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Ⅰ
ようやく晩御飯 2
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「ど、どうぞ」と緊張した声を出してしまった。先ほどベイリーに屋敷の案内をしてもらった時には、少し冷たい態度を取られてしまったから、正直なところ印象はあんまり良くない。
綺麗に背筋を伸ばしたソフィアが入ってきた。ラインの上を歩いているみたいに、真っ直ぐ歩いてこちらにやってくる。
「別にぶん殴るって言ったのはソフィアに言ったわけじゃねえからな!」
「何のお話ですか?」
「ぶん殴るなんてはしたない言葉を使ったから注意しに来たんだろ?」
リオナの言葉を聞いて、ソフィアがため息をついた。
「違いますよ。普段から誰かに見られていると思ってメイドは動かなければなりませんから、どこにいても言葉遣いには気を付けては頂きたいです。ですが、別に私の存じ上げないところで何を話そうが勝手です。いちいちリオナさんの言動を注意していたらそれだけで私の仕事時間が終わってしまいますし」
「……なんだよ。ビビらせるなよな」
「とはいえ、今あなたが端はしたない言葉遣いをしていたことを知ってしまいましたので、一応注意はしておきましょうか。リオナさん、ぶん殴るなんて言葉遣いをするのはやめてください。わたしたちが下品な言葉遣いをすることで、アリシアお嬢様にご迷惑がかかってしまうのですから」
「結局注意されるのかよ……」とリオナは小声で言ったのだった。
「まあ、リオナさんの言葉遣いのことはさておき、もうすぐご飯なので、ダイニングにいらっしゃってくださいね。食事の時間は決まっていますから、遅れないように気をつけてください。とくにカロリーナさんは初めてだと思いますので」
「ご飯!」
「行こ!」
キャンディとメロディがわたしの腕を引っ張って立ち上がらせた。
「カロリーナ、お腹ペコペコでしょ?」
「ペコペコカロリーナ!」
「まあ、お腹空いてるけど……」
とりあえず、2人に声をかけられて立ち上がり、部屋の入り口の方に向かっていると、突然ガタンッと大きな音が屋敷中に響き、メイド屋敷が大きく揺れた。
「伏せてください!」
ソフィアがサッとエプロンのポケットの辺りに手を添えながら、わたしの方に大きな声を出した。激しい揺れに立っていられなくなり、わたしは尻餅をついてしまう。そして、なぜか部屋が斜めに傾いた。揺れはかなり小さくなったけれど、床に角度がついて、部屋全体が大きな滑り台みたいになってしまっていたから、わたしたちは壁の方まで滑っていってしまった。
「な、何が起きてるの!?」
困惑するわたしとは違い、他の4人は、キャンディやメロディでさえも冷静だった。日が昇ることとか、雨が降ることみたいに、ごく当たり前の自然現象みたいな感じで受け入れているようだ。キャンディとメロディに至っては、本当に大きな滑り台を滑るみたいに、両手を上げて、楽しそうに壁の方まで滑り落ちている。だけど、そんなメロディにリオナが大きな声をかけた。
「おい、メロディ、そっちにテーブル行ってる! 危ねえぞ!」
「メロ、逃げて!」
「メロディ上手く動けないよ!」
テーブルが向かってきていたけれど、メロディは上手く身動きが取れずにいた。傾く部屋に抗うのがは、子どもの力では難しいみたいだ。わたしも上手く動けず、メロディの元に向かってあげられそうにない。
「ったく……」
リオナが器用に角度のついた床をメロディの方に大きく方向を変えながら滑っていく。身体能力の高そうなリオナは、なんとかメロディにテーブルがぶつかるよりも先に身を盾にして、テーブルから守った。キャンディの代わりにリオナにテーブルがぶつかる。「痛えな!」とリオナの苛立った声は聞こえたけれど、身体は無事だったみたいだ。
「リオナちゃん、ありがとう!」とメロディが元気にお礼を言う。
少ししてから、もう一度部屋が大きく揺れた後に、傾きも収まった。ソフィアがポケットの中を確認して、ホッとため息をついてから続ける。
「見たところみなさん、無事ですね」
部屋にほとんど物がないおかげで、直すのはそこまで時間がかからなかった。地震が起きたのかと思ったけれど、それにしては随分と不規則な揺れだったことが疑問だった。そもそも、揺れというよりも傾きのほうが強烈だったし。とはいえ、とりあえずみんな無事で良かったと思って部屋の中を見回していると、リオナが天井の方を睨みつけていた。
「バカメイド! キャンディとメロディが怪我したらどうすんだよ!」
「リオナさん、言葉遣いが悪いですよ。先ほど常に上品な言葉遣いを、と注意したばかりですよね?」
ソフィアに睨まれて、リオナは少しおとなしくなった。わたしは、どうしてリオナが天井の方を見て怒ったのかわからずに、首を傾げていた。
綺麗に背筋を伸ばしたソフィアが入ってきた。ラインの上を歩いているみたいに、真っ直ぐ歩いてこちらにやってくる。
「別にぶん殴るって言ったのはソフィアに言ったわけじゃねえからな!」
「何のお話ですか?」
「ぶん殴るなんてはしたない言葉を使ったから注意しに来たんだろ?」
リオナの言葉を聞いて、ソフィアがため息をついた。
「違いますよ。普段から誰かに見られていると思ってメイドは動かなければなりませんから、どこにいても言葉遣いには気を付けては頂きたいです。ですが、別に私の存じ上げないところで何を話そうが勝手です。いちいちリオナさんの言動を注意していたらそれだけで私の仕事時間が終わってしまいますし」
「……なんだよ。ビビらせるなよな」
「とはいえ、今あなたが端はしたない言葉遣いをしていたことを知ってしまいましたので、一応注意はしておきましょうか。リオナさん、ぶん殴るなんて言葉遣いをするのはやめてください。わたしたちが下品な言葉遣いをすることで、アリシアお嬢様にご迷惑がかかってしまうのですから」
「結局注意されるのかよ……」とリオナは小声で言ったのだった。
「まあ、リオナさんの言葉遣いのことはさておき、もうすぐご飯なので、ダイニングにいらっしゃってくださいね。食事の時間は決まっていますから、遅れないように気をつけてください。とくにカロリーナさんは初めてだと思いますので」
「ご飯!」
「行こ!」
キャンディとメロディがわたしの腕を引っ張って立ち上がらせた。
「カロリーナ、お腹ペコペコでしょ?」
「ペコペコカロリーナ!」
「まあ、お腹空いてるけど……」
とりあえず、2人に声をかけられて立ち上がり、部屋の入り口の方に向かっていると、突然ガタンッと大きな音が屋敷中に響き、メイド屋敷が大きく揺れた。
「伏せてください!」
ソフィアがサッとエプロンのポケットの辺りに手を添えながら、わたしの方に大きな声を出した。激しい揺れに立っていられなくなり、わたしは尻餅をついてしまう。そして、なぜか部屋が斜めに傾いた。揺れはかなり小さくなったけれど、床に角度がついて、部屋全体が大きな滑り台みたいになってしまっていたから、わたしたちは壁の方まで滑っていってしまった。
「な、何が起きてるの!?」
困惑するわたしとは違い、他の4人は、キャンディやメロディでさえも冷静だった。日が昇ることとか、雨が降ることみたいに、ごく当たり前の自然現象みたいな感じで受け入れているようだ。キャンディとメロディに至っては、本当に大きな滑り台を滑るみたいに、両手を上げて、楽しそうに壁の方まで滑り落ちている。だけど、そんなメロディにリオナが大きな声をかけた。
「おい、メロディ、そっちにテーブル行ってる! 危ねえぞ!」
「メロ、逃げて!」
「メロディ上手く動けないよ!」
テーブルが向かってきていたけれど、メロディは上手く身動きが取れずにいた。傾く部屋に抗うのがは、子どもの力では難しいみたいだ。わたしも上手く動けず、メロディの元に向かってあげられそうにない。
「ったく……」
リオナが器用に角度のついた床をメロディの方に大きく方向を変えながら滑っていく。身体能力の高そうなリオナは、なんとかメロディにテーブルがぶつかるよりも先に身を盾にして、テーブルから守った。キャンディの代わりにリオナにテーブルがぶつかる。「痛えな!」とリオナの苛立った声は聞こえたけれど、身体は無事だったみたいだ。
「リオナちゃん、ありがとう!」とメロディが元気にお礼を言う。
少ししてから、もう一度部屋が大きく揺れた後に、傾きも収まった。ソフィアがポケットの中を確認して、ホッとため息をついてから続ける。
「見たところみなさん、無事ですね」
部屋にほとんど物がないおかげで、直すのはそこまで時間がかからなかった。地震が起きたのかと思ったけれど、それにしては随分と不規則な揺れだったことが疑問だった。そもそも、揺れというよりも傾きのほうが強烈だったし。とはいえ、とりあえずみんな無事で良かったと思って部屋の中を見回していると、リオナが天井の方を睨みつけていた。
「バカメイド! キャンディとメロディが怪我したらどうすんだよ!」
「リオナさん、言葉遣いが悪いですよ。先ほど常に上品な言葉遣いを、と注意したばかりですよね?」
ソフィアに睨まれて、リオナは少しおとなしくなった。わたしは、どうしてリオナが天井の方を見て怒ったのかわからずに、首を傾げていた。
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