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一学期
ある日の罰ゲーム前夜
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遥は罰ゲームで2人の命令に従うことになってしまった。これは仁と順視点からすれば自分から言い出したゲームに負けてしまったように見えるのだが……実際は違う。確かに最終的にやることを選んだのは遥だが、提案してきたのはドドである。
「おまえのせいでおまえのせいでー!」
「いたい、いたいですよ、遥様」
学校から帰って来た遥はドドに八つ当たりをするように頬を引っ張って伸ばしていた。頬を引っ張って伸ばしているというのに発音がいつもと変わらないのにやや恐怖を覚えながら遥は手を離す。
「あいつら何言ってくると思うよ……」
「え、キスとかですかね?」
ドドのあまりにストレートすぎる言い方に遥ははっきりと2人からキスされるシーンを妄想してしまう。悔しいことに2人より身長が低い遥は背伸びをしてキスをする……そこまで鮮明に妄想できてしまう自分が嫌いになりそうになる遥。
「んなわけあるかっっっっ!」
「ボクとしてはそこまでたったと進んでもらった方がいいんですけどね……でも、お金とか特に使わせるような命令がだめっていうなら、お家デートかキスかそれ以上が無難になると思いますけど」
「それ以上って」
「それ以上はそれ以上ですよ。例えば――」
「いわなくていい!」
具体的な名称を聞いてしまうとまた妄想してしまいそうになるのでドドを必死で止める。2人の性格的にたぶん、そんな、キスすら要求してくることはないとはわかっている。わかっているのだが……同性だからできる悪乗りというのもあるかもしれない。
「……遥様、ひとつ確認するんですが……今、仁様や順様と一緒にお風呂に入れますか? 一緒に銭湯? 温泉? どこでもいいですけどいけます?」
「そりゃ……」
遥は口を開いて止まる。止まってしまう。別に2人に何をされたわけでもないのだが、肌を晒せるかと言われると……なんだか微妙である。それでも数年前は一緒に銭湯に行ったりすることもあったので普通にできていたはずである。
遥の反応にドドが嬉しそうな表情になる。
「ほほーん。なるほどなるほど……一緒にお風呂に行こうと言われたら覚悟を決めないとですね!」
「か、金は使わせないっていう縛りだからそういうのはないだろう」
「……無料券を配ってもいいんですよ!」
「マジで勘弁してください」
遥は自身の変化に打ちのめされながらベッドに転がる。ドドは相変わらず笑顔のままうっきうきで口を開く。
「にしても愛の力とはすばらしいですね。好きな子にいうことをきかせるためだけに人間はここまで必死になれるとは……」
「くっそぉ。こんなことになるなら本当に俺もしっかり勉強しておくべきだったっ!」
頭を抱えるとほぼ同時に2人からメッセージが送られて来た。遥は戦々恐々としながらゆっくりとメッセージを開く。
『起きてるか? 罰ゲームのことなんだが、次の休み服を買うのに付き合ってほしい。服を買ってほしいというわけではなく、センスや知恵を貸してほしいという感じだな。色々見て回りたいから場所はショッピングモールだが、大丈夫か?』
最初に開いたのは仁のメッセージである。罰ゲームの内容は服を選ぶ……その内容に遥はほっと胸をなでおろすのと同時にドドは少しだけつまらなさそうな表情になる。
「まぁ、これはこれで2人きりのデートって感じなんでしょうね」
「そんなわけないだろ……」
遥もお洒落に強いわけではないが、その日にになったら仁に一番似合う服を見繕ってやろうと心に決めた。
『助けてくれ……リビングを占拠しすぎて姉貴が死ぬほど怒ってる。命令権使うからどうにかしてくれ』
次に開いた順のメッセージはなんだかただ事ではなかった。遥も軽めに血の気が引く。これが罰ゲームの内容だとしたら感が売る限り最悪の罰ゲームである。とりあえず、仁にいったん、順の罰ゲームを優先することを伝える。
「ドド……骨は拾ってくれ」
「な、なにごとですか」
何もしていないのにこの一瞬でげっそりとした遥はそのまま寝てしまった。
「おまえのせいでおまえのせいでー!」
「いたい、いたいですよ、遥様」
学校から帰って来た遥はドドに八つ当たりをするように頬を引っ張って伸ばしていた。頬を引っ張って伸ばしているというのに発音がいつもと変わらないのにやや恐怖を覚えながら遥は手を離す。
「あいつら何言ってくると思うよ……」
「え、キスとかですかね?」
ドドのあまりにストレートすぎる言い方に遥ははっきりと2人からキスされるシーンを妄想してしまう。悔しいことに2人より身長が低い遥は背伸びをしてキスをする……そこまで鮮明に妄想できてしまう自分が嫌いになりそうになる遥。
「んなわけあるかっっっっ!」
「ボクとしてはそこまでたったと進んでもらった方がいいんですけどね……でも、お金とか特に使わせるような命令がだめっていうなら、お家デートかキスかそれ以上が無難になると思いますけど」
「それ以上って」
「それ以上はそれ以上ですよ。例えば――」
「いわなくていい!」
具体的な名称を聞いてしまうとまた妄想してしまいそうになるのでドドを必死で止める。2人の性格的にたぶん、そんな、キスすら要求してくることはないとはわかっている。わかっているのだが……同性だからできる悪乗りというのもあるかもしれない。
「……遥様、ひとつ確認するんですが……今、仁様や順様と一緒にお風呂に入れますか? 一緒に銭湯? 温泉? どこでもいいですけどいけます?」
「そりゃ……」
遥は口を開いて止まる。止まってしまう。別に2人に何をされたわけでもないのだが、肌を晒せるかと言われると……なんだか微妙である。それでも数年前は一緒に銭湯に行ったりすることもあったので普通にできていたはずである。
遥の反応にドドが嬉しそうな表情になる。
「ほほーん。なるほどなるほど……一緒にお風呂に行こうと言われたら覚悟を決めないとですね!」
「か、金は使わせないっていう縛りだからそういうのはないだろう」
「……無料券を配ってもいいんですよ!」
「マジで勘弁してください」
遥は自身の変化に打ちのめされながらベッドに転がる。ドドは相変わらず笑顔のままうっきうきで口を開く。
「にしても愛の力とはすばらしいですね。好きな子にいうことをきかせるためだけに人間はここまで必死になれるとは……」
「くっそぉ。こんなことになるなら本当に俺もしっかり勉強しておくべきだったっ!」
頭を抱えるとほぼ同時に2人からメッセージが送られて来た。遥は戦々恐々としながらゆっくりとメッセージを開く。
『起きてるか? 罰ゲームのことなんだが、次の休み服を買うのに付き合ってほしい。服を買ってほしいというわけではなく、センスや知恵を貸してほしいという感じだな。色々見て回りたいから場所はショッピングモールだが、大丈夫か?』
最初に開いたのは仁のメッセージである。罰ゲームの内容は服を選ぶ……その内容に遥はほっと胸をなでおろすのと同時にドドは少しだけつまらなさそうな表情になる。
「まぁ、これはこれで2人きりのデートって感じなんでしょうね」
「そんなわけないだろ……」
遥もお洒落に強いわけではないが、その日にになったら仁に一番似合う服を見繕ってやろうと心に決めた。
『助けてくれ……リビングを占拠しすぎて姉貴が死ぬほど怒ってる。命令権使うからどうにかしてくれ』
次に開いた順のメッセージはなんだかただ事ではなかった。遥も軽めに血の気が引く。これが罰ゲームの内容だとしたら感が売る限り最悪の罰ゲームである。とりあえず、仁にいったん、順の罰ゲームを優先することを伝える。
「ドド……骨は拾ってくれ」
「な、なにごとですか」
何もしていないのにこの一瞬でげっそりとした遥はそのまま寝てしまった。
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