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Ⅰ
ようやく晩御飯 1
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ベイリーの屋敷案内が終わった後、わたしは部屋で待機していた。メイドとしての仕事はしなくても良いのだろうかという不安もあったけれど、状況のよくわからない屋敷の中では今は体力温存に努めた方が良いのかもしれないという考えに至った。突然何が起きるかわからない以上、休めるときには休んでおきたい。
そもそも、まだお粥しか食べていない状態だから体力の上限自体が低いわけだし。そうやって部屋でベッドに腰掛けていると、廊下を賑やかな声が通っていく。アリシアお嬢様のところに行っていたリオナ、キャンディ、メロディの3人が帰ってきたらしい。
「おーい、カロリーナ入るぞ」
「カロリーナ、入るよ!」
「カロリーナ、こんにちは!」
ベイリーとは違い、許可を与える前から勝手に入ってくる。やましいことをしているわけではないし、別にそこまで警戒することはないから良いのだけど。それに、お嬢様がどんな人かも気になっていて、ちょうど3人から話を聞いておきたかった。わたしが仕える相手のことは確認しておきたかった。
「お嬢様のところでどんな仕事をしてきたの?」
ベイリーやソフィアのような気品溢れる、立派なメイドを見た後に見るリオナ、キャンディ、メロディの3人組は随分と親近感が湧く。3人に対しては自然と口調もラフになっていた。
「いっぱいナデナデしてもらった!」
「お菓子もらった!」
「……それって仕事なの?」
だとしたら、それで3食と個室までもらえるなんて、とっても幸せな生活ではないかと胸が昂ってくる。メイドの仕事と聞いて、大変そうだと思っていたけれど、この屋敷の場合そうでもないのかもしれない。そんな質問をするわたしを見て、リオナが小さくため息をついた。
「こいつらは特別だからな? あたしは爪磨きだよ。重労働だ」
「爪磨きって、重労働になるの?」
「ああ、そっか……。お前まだここに来てから、まだずっと屋敷の中にいるもんな……。悪い、今のは忘れてくれ」
「え、まあ良いけど……」
なんだか歯切れの悪いリオナの言葉に首を傾げた。とりあえず爪磨きをするということは、お嬢様の美容関係の面倒を見たりするのだろうか。
「わたし、全然美容とかオシャレみたいな話知らないけど、大丈夫なのかな?」
「ここのやつらはみんな浮世離れしてて、オシャレに詳しそうなやつなんていねえから大丈夫だよ。ていうか、いきなりオシャレかどうかの心配なんてして、どうしたんだよ?」
「だって、美容関係のことさせられてたみたいだから」
「美容じゃねえよ。力仕事なんだよ! まあ、別に良いけどよ」
わたしは首を傾げた。全く何を言っているかわからなかった。
「ところで、お嬢様ってどんな人なの?」
「どんなって言われてもな……」
「可愛い!」
「優しい!」
キャンディとメロディが順番に手を挙げていた。
「まあ、なんかあたしとは住む世界の違う人って感じがするな。体の内側から滲み出るお嬢様感みたいなのがあんだよな」
「ですわ!」
「ですの!」
キャンディとメロディがリオナに続いてお嬢様口調の合いの手を入れる。
「でも、なんか放っておけない感じもして。悩み事抱えてそうだし、エミリアがあたしらのいないとこで意地悪してんじゃねえのかって疑ってんだよ」
「エミリアっていうのは?」
「メイドだよ、メイド」
ベイリーがソフィアの名前を出す時に嫌そうにしていたのと似たようなことを感じる。たぶん、リオナはそのエミリアというメイドのことをかなり苦手にしている。
「メイドってことは、わたしたちと一緒に住んでるんですか?」
「あいつと同居なんてぜってえに嫌だな。それに、あいつがこの家に住めるようなやつなら、あたしは顔合わせるたびにぶん殴ってるな」
「ぶん殴るって、物騒な……」
とりあえず、リオナがエミリアのことをかなり苦手にしていることがわかり、わたしが苦笑していると、また扉がノックされた。
「入ってもよろしいですか?」
丁寧な敬語はソフィアの声だった。わたしは無意識のうちに背筋を正してしまっていた。
そもそも、まだお粥しか食べていない状態だから体力の上限自体が低いわけだし。そうやって部屋でベッドに腰掛けていると、廊下を賑やかな声が通っていく。アリシアお嬢様のところに行っていたリオナ、キャンディ、メロディの3人が帰ってきたらしい。
「おーい、カロリーナ入るぞ」
「カロリーナ、入るよ!」
「カロリーナ、こんにちは!」
ベイリーとは違い、許可を与える前から勝手に入ってくる。やましいことをしているわけではないし、別にそこまで警戒することはないから良いのだけど。それに、お嬢様がどんな人かも気になっていて、ちょうど3人から話を聞いておきたかった。わたしが仕える相手のことは確認しておきたかった。
「お嬢様のところでどんな仕事をしてきたの?」
ベイリーやソフィアのような気品溢れる、立派なメイドを見た後に見るリオナ、キャンディ、メロディの3人組は随分と親近感が湧く。3人に対しては自然と口調もラフになっていた。
「いっぱいナデナデしてもらった!」
「お菓子もらった!」
「……それって仕事なの?」
だとしたら、それで3食と個室までもらえるなんて、とっても幸せな生活ではないかと胸が昂ってくる。メイドの仕事と聞いて、大変そうだと思っていたけれど、この屋敷の場合そうでもないのかもしれない。そんな質問をするわたしを見て、リオナが小さくため息をついた。
「こいつらは特別だからな? あたしは爪磨きだよ。重労働だ」
「爪磨きって、重労働になるの?」
「ああ、そっか……。お前まだここに来てから、まだずっと屋敷の中にいるもんな……。悪い、今のは忘れてくれ」
「え、まあ良いけど……」
なんだか歯切れの悪いリオナの言葉に首を傾げた。とりあえず爪磨きをするということは、お嬢様の美容関係の面倒を見たりするのだろうか。
「わたし、全然美容とかオシャレみたいな話知らないけど、大丈夫なのかな?」
「ここのやつらはみんな浮世離れしてて、オシャレに詳しそうなやつなんていねえから大丈夫だよ。ていうか、いきなりオシャレかどうかの心配なんてして、どうしたんだよ?」
「だって、美容関係のことさせられてたみたいだから」
「美容じゃねえよ。力仕事なんだよ! まあ、別に良いけどよ」
わたしは首を傾げた。全く何を言っているかわからなかった。
「ところで、お嬢様ってどんな人なの?」
「どんなって言われてもな……」
「可愛い!」
「優しい!」
キャンディとメロディが順番に手を挙げていた。
「まあ、なんかあたしとは住む世界の違う人って感じがするな。体の内側から滲み出るお嬢様感みたいなのがあんだよな」
「ですわ!」
「ですの!」
キャンディとメロディがリオナに続いてお嬢様口調の合いの手を入れる。
「でも、なんか放っておけない感じもして。悩み事抱えてそうだし、エミリアがあたしらのいないとこで意地悪してんじゃねえのかって疑ってんだよ」
「エミリアっていうのは?」
「メイドだよ、メイド」
ベイリーがソフィアの名前を出す時に嫌そうにしていたのと似たようなことを感じる。たぶん、リオナはそのエミリアというメイドのことをかなり苦手にしている。
「メイドってことは、わたしたちと一緒に住んでるんですか?」
「あいつと同居なんてぜってえに嫌だな。それに、あいつがこの家に住めるようなやつなら、あたしは顔合わせるたびにぶん殴ってるな」
「ぶん殴るって、物騒な……」
とりあえず、リオナがエミリアのことをかなり苦手にしていることがわかり、わたしが苦笑していると、また扉がノックされた。
「入ってもよろしいですか?」
丁寧な敬語はソフィアの声だった。わたしは無意識のうちに背筋を正してしまっていた。
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