【完結】わたしの好きな人。〜次は愛してくれますか?

たろ

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よんじゅうさん。

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 オリソン国に一人で来た。

 初めての旅はドキドキしたけど、列車に乗り継いで、国境を馬車で渡り着いた国は景色も建物も全く違っていた。

 内戦の後国王が新しくなった新興国。

 今は治安も落ち着いたと聞く。

 この国がお祖母様の祖国。

 キョロキョロと周りを見渡していると「カレン!」と聞き慣れた声。

「ヒュート!」
 旅行用の大きな鞄を一つ持って来た。残りは兄様が送ってくれることになっている。

「遅くなってごめん!」

 オリソン国の王都は列車も通っているけど最近は自動車も道を走っている。
 自動車はかなり高級で高位貴族かお金持ちしか持てないらしい。

 ヒュートはそのお金持ちしか持てない自動車に乗ってやって来た。

「馬がないのに動く乗り物って凄いわね。どうやって動いてるの?」

「うん?これは蒸気自動車って言って列車と同じ原理かな……たぶんカレンに話してもわからないと思うよ」

「うん、まあ、聞いてもわからないかな……」

 ーーー難しいことはわかんないよ。

 だけどヒュート曰く、この車を今売り出しているのはグラント商会らしい。

 だからヒュートが乗って街で走らせてみんなにお披露目しているところなんだって。


「うわあー、すっごい!馬車より早いのに乗り心地はいいかも」

「ははっ、カレンは怖いもの知らずだよね」

 屋根の布は「幌」と言う素材で出来ているらしく今は屋根がない状態。
 だから風が全身に当たってとっても気持ちがいい。







「着いたよ。しばらくカレンがホームステイする家はここだよ」

 ヒュート達の実家に住めばいいと言われたけど甘えることになるので別の家に住みたいと頼んだ。

 だけどまだ15歳の女の子が一人で暮らすには何かあったら危ないと言われて、ヒュートが親しくしている人の家を紹介してくれた。

 家というよりお屋敷に近い。

 そこにはとても綺麗な女性とかっこいい男性の夫婦が住んでいるらしい。ヒュートがそう説明してくれた。

 そして数人の使用人も住み込みで暮らしているらしい。

 旦那様は王城で文官として働いていると教えてもらった。


「初めまして、カレンと申します。突然なのに受け入れていただきありがとうございます」

「ふふふ、わたしも貴女みたいに国を捨ててこの国へやって来たの。わたしの名前はオリエと言うの。王立騎士団で騎士をしていたのよ」

 大きなお腹を抱えた綺麗な人で思わず見惚れてしまった。

 わたしよりも10歳以上歳上なのに、そんな歳を感じさせない。
 とても美しい、なのに女騎士だった?思わず驚いてもう一度まじまじと見つめてしまった。

 マチルダさんというメイドさんが家の中を案内してくれた。

 旦那様は国中を飛び回っているので、なかなか家にいないらしい。

「わたしは貴女と同じ公爵令嬢だったの。そして色々あって国も家族も捨てて知人を頼ってこの国に来たの。夫のイアンもしばらくして別の国へ行き暮らし出したの。お互い別の国に来て働き出したのだけど何かと接点があって、再会して結婚したのよ」

 横から話をしたのはマチルダさん。

「違いますよ、結婚したのではなく再婚したんですよ」

 マチルダさんが苦笑いをしながら教えてくれた。

 その横にはブルダさんと言う護衛騎士さんもいた。二人は夫婦だと教えてもらった。

 みんな同じ国の出身でオリエ様のためにこの国に来たんだと教えてくれた。

「そうそう、オリエ様はシャトナー国の王太子妃だったんです。そしてイアン様は王太子の身分を捨ててずっとオリエ様だけを思って、やっと想いが通じたんですよ」

「ふふっ、そんなこともあったわよね」
 オリエ様はニコニコ笑いながら話してるけど、国を捨てたとか元王太子妃だったとか、聞いてるだけですごい話。

 それもシャトナー国は長い歴史を持つ国で、わりと考え方も堅実的で昔ながらの歴史を大切にする国だと聞いたことがある。だから結婚も政略的なものが多いと聞いた。

「カレンさんにどうしてこんな話をするかと言うとヒュートに話を聞いているの………この国でグラント商会で働くのももちろんいいと思うわ。だけど頑張って文官を目指すのもいいと思うの。向こうの国ではとても優秀だったと聞いているわ。
 あと少し頑張れば飛級で学校も卒業できるのじゃないかしら?まだ15歳なのよ?この国で新しい生き方を探して欲しいの。
 わたしもそうして今があるの」

 わたしはあの国を出れば自由になれる。そう思っていた……だけど、この国に来て今度は新しい夢を持つ……そんなことまで考えていなかった。

 ヒュートはわたしのためにオリエ様を紹介してくれたのだろう。

 疲れ果てて逃げるように来た国で、ゆっくりとわたしらしい新しい生き方を探せるように。

「ありがとうございます……ゆっくりと考えてみます」

 客間に案内されて持ってきた鞄の中身を取り出した。そして整理をしようと思ったけど、疲れていてベッドにちょっとだけ横になった。

「ふー、ちょっとだけ休憩……」

 初めての一人旅で実はとても疲れていてわたしはそのまま眠ってしまっていた。

 ーーー兄様に手紙を書かなきゃ……オリヴィアもエマも心配してるよね……みんなに手紙を……

 セルジオは怒ってるかな。
 もうわたしのことを忘れて新しい恋を………

 そう思うのに胸が痛いのはなんでだろう。この胸の痛みは……

 今日は……もう……いいや……






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