
「ああ、それゆえに妹のことを好き勝手いう奴も絶えなくてな。まさか王子までふざけたことをぬかすとはおもわなかったけどな!」
横からフェリシアの兄エドゼル様が入ってきました。
まだエミール王子の所業を根に持っておられるようです。
「王家が婚約解消について、自分たちの非をちゃんと公表しないから、その件に関してもフェリシアに問題があるかのように言う輩も絶えない。だいたい王家は……」
ちょっとそれは人が大勢いるところでさすがにまずくないですか。
そう危惧した矢先、今度はフォーゲル先生が話に割って入りました。
「でも最近は彼女も明るくなりましたね。特に生徒会の活動を始めてから。リーニャ君ともいつも一緒なんだよね」
先生ナイスアシストです。
「まあ、そうだな……。フェリシアと仲良くしてくれて感謝しているよ。今度、生徒会の友人たちをうちに招待しようという話もこの前出たんだよ」
エドゼル様の機嫌がなおり、怒りもトーンダウンしたようです。
「みな、明日のことについて話してもいいか?」
今度はアルツさんが話に入ってきました。
「エルフの王の前に出たら、まず膝をついてあいさつの後自己紹介。そのあとの疑問点は私が聞くし、王家への報告も私がやる。ただどんな答えが返ってくるか予想ができないので、答えによってはみんなにも話しに参加してもらうことになるからな」
アルツさんは実はフォーゲル先生と同じく新入生の魔法の授業を請け負っているアルツ先生の親戚の方でした。
先生の方は四属性がまんべんなく得意で光と闇が苦手。
何とかそれらも得意になってゆくゆくはこのアルツさんと同じく治癒魔法の使い手を目指しているそうです。
さて翌朝、一行の五名プラス案内人の六名でエルフの集落に向かいました。
案内人はこの駐屯地に勤めて五年のベテラン、ディレクさんです。
三十代半ばくらいの茶髪の男性です。
樹齢百年は過ぎているのではないかという巨大な樹木が林立する森。
ドゥンケルヒンターの森の中でもこの一帯は特に大きく成長した樹木が多いそうです。エルフを産むというユグドレーシアの巨大樹が近くにあるからでしょうか。
フォーゲル先生のテンションがなぜか高めです。
「リーニャ君、今の見たかい。青く発光したリスもどきだよ。ベースが小動物の魔物はせいぜい入ってくる人間を激しく威嚇する程度なんだけど、あれは普通のリス同様に穏やかだ」
私にも興奮気味に話しかけます。
「やはりエルフの集落近くは魔物に与える影響も他のところと違うのかな。ああ、飛んでいる鳥もどんな風か知りたいけど、木々にさえぎられてよく見えないよ」
フォーゲル先生、生徒の私より子供っぽい!
「楽しんでいる様子を見ると連れてきたかいがあった、と、言いたいところだが、もうすぐ集落だ、気を引き締めてくれ」
アルツさんに太い釘を刺されました。
神社の鳥居にも似た木で組まれた門をくぐると、そこがエルフの集落でした。
木組みのツリーハウスがそこかしこにあります。
そこから顔を覗かしている方々は髪が森に溶け込んでいるような葉っぱの色、あるいは花の色、彼らを見ていると、ああ、自分たちにもエルフの血が混ざっているのだなあ、と、しみじみ思います。
「お久しぶりです、皆さん」
ディレクさんが物陰から様子をうかがっているエルフたちに挨拶をしていきます。
彼は東駐屯地の管理者として頻繁にエルフの集落に訪れているので、顔見知りがかなりいるようです。
「この奥にユグドレーシアという巨大樹があるんだ」
二股に分かれている道の左側を指さしてアルツさんが言いました。
私たちは右側の道を行くようです。。
やがて集落の中で最も大きな建物の前につき、アルツさんがひざまずいたのに習って私たちもひざまずきました。
しばらく待っていると建物の中から、プラチナブロンドに金色の瞳をした、二十代くらいの青年が出てきました。
「お久しゅうございます、アランティア殿」
案内人のディレクさんが言いました。
「そちらの者たちは?」
アランティアと呼ばれたエルフの王が聞きました。
私たち五人が一通り挨拶をします。するとアランティアは腕を広げ私たちに何かを投げるようなしぐさをしました。
金色の小さな光の粒がふわふわと私たちに向かってきてそして吸い込まれるように消えました。
「ユグドレーシアの精気だ。エルフの生命の源だが、そなたたちの魔法能力の向上にも役立つだろう」
おお、素敵な贈り物だったのですね!
「して、わざわざいにしえのやり方に倣って五名の戦士をよこしたということは私に何か協力を仰ぎたいことがあるのだな」
ようやく本題にかかったようです。
私たちは駐屯所の中に案内され、今日はそこに泊まり、明日日が昇ってから駐屯所の人の案内でエルフの集落に向かうことになるそうです。
「じゃあ、ミンディさんは闇得意でフェリシアの家庭教師になったのですか?」
ペルティナの叔母に当たるミンディさんの話を夕食を取りながら耳を傾けておりました。
「フェリシアはね、さすがは公爵家の血筋というか、持っている魔力量が多くてね。魔力の含有量っていうのはただ多ければいいってもんじゃなくてね、それをコントロールできる精神力を兼ね備えているかってことも重要なの。なまじ含有量が多いと、子供の頃の情緒に不安定さがでてくるのよ」
なるほど、勉強になります。
「ああ、それゆえに妹のことを好き勝手いう奴も絶えなくてな。まさか王子までふざけたことをぬかすとはおもわなかったけどな!」
横からフェリシアの兄エドゼル様が入ってきました。
まだエミール王子の所業を根に持っておられるようです。
「王家が婚約解消について、自分たちの非をちゃんと公表しないから、その件に関してもフェリシアに問題があるかのように言う輩も絶えない。だいたい王家は……」
ちょっとそれは人が大勢いるところでさすがにまずくないですか。
そう危惧した矢先、今度はフォーゲル先生が話に割って入りました。
「でも最近は彼女も明るくなりましたね。特に生徒会の活動を始めてから。リーニャ君ともいつも一緒なんだよね」
先生ナイスアシストです。
「まあ、そうだな……。フェリシアと仲良くしてくれて感謝しているよ。今度、生徒会の友人たちをうちに招待しようという話もこの前出たんだよ」
エドゼル様の機嫌がなおり、怒りもトーンダウンしたようです。
「みな、明日のことについて話してもいいか?」
今度はアルツさんが話に入ってきました。
「エルフの王の前に出たら、まず膝をついてあいさつの後自己紹介。そのあとの疑問点は私が聞くし、王家への報告も私がやる。ただどんな答えが返ってくるか予想ができないので、答えによってはみんなにも話しに参加してもらうことになるからな」
アルツさんは実はフォーゲル先生と同じく新入生の魔法の授業を請け負っているアルツ先生の親戚の方でした。
先生の方は四属性がまんべんなく得意で光と闇が苦手。
何とかそれらも得意になってゆくゆくはこのアルツさんと同じく治癒魔法の使い手を目指しているそうです。
さて翌朝、一行の五名プラス案内人の六名でエルフの集落に向かいました。
案内人はこの駐屯地に勤めて五年のベテラン、ディレクさんです。
三十代半ばくらいの茶髪の男性です。
樹齢百年は過ぎているのではないかという巨大な樹木が林立する森。
ドゥンケルヒンターの森の中でもこの一帯は特に大きく成長した樹木が多いそうです。エルフを産むというユグドレーシアの巨大樹が近くにあるからでしょうか。
フォーゲル先生のテンションがなぜか高めです。
「リーニャ君、今の見たかい。青く発光したリスもどきだよ。ベースが小動物の魔物はせいぜい入ってくる人間を激しく威嚇する程度なんだけど、あれは普通のリス同様に穏やかだ」
私にも興奮気味に話しかけます。
「やはりエルフの集落近くは魔物に与える影響も他のところと違うのかな。ああ、飛んでいる鳥もどんな風か知りたいけど、木々にさえぎられてよく見えないよ」
フォーゲル先生、生徒の私より子供っぽい!
「楽しんでいる様子を見ると連れてきたかいがあった、と、言いたいところだが、もうすぐ集落だ、気を引き締めてくれ」
アルツさんに太い釘を刺されました。
神社の鳥居にも似た木で組まれた門をくぐると、そこがエルフの集落でした。
木組みのツリーハウスがそこかしこにあります。
そこから顔を覗かしている方々は髪が森に溶け込んでいるような葉っぱの色、あるいは花の色、彼らを見ていると、ああ、自分たちにもエルフの血が混ざっているのだなあ、と、しみじみ思います。
「お久しぶりです、皆さん」
ディレクさんが物陰から様子をうかがっているエルフたちに挨拶をしていきます。
彼は東駐屯地の管理者として頻繁にエルフの集落に訪れているので、顔見知りがかなりいるようです。
「この奥にユグドレーシアという巨大樹があるんだ」
二股に分かれている道の左側を指さしてアルツさんが言いました。
私たちは右側の道を行くようです。。
やがて集落の中で最も大きな建物の前につき、アルツさんがひざまずいたのに習って私たちもひざまずきました。
しばらく待っていると建物の中から、プラチナブロンドに金色の瞳をした、二十代くらいの青年が出てきました。
「お久しゅうございます、アランティア殿」
案内人のディレクさんが言いました。
「そちらの者たちは?」
アランティアと呼ばれたエルフの王が聞きました。
私たち五人が一通り挨拶をします。するとアランティアは腕を広げ私たちに何かを投げるようなしぐさをしました。
金色の小さな光の粒がふわふわと私たちに向かってきてそして吸い込まれるように消えました。
「ユグドレーシアの精気だ。エルフの生命の源だが、そなたたちの魔法能力の向上にも役立つだろう」
おお、素敵な贈り物だったのですね!
「して、わざわざいにしえのやり方に倣って五名の戦士をよこしたということは私に何か協力を仰ぎたいことがあるのだな」
ようやく本題にかかったようです。
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