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よんじゅうに。
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兄様はわたしが家出をすると思っているのだろうか。
屋敷に帰らずこの家の方へと帰ってくる。
わたしが屋敷に帰りたがらないのもある。あの屋敷に帰るとどうしても公爵夫婦にされたことを思い出すので嫌な気持ちになる。
「カレン、学校でのセルジオの話は聞いた。で、どうするつもりなんだ?」
「どうするって……婚約は解消するつもり……ヒュートに手紙を書いているの。受け入れてもらえるならオリソン国へ行って働くつもりよ」
「まともに働いたことがないカレンが働けるわけがないだろう?」
「わたしは……あの二人から逃れたくて必死で勉強をしてきたの。あの屋敷を出て文官になって地方で働こうと思ってた……前世を思い出して……今はこの国にいてはいけないと思ったの。わたしのせいで嫌な思いをした人たちがいるのならわたしがこの国で暮らしていくのは無理があると思うの………」
「前世の記憶は前世だろう?今はカレンなんだ!関係ない」
「うん、わたしもそう思ってる。わたしはカレンとして生を受けてカレンとして生きているの。だけどこの国ではカレンとして生きるには生き辛いの」
素直にそう言うと、兄様は口を噤んだ。
「………ずっと辛い思いをしてきたのはカレンなんだ……ごめん、俺が幸せにしてやりたいと思ったのに……妹にこんなに辛い思いをさせてしまって……」
「ううん、公爵夫婦のことも自分自身がこの王都がどうしても苦手だと思ったことも原因がわかったからよかったと思ってる。やっと死にたいとか突発的に思わなくなったし夢の中で魘されることもなくなったの……」
「そうか……そんなことが続いていたのか……」
「うん……いつも夢の中で飛び降りて死ぬ夢を見てた……その理由がわかった。今は前世のわたしが過去を心の奥にしまってくれてる。わたしに生きて欲しいって言ってくれたの。わたしも幸せになりたいの」
「………ヒュートから返事は来てる…いつでも受け入れるそうだ」
「わかった、ありがとう」
ーーーやっぱり兄様が返事を受け取っていたのね。
あまりにも返事が遅いからおかしいとは思っていた。ヒュートは受け入れる受け入れないはわからないけど、必ず返事をくれる人。
次の日から学校へは通わなくなった。
オリソン国へ旅立つための準備を始めた。
オリヴィアには、彼女の屋敷へと出向いて事情を話した。抱きつかれて泣かれた。
だけど「頑張ってね」と言ってくれた。
「ずっと友達でいてくれる?」と聞くと「当たり前じゃない」と答えてくれた。
セルジオには婚約解消のための書類を彼の屋敷へ送った。
もちろん謝罪の手紙も書いて。
何度も考えた。セルジオの顔を思い出すと胸が痛い。セルジオはいつもあまり表情を変えない人なのにたまにふと笑う。その笑顔が見たくて彼に話しかけていた。
この気持ちは……だけど封印してしまおう。今なら間に合う。まだ気がついたばかりだもの。
わたしがこの国を去ればセルジオだってわたしを忘れて新しい婚約者を作るだろう。
そう思うことにした。自分勝手なわたしのことなんか忘れて欲しい。
兄様が「公爵夫婦のことだけど……」と聞いてきた。
最後に会わなくていいのか確認したいみたいだった。
「兄様、あの人たちはわたしの親ではない。魅了なんて関係なくわたしのことを嫌っていたもの」
そう言うと「……わかったよもう何も言わない。カレンが幸せになってくれるならそれでいい」と言ってくれた。
お祖父様とお祖母様には手紙を書いた。全ては話せないけど、ヒュートのところで働くことを伝えた。
お祖母様は自分の実家なので「頑張りなさい」と言ってくれた。
わたしは見送りを断り一人オリソン国へと旅立った。
屋敷に帰らずこの家の方へと帰ってくる。
わたしが屋敷に帰りたがらないのもある。あの屋敷に帰るとどうしても公爵夫婦にされたことを思い出すので嫌な気持ちになる。
「カレン、学校でのセルジオの話は聞いた。で、どうするつもりなんだ?」
「どうするって……婚約は解消するつもり……ヒュートに手紙を書いているの。受け入れてもらえるならオリソン国へ行って働くつもりよ」
「まともに働いたことがないカレンが働けるわけがないだろう?」
「わたしは……あの二人から逃れたくて必死で勉強をしてきたの。あの屋敷を出て文官になって地方で働こうと思ってた……前世を思い出して……今はこの国にいてはいけないと思ったの。わたしのせいで嫌な思いをした人たちがいるのならわたしがこの国で暮らしていくのは無理があると思うの………」
「前世の記憶は前世だろう?今はカレンなんだ!関係ない」
「うん、わたしもそう思ってる。わたしはカレンとして生を受けてカレンとして生きているの。だけどこの国ではカレンとして生きるには生き辛いの」
素直にそう言うと、兄様は口を噤んだ。
「………ずっと辛い思いをしてきたのはカレンなんだ……ごめん、俺が幸せにしてやりたいと思ったのに……妹にこんなに辛い思いをさせてしまって……」
「ううん、公爵夫婦のことも自分自身がこの王都がどうしても苦手だと思ったことも原因がわかったからよかったと思ってる。やっと死にたいとか突発的に思わなくなったし夢の中で魘されることもなくなったの……」
「そうか……そんなことが続いていたのか……」
「うん……いつも夢の中で飛び降りて死ぬ夢を見てた……その理由がわかった。今は前世のわたしが過去を心の奥にしまってくれてる。わたしに生きて欲しいって言ってくれたの。わたしも幸せになりたいの」
「………ヒュートから返事は来てる…いつでも受け入れるそうだ」
「わかった、ありがとう」
ーーーやっぱり兄様が返事を受け取っていたのね。
あまりにも返事が遅いからおかしいとは思っていた。ヒュートは受け入れる受け入れないはわからないけど、必ず返事をくれる人。
次の日から学校へは通わなくなった。
オリソン国へ旅立つための準備を始めた。
オリヴィアには、彼女の屋敷へと出向いて事情を話した。抱きつかれて泣かれた。
だけど「頑張ってね」と言ってくれた。
「ずっと友達でいてくれる?」と聞くと「当たり前じゃない」と答えてくれた。
セルジオには婚約解消のための書類を彼の屋敷へ送った。
もちろん謝罪の手紙も書いて。
何度も考えた。セルジオの顔を思い出すと胸が痛い。セルジオはいつもあまり表情を変えない人なのにたまにふと笑う。その笑顔が見たくて彼に話しかけていた。
この気持ちは……だけど封印してしまおう。今なら間に合う。まだ気がついたばかりだもの。
わたしがこの国を去ればセルジオだってわたしを忘れて新しい婚約者を作るだろう。
そう思うことにした。自分勝手なわたしのことなんか忘れて欲しい。
兄様が「公爵夫婦のことだけど……」と聞いてきた。
最後に会わなくていいのか確認したいみたいだった。
「兄様、あの人たちはわたしの親ではない。魅了なんて関係なくわたしのことを嫌っていたもの」
そう言うと「……わかったよもう何も言わない。カレンが幸せになってくれるならそれでいい」と言ってくれた。
お祖父様とお祖母様には手紙を書いた。全ては話せないけど、ヒュートのところで働くことを伝えた。
お祖母様は自分の実家なので「頑張りなさい」と言ってくれた。
わたしは見送りを断り一人オリソン国へと旅立った。
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