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13話
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結婚して1週間が経った。
「思ったほど辛くはないかも」
毎日食事は出してもらえた。
買い物に行こうと外出を試みたけど、高い塀がわたしの邪魔をして登ることも外に出ることも出来なかった。
だけど侍女のカリンが「必要なものはございませんか」と聞いてくれたので「日用品が欲しいです」と答えたら用意してくれた。
なのでわたしがこっそり隠して持ってきた宝石とお金はクローゼットに隠した。
「ティア様、お食事です」
「ありがとう、いただくわ」
テーブルには温かいスープとパン、サラダ、あとおかずが一品。が定番になっている。
朝と夕方、1日2回の食事が運ばれてくる。
朝から洗濯をする。
カリンに洗濯の仕方、掃除の仕方を教わった。
最初はお風呂も一人で入れなかったけど今は一人でお風呂も入れるしもちろん服も着れる。
「カリン、いつもありがとう。これ気持ちだけなんだけどお礼よ」
「わたしは仕事でここに来ているだけです。もらう訳にはいきません」
「でもハンカチだからたいした物ではないわ」
ここに居ても暇なので持ってきたハンカチに刺繍を刺している。唯一お義姉様より得意なわたしの取り柄。
その一枚をお礼にと手渡そうとした。
「だってこのハンカチもし買ったらとても高級品だと思います。丁寧な刺繍ですもの」
「そうなの?わたしが刺した物だから大したことないわ」
おずおずと手を出してもらってくれた。
「ふふ、ありがとう。ここに来て話し相手もいないしカリンが居なかったらとても辛かったと思うの。いつもありがとう」
わたしがお礼を言うと「おやめください。お礼など言われると恐縮してしまいます」
「どうして?」
「だってわたしは上の者に言われて仕事をしているだけですから」
「フランク様?」
「………違います」
「そう……」
わたしはフランク様にまだお会いしていない。
執事は一度も顔を見せてくれない。カリンが毎回ここに来てくれなければ誰とも会うことはない。
わたしはここにお嫁に来たはず。だけどこの生活は一体どうした事なのだろう。
もっと酷い目に遭うのかもと内心覚悟をしていた。
昼間は刺繍を刺して過ごしているが最近あまりにもすることがないので家を出て散策を始めた。
この屋敷の敷地はとても広い。
本邸には近づかないように言われているのでフランク様はもちろん義両親の侯爵夫婦にもお会いしていない。
「人に会えないって本当に辛いものなのね」
最近は独り言が増えた。
カリンとしか話さない。もっとカリンとお話をしたいけど彼女にも仕事があるから引き留めている訳にもいかず一人の時間がほとんど。
今日はいつもと反対の道を歩いて回った。
すると綺麗なお庭に。
「本邸に近いところね。誰かに見られたら怒られてしまうかも」
辺りをキョロキョロ見回したけど誰もいなさそう。
久しぶりの綺麗なお花たちにうっとりとしながら思わず歌を口ずさんでしまった。
「誰だ?」
男の人が怒ってわたしに問いかけた。
「ごめんなさい。わたし、あの、あまりにも綺麗だからお花を見ていました。でもお花に触ってはいないし悪いことはしていないわ」
目の前に現れたのはお年を召したお爺さんだった。
「あんたは……ああ、あの家から逃げ出したのか?」
「逃げ出す?違うわ、あんまり暇だったからお散歩していたのです。そしたらここに着いてしまったの。お花が綺麗だったからお花を愛でていました、とても綺麗で幸せな気分になれました」
笑顔でお爺さんに話しかけると、少し呆れた顔をして
「あの家で過ごしてそんなに痩せて……なのにどうして笑っていられるんだ?」
「だってお花を見られてとても幸せなのですもの」
素直にそう言うと「……そんな…はずは…」小さな声でぶつぶつと呟いていた。
「お邪魔してごめんなさい。お家に帰ります」
「お待ちください、貴方は今どのような気持ちなのですか?」
「気持ち?………あ、ここに来てからのこと?」
わたしは考えた。知らない人に実家のことを話すことはできない。
「毎日美味しいお食事をいただけるし、最近はお掃除とお洗濯も覚えたし、とても楽しいわ。強いて言うならあと本を読めたらいいなと思っています」
「楽しい?……本…読めるように頼んでみますよ?」
「え?嬉しいけど、お爺さん?が怒られたりしませんか?この屋敷の当主のお方は……フランク様のご両親?なのかしら?その方達に何か言われたら可哀想だもの。わたしはこっそりお花を見にくるだけで幸せです、それにカリン以外でお話しすることができたので嬉しいの。人とお話しするのってとても幸せなことなんですね」
お爺さんは少し困った顔をして「この庭ならわたし以外誰も近寄らないのでいつでも見に来てください」と言ってくれた。
「思ったほど辛くはないかも」
毎日食事は出してもらえた。
買い物に行こうと外出を試みたけど、高い塀がわたしの邪魔をして登ることも外に出ることも出来なかった。
だけど侍女のカリンが「必要なものはございませんか」と聞いてくれたので「日用品が欲しいです」と答えたら用意してくれた。
なのでわたしがこっそり隠して持ってきた宝石とお金はクローゼットに隠した。
「ティア様、お食事です」
「ありがとう、いただくわ」
テーブルには温かいスープとパン、サラダ、あとおかずが一品。が定番になっている。
朝と夕方、1日2回の食事が運ばれてくる。
朝から洗濯をする。
カリンに洗濯の仕方、掃除の仕方を教わった。
最初はお風呂も一人で入れなかったけど今は一人でお風呂も入れるしもちろん服も着れる。
「カリン、いつもありがとう。これ気持ちだけなんだけどお礼よ」
「わたしは仕事でここに来ているだけです。もらう訳にはいきません」
「でもハンカチだからたいした物ではないわ」
ここに居ても暇なので持ってきたハンカチに刺繍を刺している。唯一お義姉様より得意なわたしの取り柄。
その一枚をお礼にと手渡そうとした。
「だってこのハンカチもし買ったらとても高級品だと思います。丁寧な刺繍ですもの」
「そうなの?わたしが刺した物だから大したことないわ」
おずおずと手を出してもらってくれた。
「ふふ、ありがとう。ここに来て話し相手もいないしカリンが居なかったらとても辛かったと思うの。いつもありがとう」
わたしがお礼を言うと「おやめください。お礼など言われると恐縮してしまいます」
「どうして?」
「だってわたしは上の者に言われて仕事をしているだけですから」
「フランク様?」
「………違います」
「そう……」
わたしはフランク様にまだお会いしていない。
執事は一度も顔を見せてくれない。カリンが毎回ここに来てくれなければ誰とも会うことはない。
わたしはここにお嫁に来たはず。だけどこの生活は一体どうした事なのだろう。
もっと酷い目に遭うのかもと内心覚悟をしていた。
昼間は刺繍を刺して過ごしているが最近あまりにもすることがないので家を出て散策を始めた。
この屋敷の敷地はとても広い。
本邸には近づかないように言われているのでフランク様はもちろん義両親の侯爵夫婦にもお会いしていない。
「人に会えないって本当に辛いものなのね」
最近は独り言が増えた。
カリンとしか話さない。もっとカリンとお話をしたいけど彼女にも仕事があるから引き留めている訳にもいかず一人の時間がほとんど。
今日はいつもと反対の道を歩いて回った。
すると綺麗なお庭に。
「本邸に近いところね。誰かに見られたら怒られてしまうかも」
辺りをキョロキョロ見回したけど誰もいなさそう。
久しぶりの綺麗なお花たちにうっとりとしながら思わず歌を口ずさんでしまった。
「誰だ?」
男の人が怒ってわたしに問いかけた。
「ごめんなさい。わたし、あの、あまりにも綺麗だからお花を見ていました。でもお花に触ってはいないし悪いことはしていないわ」
目の前に現れたのはお年を召したお爺さんだった。
「あんたは……ああ、あの家から逃げ出したのか?」
「逃げ出す?違うわ、あんまり暇だったからお散歩していたのです。そしたらここに着いてしまったの。お花が綺麗だったからお花を愛でていました、とても綺麗で幸せな気分になれました」
笑顔でお爺さんに話しかけると、少し呆れた顔をして
「あの家で過ごしてそんなに痩せて……なのにどうして笑っていられるんだ?」
「だってお花を見られてとても幸せなのですもの」
素直にそう言うと「……そんな…はずは…」小さな声でぶつぶつと呟いていた。
「お邪魔してごめんなさい。お家に帰ります」
「お待ちください、貴方は今どのような気持ちなのですか?」
「気持ち?………あ、ここに来てからのこと?」
わたしは考えた。知らない人に実家のことを話すことはできない。
「毎日美味しいお食事をいただけるし、最近はお掃除とお洗濯も覚えたし、とても楽しいわ。強いて言うならあと本を読めたらいいなと思っています」
「楽しい?……本…読めるように頼んでみますよ?」
「え?嬉しいけど、お爺さん?が怒られたりしませんか?この屋敷の当主のお方は……フランク様のご両親?なのかしら?その方達に何か言われたら可哀想だもの。わたしはこっそりお花を見にくるだけで幸せです、それにカリン以外でお話しすることができたので嬉しいの。人とお話しするのってとても幸せなことなんですね」
お爺さんは少し困った顔をして「この庭ならわたし以外誰も近寄らないのでいつでも見に来てください」と言ってくれた。
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