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初デートinニューヨーク

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「俺は今まで女性と付き合ったどころか、子供の頃から友達もあまりいないんだ。だから……どう受け答えをしたらいいのか分からなかった」
「でもさっき、弁護士や事務所人達について聞いた時は、きちんと話していましたよね……?」
「自分にとって得意な事は話せる。仕事や法律関係の話、自分の事も。でもそれ以外は全く分からないんだ。何を話せばいいのかさっぱりなんだ……」

 いつになく肩を落とす楓さんに私は呆気に取られてしまう。

「じゃあ、会話が続かなかったのは、私がうるさかったからではなく……」
「何を話し、どう返したらいいのか分からなかったんだ。不安にさせていたのなら、すまない……」

 何か言わなければと思いながらも、ようやく出てきた言葉は「いえ……」のたった二文字だけだった。

「でもこれで安心出来ます。私は楓さんにとって、うるさくて、迷惑な存在じゃなかったって」
「小春を迷惑と思った事は一度も無い。話もずっと聞いていたいくらいだ」
「本当ですか?」
「俺は口下手だから、上手い受け答えは出来ないかもしれないが、小春の話は聞いていて面白いし、俺が知らない話や興味の無い話もしてくれるからためになる。もう少し聞かせてくれないか。そうだな……例えば、俺が居ない間、日本では何をしていたか、何があったのか」
「そうですね……。そうだ! 私、パートを始めたんです。家にずっと居ても退屈で、時間が余ってしまったので……」
「何のパートを始めたんだ。まさか、怪しい仕事じゃないよな……」

 顔を青くしていたので、私は首を振って否定する。

「怪しい仕事じゃないです。家の近くのスーパーです。でも近々辞めようと思っています。前の職場で崩していた体調も完治したので、どこかに就職しようかと考えています」 
「本当に体調はもう大丈夫なのか……?」
「大丈夫です。仕事を辞めて、ゆっくり休みました。それに弁護士としてお仕事をされている楓さんを見ていると、私も働きたくなるんです」
「俺が?」
「触発されていると言えばいいのでしょうか……。書店に入社したばかりの頃を思い出して、身体を動かしたくなるんです。あちこち動いて、くたくたに疲れて帰宅して、今日も働いたって実感したくなります」
「そうか……。とにかく、元気になったのなら良かった。体調が悪いと聞いていたのに、日本から遠いこっちに来たから、無理をしたんじゃないかと心配したんだ」
「心配してくれたんですか?」
「それはまあ……。一人の人間として、小春の夫として、心配くらいはするだろう」

 楓さんは安心したのか、またピザを食べ始める。

(なんだろう……。すっごく嬉しい)

 楓さんに「心配くらいはするだろう」と言われて、胸の中が温かくなる。私もフォークを動かすと、またサラダを食べ始めたのだった。
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