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第三部

08 ネズミからの予告状

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 黒髪の彼は言った。

「ロボットに縛られない世界を……見せてあげるよ?」

 彼の漆黒の瞳と目を合わせると、呑み込まれる感覚に襲われた。

 次に言う赤毛の彼は、ロゼをその鋭い金眼で射抜いた。

「マキナなしでも、楽しいと言わせる。来い、ロゼ」

「うん――!」

 差し出された二人の手、その両方を取った。

 少女を攫った二人の青年は、満足げに笑い、柵の傍で屈んだ。

 ダグラスは少女に優しく指示した。

「足掛けて。そう……――ポール、受け止めてやれ」

「おー。こっちは大丈夫」

 ポールは二人に担がれた少女を柵の外へ出した。

 ゆっくりと地上へ降ろされた。もうここは孤児院の敷地外だ。

 不法侵入者の二人は、それを確認して、自分たちも外へ出る体勢を取った。

「エリオ」

「おう」柵の真横で少し屈み込んだ。

 ダグラスは差し出された手の平をバネにして柵の縁に飛び乗った。

 エリオは彼を見上げ「ん」と言って片手を上げた。
 次は自分を引っ張り上げろという催促だ。

「はい」と答えて、手首をしっかり掴み引き上げた。

 華麗に着地する二人の姿に、ロゼは興奮を隠しきれなかった。

「す、すごい。かっこいい……!」

と勝手に口が呟いていた。

「ええ?」エリオが訊き返した。

「早くここから離れた方が」

とポールが言った。緊張で顔が強張っている。

「そうだな、ロゼ」
「……うん!」

 エリオとロゼは微笑み合った。

 改めて再会できた喜びに浸った。

「本当に何も言わずにいいの?」
 ポールはやはり不安を口にした。

「大丈夫。もう一通、マキナ宛に入れといたから」
「ダグラス?」

 含みを持たせた彼に、他三人は互いを見合った。



 マキナが受け取った紺色の封筒、中身はやはりカードが一枚入っていた。

 マキナは神父と共に、書かれている内容を確認した。

「うん?……――これは!」

 内容を確認した神父は驚愕した。

 ――「一輪の薔薇をお預かりします。」――

 意味深げな怪しい内容だった。
 そして送り主は、なんとこの国で有名なある人の名前が書かれていた。

 しかし実在する人物ではない。大昔に書かれた小説に登場する、怪盗紳士の名だ。「明日にはお返しします。」と書かれた後に添えられていた。

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