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12話
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「わたしはここで暮らすのですか?」
恐々と執事に聞くと「はい」としか答えなかった。
「フランク様は?」
せめてフランク様にお会いしたい。
どうしてわたしをここに住まわせるのか。
どうしてわたしと結婚したのか。
わたしが我儘で傲慢、お義姉様を虐げてきた。そしてフランク様とお義姉様の婚約を壊してしまったから、わたしは嫌われているのだろう。
でもそれなら何尚更フランク様はわたしとの結婚を了承したの?
わたしなんかと結婚しなければよかったのに。
会えばいつも微笑んで優しく話しかけてくれた。わたしがお義姉様のことを聞きたがっても嫌なお顔をすることなく話してくれた。
お二人の仲を壊してしまったわたしに二人は罰を与えたかったのかしら?
「お食事はこちらにお持ちいたします。その時に何かご用がありましたらお申し付けください」
「………分かったわ、一度フランク様にお会いしたいと伝えておいてください」
わたしがそう言うと眉を顰め「わかりました」とだけ言って去って行った。
「ふー」部屋を見回して大きな溜息しか出なかった。
今までの生活よりも酷いものになるのかしら?
食事すら与えてもらえないかも。
小さな鞄には着替えと大切なお針箱、数冊のお気に入りの本しか入っていない。
とりあえずその荷物を出して、クローゼットを開けてしまうことにした。
クローゼットにはワンピースが数枚。
これは……わたしが自分で着替えられるように用意してくれているのかしら?
新しいワンピースを体に合わせてみた。
「ちょうど良さそう」
周りをキョロキョロと見回してからドレスを脱ぎ捨ててワンピースに着替えた。
大きな黄色い花柄の白いワンピース、鏡に映してみる。
「可愛い」頬がこけて痩せ細ったわたしだけど、ドレスなんかより今のわたしにはワンピースの方が似合っている。
少し嬉しくなって鏡の前で微笑んだ。
こんなことになっても、可愛い服を着て喜ぶわたしを見たらお義姉様はまたお怒りになるだろうな。
そう思うと嬉しかった気持ちも消えてしまい、小さな家の中を見て回った。
すると部屋の物置に掃除道具があるのに気がついた。
よく使用人が箒を持って掃除をしていたのを思い出してわたしも箒を持つと床を掃いてみた。
「ゴホッ」掃けば掃くほど、埃が舞い、綺麗になるどころか、咳き込み苦しい。
「はあー、お掃除の仕方もわからないわ」
仕方なく外へ出て、周りを見回した。
ここは「離れ」と言うよりベイツド侯爵家の屋敷の外れにある小屋だなと思った。
周りは草だらけだし、木がいっぱいだし、少し歩くと大きな塀がある。
「外には出られそうもないわ。どこか外へ出る扉はないのかしら?」
とりあえずお買い物がしたかった。
石鹸も化粧水も何もない。
このままでは必要最低限の生活すら出来ない。
お金は持っている。
ドレスの下に宝石と金貨を隠し持ってきた。
小さな鞄の底にも隠して持ってきた。
お父様がたくさんの宝石を買ってくれた。どこかお買い物に行くと言えばいつもたくさんのお小遣いをくれた。
だからたぶん当分の間はお金には困らないと思う。
だけど、ここにいればお金を持っていても何も手に入らない。
せめて日用品くらいは買い揃えたい。
「塀を乗り越えるって大変かしら?」
そう思って塀の隙間に手を入れて登ろうとした。
片手に体重がかかったら「いたっ!」ズルっと滑って尻もちをついた。
元々体力を使うようなことなんてしたこともないし、塀を登るなんて無理な話だった。
「……どうしよう、お買い物にもいけないわ」
せっかく着替えたワンピースは、転んで汚れてしまうし、お尻は痛いし、そのまま座り込んだまま動くのも嫌になって涙が出てきた。
「お父様……体調はどうだろう。お母様もお一人で辛い思いをされているのよね……わたしだけ泣いている訳にはいかないわよね…….」
………でも今だけ…泣いてもいいかな。
恐々と執事に聞くと「はい」としか答えなかった。
「フランク様は?」
せめてフランク様にお会いしたい。
どうしてわたしをここに住まわせるのか。
どうしてわたしと結婚したのか。
わたしが我儘で傲慢、お義姉様を虐げてきた。そしてフランク様とお義姉様の婚約を壊してしまったから、わたしは嫌われているのだろう。
でもそれなら何尚更フランク様はわたしとの結婚を了承したの?
わたしなんかと結婚しなければよかったのに。
会えばいつも微笑んで優しく話しかけてくれた。わたしがお義姉様のことを聞きたがっても嫌なお顔をすることなく話してくれた。
お二人の仲を壊してしまったわたしに二人は罰を与えたかったのかしら?
「お食事はこちらにお持ちいたします。その時に何かご用がありましたらお申し付けください」
「………分かったわ、一度フランク様にお会いしたいと伝えておいてください」
わたしがそう言うと眉を顰め「わかりました」とだけ言って去って行った。
「ふー」部屋を見回して大きな溜息しか出なかった。
今までの生活よりも酷いものになるのかしら?
食事すら与えてもらえないかも。
小さな鞄には着替えと大切なお針箱、数冊のお気に入りの本しか入っていない。
とりあえずその荷物を出して、クローゼットを開けてしまうことにした。
クローゼットにはワンピースが数枚。
これは……わたしが自分で着替えられるように用意してくれているのかしら?
新しいワンピースを体に合わせてみた。
「ちょうど良さそう」
周りをキョロキョロと見回してからドレスを脱ぎ捨ててワンピースに着替えた。
大きな黄色い花柄の白いワンピース、鏡に映してみる。
「可愛い」頬がこけて痩せ細ったわたしだけど、ドレスなんかより今のわたしにはワンピースの方が似合っている。
少し嬉しくなって鏡の前で微笑んだ。
こんなことになっても、可愛い服を着て喜ぶわたしを見たらお義姉様はまたお怒りになるだろうな。
そう思うと嬉しかった気持ちも消えてしまい、小さな家の中を見て回った。
すると部屋の物置に掃除道具があるのに気がついた。
よく使用人が箒を持って掃除をしていたのを思い出してわたしも箒を持つと床を掃いてみた。
「ゴホッ」掃けば掃くほど、埃が舞い、綺麗になるどころか、咳き込み苦しい。
「はあー、お掃除の仕方もわからないわ」
仕方なく外へ出て、周りを見回した。
ここは「離れ」と言うよりベイツド侯爵家の屋敷の外れにある小屋だなと思った。
周りは草だらけだし、木がいっぱいだし、少し歩くと大きな塀がある。
「外には出られそうもないわ。どこか外へ出る扉はないのかしら?」
とりあえずお買い物がしたかった。
石鹸も化粧水も何もない。
このままでは必要最低限の生活すら出来ない。
お金は持っている。
ドレスの下に宝石と金貨を隠し持ってきた。
小さな鞄の底にも隠して持ってきた。
お父様がたくさんの宝石を買ってくれた。どこかお買い物に行くと言えばいつもたくさんのお小遣いをくれた。
だからたぶん当分の間はお金には困らないと思う。
だけど、ここにいればお金を持っていても何も手に入らない。
せめて日用品くらいは買い揃えたい。
「塀を乗り越えるって大変かしら?」
そう思って塀の隙間に手を入れて登ろうとした。
片手に体重がかかったら「いたっ!」ズルっと滑って尻もちをついた。
元々体力を使うようなことなんてしたこともないし、塀を登るなんて無理な話だった。
「……どうしよう、お買い物にもいけないわ」
せっかく着替えたワンピースは、転んで汚れてしまうし、お尻は痛いし、そのまま座り込んだまま動くのも嫌になって涙が出てきた。
「お父様……体調はどうだろう。お母様もお一人で辛い思いをされているのよね……わたしだけ泣いている訳にはいかないわよね…….」
………でも今だけ…泣いてもいいかな。
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