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第三部
08 夢にまで見た
しおりを挟む「エリ、オ……?」
ロゼは、探していた人物が急に目の前に現れて、幻を疑った。
彼がいるのは孤児院の敷地内なのだ。
「よお。おはよー」
彼は呑気に朝の挨拶をしてきた。
「あ、おは、よ……」
茫然としてしまい、上手く挨拶が返せなかった。
「うんー?」
彼が首を傾げていると、後方からロゼも見知った人がもう一人こちらへ向かって走ってきた。
「おい、いたか、って……ああ、いたな」
到着して早々、エリオに尋ねたのはダグラスだ。
ロゼを見て、ほっと胸を撫で下ろしたのか、いつもの甘い微笑みを見せた。
「おう。ここに」
エリオは目の前の少女を指さした。
少女は平然としている二人の青年を見比べた。
「えっ、えっ、なんで? なんで二人ともここにいるの?」
「ああ? なんでって……」
エリオが答えを考えている最中、ダグラスは
「早く行こうよ、バレる前に」と二人を急かした。
黒髪の青年は、戸惑うロゼの手を掴んだ。
「行こ?――ロゼ」
と言って眉尻を下げて微笑みかけた。
「え……うん――!」
目尻を拭い、満面の笑みになった。頷き返し、二人の青年を信じてついて行くことにした。
柵伝いに駆けて行き、孤児院の記念樹が見えた辺りで立ち止まった。
秋にはあんなにも見事な紅の葉を魅せていたというのに、今は枯れ木同然の姿でロゼたちを見送った。
敷地外から、もう一人が「ロゼー、おはよー」と声を掛けてきた。
「あ、ポールもいる!」
「ああ、そうだ。お前を〝連れ去り〟に来た」
と言う赤毛の青年の言葉に、ロゼは首を傾げた。
柵外からは
「本当にやるの?」と不安そうな意見もある。
「ああ。やるよ」
エリオは当たり前じゃんとでも言いたげに肩をすくめた。
「この方が、俺らっぽいじゃん?」
ダグラスもこの行動に同意を示した。
「ロゼ、こっち」と少女を手招いた。
言われるがまま彼の傍へ寄った。
そんな彼女に、ダグラスは眉尻を下げた。
「本当、素直なんだから……いい子だね、ロゼ。俺らは、君の言う良い人じゃないんだけど」
「うん。悪くて、良い人だよ。泥棒サンタさん」
「言うねえ」
少女の返答に満足し、ニヤリと口角を上げた。
ロゼは得意げな顔をつくってお返しした。
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