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第二部 後編
08 『お返し』は俺ら流で?
しおりを挟む手紙を出してから数日の間、マキナは主人の様子を不思議に思い観察していた。
なんだかそわそわしているのだ。
「ロゼ?」
「えっ、何?」
顔色を窺うと、頬を赤らめていることも多かったので、額を触って熱がないかを確かめた。
「うーん。やっぱり、熱はありませんね」
「うん、そうだよ! なんでもないっ!」
とふて腐れて、ロボットに背を向けた。
「ロゼ?」
マキナは首を傾げた。
人間の感情というのが、ロボットにはまだまだ難解なのであろう。
主人にそんな態度をされても、特に変わらぬ態度で接した。
あくる日の朝、デヴォート神父はロゼを呼び寄せた。
「はい。なんですか?」
神父を不思議そうな面持ちで見上げた。
「はい。君宛てだよ」
手渡されたのは深紅の封筒だった。
「はい。ありがとうございます……?」
「でも気を付けてね? その手紙、誰からなのか――……名前も、住所も書いていないんだ」
「えっ?」
受け取った深紅の封筒の裏表を見たが、神父の言う通り差出人不明なことを確認した。
恐る恐る封を開けた。
「――うん?」
中には一枚のカードが入っていた。
「なあに?……えっ!」
中身を確認したロゼは、一瞬時間が止まったように固まった。
やがて目に涙を滲ませると、一目散に走り出した。
「おおう、ロゼくん!」と声を掛けるも無駄だった。
神父はため息をついて、手元の郵便物の中に、今度は紺色の怪しい封筒を見つけた。
宛先はロゼでなくマキナとなっている。首を傾げた。
「ちょっと、マキナ」
神父はロゼの後を追おうとした彼女を引き留めた。
書かれている内容を確認したロゼは何かに気づいた。
そして一陣の風のように玄関から極寒の外へ飛び出した。
カードには一言、文句だけが書かれていた。
――「俺らはジジイじゃねぇ!」――
勿論、ロゼにはそう書かれる理由には見当がついていた。差出人の名前もわかっていた。
彼女は閉まっている孤児院の門に勢い余ってしがみついた。
鉄格子ごしに目の前の道を望んだ。
裸の街路樹の並びに、ある人物の影を必死に探す。
朝なので人通りも少なく、居れば直ぐに見つかるはずだ。痕跡くらいは見つけたい。
曇り空に見守られて、ロゼは必死に目を凝らした。
例の文句は、自分が送った手紙に「一緒にバレエを観てくれてありがとう。最高のクリスマスプレゼントだったよ、サンタさん」と綴ったことへのお返事だと確信していた。
ピンク色の唇の隙間から白い息が沢山出た。
勘違いだったのか。もう諦めるのが賢明だろう。
小さくため息をついて、門にくるりと背を向けた。
「ロゼ」と後ろから呼ばれ、ハッと振り返る。
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