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第12話 親バカでスポイル(後編)~サラ目線~
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「母上、いい加減になさいませ! サラじゃなく僕が生徒会長でも同じ処分をしていたはずです。母上の言うとおりにするという事は、非のある者を見逃して、ないものを罰するという事です。そんなことをすれば生徒会そのものの信頼が揺らぎます」
ジーク王太子からナイスアシスト来ました。
「私もリーニャさんの処分など希望しておりません。私が言いたかったのは、学園での活動時間を削って王宮での仕事などを肩代わりしていたのに、そのあり様を周囲の方々に悪いように吹聴されているのを聞いて、エミール殿下の仕事の代行はもちろん、生涯の伴侶として一緒にやっていく気持ちもきれいさっぱり消えてしまったことにあります」
フェリシア嬢からも同意の言葉いただきました。
ただそこに続く言葉が……、もう婚約関係続けるの無理筋じゃね。
こんなことになった原因として、エミール何がしたかったんだ?
クズ過ぎやしないか?
「私だって時間さえ許せば本当は生徒会の活動に参加したかったのです。ですが、それをせずあえてエミール殿下やサラ様のお仕事を肩代わりしてきたのは、王太子殿下とサラ様が助け合って学園生活を充実させてきた様を素晴らしいと思ったからです。だから今年は、私がエミール殿下が心置きなく活動できるよう、自分が王宮での雑務をこなすことを引き受けたのですが……」
やだ、なに?
この娘、可愛い!
けなげすぎて涙が出る。
エミールのアホはわかっているのか、と、思って彼の顔を見たけど、なんか不満そう。相似形のように、自分の思う通りの発言をしなかった二人の王子の嫁候補に対して、王妃が渋い顔をしていますよ。
「フェリシア嬢。これ以上あなたの優しさに甘えるわけにはまいりませんので、私の王宮での業務の肩代わりはもう十分です」
エミール王子と王妃の表情は無視して私はフェリシアに言いました。
「だったらサラの仕事は僕が肩代わりしよう。僕ができない分は母上がやることができるでしょう。いいですね、母上。エミール、お前も今までフェリシア嬢に任せていたものは自分でやるようにしろ。そしたら、今まで言ってきたことがどれだけ無体かわかるだろう。そうなれば、生徒会室への出入り禁止などなくても行っている時間はなくなるだろうがな。」
ジーク王太子が私の発言を受けて提案してくれました。
「生徒会長である私から言いたいことは以上です。婚約関係をどうなさるかは、両家が話合いで決められることですので、そのことに関しての発言は控えます。ただ、どういった決定になろうとも、先ほど言った処分は変わりませんので」
太い釘をぶっ刺して、そのあと私は沈黙を守りました。
国王はエミールの若さゆえの未熟さを主張して、これから成長してゆくので気長に見守ってほしいと懇願していました。
若さというならフェリシアも同い年ですけどね。
でも、彼女は相手のために自分の学園生活の楽しみを犠牲にしようとしたのですよ。エミールの方はというと、それを当たり前と思い、いや当たり前どころかそれをしてもらった結果の状態に文句をつけて陰で笑いものにしていたのだから、未熟どころかタチが悪い!
結果としては国王のしつこい懇願にブリステル公爵夫妻ではなく、娘のフェリシアが根負けをして継続を受け入れた形になりました。
この娘って気が優しいというか弱いというか、それは美点でもあるけど心配になってくるな。
話し合いが終わった後、フェリシアから、
「サラ様、私をかばってくれてありがとうございました。サラ様と王太子殿下のようになりたいと思っていたのに、結局こういうことになって、ダメですね、わたしは」
そう声をかけられました。
「婚約者同士の関係は互いの性格によってそれぞれ違うだろうから、私たちと同じでないからと言って落ち込むことはないよ。そもそもこの事態で悪いのは君の方じゃない。私の仕事の方も今までやってくれてありがとうね」
私はフェリシア嬢をねぎらいました。
「今までずっと自分のやりたいことを我慢していたのだから、休みをもらったと思ってやりたいことをやってみるのもいいんじゃないかい。」
横にいたジーク王太子も彼女を励ましました。
フェリシアは驚いた顔をして私たち二人を見やり眼に浮かんだ涙をぬぐいました。
フェリシアと別れた後、私とジーク王太子殿下はいっしょに廊下を歩きながら話しました。
「君はフェリシア嬢にこれまでのことについての礼も言ったけど、あいつはそれも無しなのか?」
ジークが呆れたように言いました。
エミールは王妃とともに退室したが納得できないという表情、婚約を継続と言っても首の皮一枚でつながっている状態だというのが分かっているのかね、あの親子は。
第一子であったジークはいずれ国を治める者として、甘やかされず国王や家臣団からの英才教育をずっと受けていたけど、第二子だったエミールはジークのことに口出しできない分も含めて、王妃が甘々な育て方をしていました。
生まれながらかしずかれる身分であるので、他人がしてくれることを当たり前に思っている上に、母王妃の甘やかしがその傲岸不遜に拍車をかけたと見えます。
「それにしても、エミール殿下は生徒会の仲間に向かって、どうしてあそこまでフェリシア嬢を貶めるような言動をしたのでしょう? これだけはさっぱりわからないですね」
私は疑問を口にしました。
すると私たち二人の少し後ろを歩いていたジーク王太子の従者トロイアが、恐れながら、と、いいながら意見を述べてくれました。
「王太子殿下もサラ様も極めて優秀なお方ゆえ、そうでない方のお気持ちがわからないのではないでしょうか。もちろんエミール殿下も優秀な方ですが、フェリシア嬢の優秀さは群を抜いています。入学成績もエミール殿下を抜いて一位、二位のエミール殿下としては、自分より上の成績を取った婚約者が自分の仕事を肩代わりしていて参加できないとなると体裁が悪いと考えたのではないでしょうか」
「なんだ、それは! フェリシア嬢が一位を取ったのが悪いみたいだね、もしその推測が当たっていたらちっちぇえ男!」
「フェリシア嬢に手を抜けなどと言えるわけがないし、そんなことで体裁がどうのと考えるくらいなら、エミールが今度こそは上をいくよう頑張ればいいだけだろ!」
私とジーク殿下は口々に言いました。
「ああ、やはりお二人はそう考えられるのですね。自分はお二人に比べれば凡庸な輩ですので、ついそうでないかと推測してしまったわけで……。ケチな性根の家臣のくだらない推測として一笑に付していただいて構いません」
ジーク殿下が幼い頃からずっと仕えてくれる従者の意見、まあまあ、参考になりました。
当たっているとしたなら婚約継続とはなったけど、フェリシアにとっては厄介だな。心根は純粋な子みたいだし「悪役令嬢」に仕立て上げられたりしないよう気を付けて見ていきましょう。
ジーク王太子からナイスアシスト来ました。
「私もリーニャさんの処分など希望しておりません。私が言いたかったのは、学園での活動時間を削って王宮での仕事などを肩代わりしていたのに、そのあり様を周囲の方々に悪いように吹聴されているのを聞いて、エミール殿下の仕事の代行はもちろん、生涯の伴侶として一緒にやっていく気持ちもきれいさっぱり消えてしまったことにあります」
フェリシア嬢からも同意の言葉いただきました。
ただそこに続く言葉が……、もう婚約関係続けるの無理筋じゃね。
こんなことになった原因として、エミール何がしたかったんだ?
クズ過ぎやしないか?
「私だって時間さえ許せば本当は生徒会の活動に参加したかったのです。ですが、それをせずあえてエミール殿下やサラ様のお仕事を肩代わりしてきたのは、王太子殿下とサラ様が助け合って学園生活を充実させてきた様を素晴らしいと思ったからです。だから今年は、私がエミール殿下が心置きなく活動できるよう、自分が王宮での雑務をこなすことを引き受けたのですが……」
やだ、なに?
この娘、可愛い!
けなげすぎて涙が出る。
エミールのアホはわかっているのか、と、思って彼の顔を見たけど、なんか不満そう。相似形のように、自分の思う通りの発言をしなかった二人の王子の嫁候補に対して、王妃が渋い顔をしていますよ。
「フェリシア嬢。これ以上あなたの優しさに甘えるわけにはまいりませんので、私の王宮での業務の肩代わりはもう十分です」
エミール王子と王妃の表情は無視して私はフェリシアに言いました。
「だったらサラの仕事は僕が肩代わりしよう。僕ができない分は母上がやることができるでしょう。いいですね、母上。エミール、お前も今までフェリシア嬢に任せていたものは自分でやるようにしろ。そしたら、今まで言ってきたことがどれだけ無体かわかるだろう。そうなれば、生徒会室への出入り禁止などなくても行っている時間はなくなるだろうがな。」
ジーク王太子が私の発言を受けて提案してくれました。
「生徒会長である私から言いたいことは以上です。婚約関係をどうなさるかは、両家が話合いで決められることですので、そのことに関しての発言は控えます。ただ、どういった決定になろうとも、先ほど言った処分は変わりませんので」
太い釘をぶっ刺して、そのあと私は沈黙を守りました。
国王はエミールの若さゆえの未熟さを主張して、これから成長してゆくので気長に見守ってほしいと懇願していました。
若さというならフェリシアも同い年ですけどね。
でも、彼女は相手のために自分の学園生活の楽しみを犠牲にしようとしたのですよ。エミールの方はというと、それを当たり前と思い、いや当たり前どころかそれをしてもらった結果の状態に文句をつけて陰で笑いものにしていたのだから、未熟どころかタチが悪い!
結果としては国王のしつこい懇願にブリステル公爵夫妻ではなく、娘のフェリシアが根負けをして継続を受け入れた形になりました。
この娘って気が優しいというか弱いというか、それは美点でもあるけど心配になってくるな。
話し合いが終わった後、フェリシアから、
「サラ様、私をかばってくれてありがとうございました。サラ様と王太子殿下のようになりたいと思っていたのに、結局こういうことになって、ダメですね、わたしは」
そう声をかけられました。
「婚約者同士の関係は互いの性格によってそれぞれ違うだろうから、私たちと同じでないからと言って落ち込むことはないよ。そもそもこの事態で悪いのは君の方じゃない。私の仕事の方も今までやってくれてありがとうね」
私はフェリシア嬢をねぎらいました。
「今までずっと自分のやりたいことを我慢していたのだから、休みをもらったと思ってやりたいことをやってみるのもいいんじゃないかい。」
横にいたジーク王太子も彼女を励ましました。
フェリシアは驚いた顔をして私たち二人を見やり眼に浮かんだ涙をぬぐいました。
フェリシアと別れた後、私とジーク王太子殿下はいっしょに廊下を歩きながら話しました。
「君はフェリシア嬢にこれまでのことについての礼も言ったけど、あいつはそれも無しなのか?」
ジークが呆れたように言いました。
エミールは王妃とともに退室したが納得できないという表情、婚約を継続と言っても首の皮一枚でつながっている状態だというのが分かっているのかね、あの親子は。
第一子であったジークはいずれ国を治める者として、甘やかされず国王や家臣団からの英才教育をずっと受けていたけど、第二子だったエミールはジークのことに口出しできない分も含めて、王妃が甘々な育て方をしていました。
生まれながらかしずかれる身分であるので、他人がしてくれることを当たり前に思っている上に、母王妃の甘やかしがその傲岸不遜に拍車をかけたと見えます。
「それにしても、エミール殿下は生徒会の仲間に向かって、どうしてあそこまでフェリシア嬢を貶めるような言動をしたのでしょう? これだけはさっぱりわからないですね」
私は疑問を口にしました。
すると私たち二人の少し後ろを歩いていたジーク王太子の従者トロイアが、恐れながら、と、いいながら意見を述べてくれました。
「王太子殿下もサラ様も極めて優秀なお方ゆえ、そうでない方のお気持ちがわからないのではないでしょうか。もちろんエミール殿下も優秀な方ですが、フェリシア嬢の優秀さは群を抜いています。入学成績もエミール殿下を抜いて一位、二位のエミール殿下としては、自分より上の成績を取った婚約者が自分の仕事を肩代わりしていて参加できないとなると体裁が悪いと考えたのではないでしょうか」
「なんだ、それは! フェリシア嬢が一位を取ったのが悪いみたいだね、もしその推測が当たっていたらちっちぇえ男!」
「フェリシア嬢に手を抜けなどと言えるわけがないし、そんなことで体裁がどうのと考えるくらいなら、エミールが今度こそは上をいくよう頑張ればいいだけだろ!」
私とジーク殿下は口々に言いました。
「ああ、やはりお二人はそう考えられるのですね。自分はお二人に比べれば凡庸な輩ですので、ついそうでないかと推測してしまったわけで……。ケチな性根の家臣のくだらない推測として一笑に付していただいて構いません」
ジーク殿下が幼い頃からずっと仕えてくれる従者の意見、まあまあ、参考になりました。
当たっているとしたなら婚約継続とはなったけど、フェリシアにとっては厄介だな。心根は純粋な子みたいだし「悪役令嬢」に仕立て上げられたりしないよう気を付けて見ていきましょう。
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