15 / 35
14話
しおりを挟む
フランク様に嫁いで半年が過ぎた。
なのに彼に会うことはなかった。
だけどカリンとはいつの間にか仲良くなっていた。
わたしが刺した刺繍を町に売りに行ってお金に変えてくれる。そのお金で最近は服を買ったり自分が欲しい本を買ったりできるようになった。
「ティア様、この本は今市井で流行っている本なんですよ?悪役令嬢が断罪される……あっ……」
「大丈夫よ?わたしも巷でそう言う噂が流れているのはここにお嫁に来る前に教えられて知っているの」
「………すみません、でも、本当はそんな人ではないのに」
「ううん、そんな人だったの。わたしは何も知らなくて、何も知ろうとしなかったの。目の前にある現実すらちゃんと見ていなくて……お義姉様がどれだけ苦しんでいたかなんて全く知らなかったの」
思い出すだけで胸が痛む。
あまりにも浅はかだった自分の行動に。
「今は幸せよ。ここは穏やかで好きなことができるもの。フランク様にも感謝しているわ」
「……そうです……か」フランク様のことになるとカリンは黙ってしまう。
わたし自身もお会い出来ずにいるので、この先どうすべきなのかわからない。
カリンは何かを知っているようだけど聞くことは憚られた。彼女にも言えない理由があるのだろう。
「今日はこれからお庭に行く予定なの」
庭でいつも会うお爺さんのことは内緒にしている。
お爺さんが「ここで会っていることは誰にも言わないで欲しい」と頼まれたし、わたしもカリンに言ってカリンが困ることになってはいけないので話さないことに決めた。
たぶん、お爺さんには何か秘密があるのだろう。
詮索するつもりもない。わたしはお庭に行きお花を見て楽しんで過ごす。
最近はラベンダーや薔薇、ハーブなどを乾燥させてポプリを作っている。匂いの素のオイルはカリンが買ってきてくれる。
そしてポプリを入れるレースの袋を編んで売りに行く。それが人気が出て高額で売れるようになった。
いつもその売り上げの半分をお爺さんにお礼として渡している。
「お爺さん、今日の売り上げです。いつも綺麗なお花をありがとうございます」
「わしはお金はいらんと言っているだろう」
「大切に育てたお花をいただいているのですからお金はもらってください」
「ティア嬢、生活に困っているんだろう?」
わたしが仕事をしていることを気にしてくれている。
「わたしは住む家もあるし食事もきちんと頂いています。でもこのままずっとこのお屋敷でお世話になるわけにはいきません。もし……フランク様にお会い出来たらこの先のことを(離縁を)話したいのです、ですから先のことを考えて少しでも働いて生活できるようになっておきたいのです」
今のお父様の状態はわからない、お母様も領地へ行ったきりなのだろう。二人を引き取って……出来れば一緒に暮らしたい。
だからわたしなりに今出来ることをするしかない。
そう思って頑張っている。たぶんそんな希望があるから今を生き抜いていけるのだろう。
たまにお爺さんにお会いすると、二人で世間話をして別れる。
わたしの体を心配してくださる。
「食事は摂れているのか」「何を食べたのか」
「一日何をして過ごしているのか」「体調はどうか」
なんだか家族に心配されているみたいでお爺さんにお会いするとホッとして癒される。
「そろそろ動きがあるかもしれない。ティア嬢、いつかこの生活から抜け出せるからもう少し我慢するんじゃ」
「……お爺さん、わたしは今の生活でも十分幸せなんです」
「力がなくてすまない」
寂しそうにわたしに言った。
お爺さんは「またな」と言ってどこかへ帰って行く。
なのに彼に会うことはなかった。
だけどカリンとはいつの間にか仲良くなっていた。
わたしが刺した刺繍を町に売りに行ってお金に変えてくれる。そのお金で最近は服を買ったり自分が欲しい本を買ったりできるようになった。
「ティア様、この本は今市井で流行っている本なんですよ?悪役令嬢が断罪される……あっ……」
「大丈夫よ?わたしも巷でそう言う噂が流れているのはここにお嫁に来る前に教えられて知っているの」
「………すみません、でも、本当はそんな人ではないのに」
「ううん、そんな人だったの。わたしは何も知らなくて、何も知ろうとしなかったの。目の前にある現実すらちゃんと見ていなくて……お義姉様がどれだけ苦しんでいたかなんて全く知らなかったの」
思い出すだけで胸が痛む。
あまりにも浅はかだった自分の行動に。
「今は幸せよ。ここは穏やかで好きなことができるもの。フランク様にも感謝しているわ」
「……そうです……か」フランク様のことになるとカリンは黙ってしまう。
わたし自身もお会い出来ずにいるので、この先どうすべきなのかわからない。
カリンは何かを知っているようだけど聞くことは憚られた。彼女にも言えない理由があるのだろう。
「今日はこれからお庭に行く予定なの」
庭でいつも会うお爺さんのことは内緒にしている。
お爺さんが「ここで会っていることは誰にも言わないで欲しい」と頼まれたし、わたしもカリンに言ってカリンが困ることになってはいけないので話さないことに決めた。
たぶん、お爺さんには何か秘密があるのだろう。
詮索するつもりもない。わたしはお庭に行きお花を見て楽しんで過ごす。
最近はラベンダーや薔薇、ハーブなどを乾燥させてポプリを作っている。匂いの素のオイルはカリンが買ってきてくれる。
そしてポプリを入れるレースの袋を編んで売りに行く。それが人気が出て高額で売れるようになった。
いつもその売り上げの半分をお爺さんにお礼として渡している。
「お爺さん、今日の売り上げです。いつも綺麗なお花をありがとうございます」
「わしはお金はいらんと言っているだろう」
「大切に育てたお花をいただいているのですからお金はもらってください」
「ティア嬢、生活に困っているんだろう?」
わたしが仕事をしていることを気にしてくれている。
「わたしは住む家もあるし食事もきちんと頂いています。でもこのままずっとこのお屋敷でお世話になるわけにはいきません。もし……フランク様にお会い出来たらこの先のことを(離縁を)話したいのです、ですから先のことを考えて少しでも働いて生活できるようになっておきたいのです」
今のお父様の状態はわからない、お母様も領地へ行ったきりなのだろう。二人を引き取って……出来れば一緒に暮らしたい。
だからわたしなりに今出来ることをするしかない。
そう思って頑張っている。たぶんそんな希望があるから今を生き抜いていけるのだろう。
たまにお爺さんにお会いすると、二人で世間話をして別れる。
わたしの体を心配してくださる。
「食事は摂れているのか」「何を食べたのか」
「一日何をして過ごしているのか」「体調はどうか」
なんだか家族に心配されているみたいでお爺さんにお会いするとホッとして癒される。
「そろそろ動きがあるかもしれない。ティア嬢、いつかこの生活から抜け出せるからもう少し我慢するんじゃ」
「……お爺さん、わたしは今の生活でも十分幸せなんです」
「力がなくてすまない」
寂しそうにわたしに言った。
お爺さんは「またな」と言ってどこかへ帰って行く。
34
お気に入りに追加
1,082
あなたにおすすめの小説
その眼差しは凍てつく刃*冷たい婚約者にウンザリしてます*
音爽(ネソウ)
恋愛
義妹に優しく、婚約者の令嬢には極寒対応。
塩対応より下があるなんて……。
この婚約は間違っている?
*2021年7月完結
【完結】何故こうなったのでしょう? きれいな姉を押しのけブスな私が王子様の婚約者!!!
りまり
恋愛
きれいなお姉さまが最優先される実家で、ひっそりと別宅で生活していた。
食事も自分で用意しなければならないぐらい私は差別されていたのだ。
だから毎日アルバイトしてお金を稼いだ。
食べるものや着る物を買うために……パン屋さんで働かせてもらった。
パン屋さんは家の事情を知っていて、毎日余ったパンをくれたのでそれは感謝している。
そんな時お姉さまはこの国の第一王子さまに恋をしてしまった。
王子さまに自分を売り込むために、私は王子付きの侍女にされてしまったのだ。
そんなの自分でしろ!!!!!
職業『お飾りの妻』は自由に過ごしたい
LinK.
恋愛
勝手に決められた婚約者との初めての顔合わせ。
相手に契約だと言われ、もう後がないサマンサは愛のない形だけの契約結婚に同意した。
何事にも従順に従って生きてきたサマンサ。
相手の求める通りに動く彼女は、都合のいいお飾りの妻だった。
契約中は立派な妻を演じましょう。必要ない時は自由に過ごしても良いですよね?
白い結婚は無理でした(涙)
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。
明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。
白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。
小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。
どうぞよろしくお願いいたします。
溺愛されている妹がお父様の子ではないと密告したら立場が逆転しました。ただお父様の溺愛なんて私には必要ありません。
木山楽斗
恋愛
伯爵令嬢であるレフティアの日常は、父親の再婚によって大きく変わることになった。
妾だった継母やその娘である妹は、レフティアのことを疎んでおり、父親はそんな二人を贔屓していた。故にレフティアは、苦しい生活を送ることになったのである。
しかし彼女は、ある時とある事実を知ることになった。
父親が溺愛している妹が、彼と血が繋がっていなかったのである。
レフティアは、その事実を父親に密告した。すると調査が行われて、それが事実であることが判明したのである。
その結果、父親は継母と妹を排斥して、レフティアに愛情を注ぐようになった。
だが、レフティアにとってそんなものは必要なかった。継母や妹ともに自分を虐げていた父親も、彼女にとっては排除するべき対象だったのである。
どうして私にこだわるんですか!?
風見ゆうみ
恋愛
「手柄をたてて君に似合う男になって帰ってくる」そう言って旅立って行った婚約者は三年後、伯爵の爵位をいただくのですが、それと同時に旅先で出会った令嬢との結婚が決まったそうです。
それを知った伯爵令嬢である私、リノア・ブルーミングは悲しい気持ちなんて全くわいてきませんでした。だって、そんな事になるだろうなってわかってましたから!
婚約破棄されて捨てられたという噂が広まり、もう結婚は無理かな、と諦めていたら、なんと辺境伯から結婚の申し出が! その方は冷酷、無口で有名な方。おっとりした私なんて、すぐに捨てられてしまう、そう思ったので、うまーくお断りして田舎でゆっくり過ごそうと思ったら、なぜか結婚のお断りを断られてしまう。
え!? そんな事ってあるんですか? しかもなぜか、元婚約者とその彼女が田舎に引っ越した私を追いかけてきて!?
おっとりマイペースなヒロインとヒロインに恋をしている辺境伯とのラブコメです。ざまぁは後半です。
※独自の世界観ですので、設定はゆるめ、ご都合主義です。
痛みは教えてくれない
河原巽
恋愛
王立警護団に勤めるエレノアは四ヶ月前に異動してきたマグラに冷たく当たられている。顔を合わせれば舌打ちされたり、「邪魔」だと罵られたり。嫌われていることを自覚しているが、好きな職場での仲間とは仲良くしたかった。そんなある日の出来事。
マグラ視点の「触れても伝わらない」というお話も公開中です。
別サイトにも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる