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50 書状
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リベラ共和国がランドル王国へ併合されるらしいと言う噂は、民衆へ瞬く間に広がった。
最初は党首ローランが、ランドル王国の王子の婚約者の美しさに惹かれて横取りを目論み襲撃したという話が出回った。
民衆はその野蛮な行為に拒絶反応を見せ、党首ローランを批判し始めた。
次に党首ローランが、占星術師ノアという女に入れ込んでいるという噂が新たに出始めた。
党首ローランは占星術師ノアの言いなりで、彼女が占う通りに政治を進めており、突如、鉱山を閉鎖し旧ヨーク公国を破滅に追い込んだのも、その女の進言だと言うものだった。
度重なるスキャンダルに翻弄された民衆の気持ちは、こんな野蛮なやつに党首をさせたのは失敗だ!から、この国は本当に滅亡するのでは?という絶望に変わっていく。
「おい、アーサーからの連絡はどうなっている?アイツらは何をやっているんだ。逃げたのか?」
党首のローランは荒れている。
数日前から、彼はベルファント王国に潜入させていた諜報機関のメンバーと連絡が取れなくなった。
それ故、この連日振りまかれるスキャンダルに対応出来ず、焦っていた。
「申し訳ございません。党首、連絡がつき次第ご報告いたし、、」
それは部下が胃が痛そうな表情で答えている途中に起こった。
「うわー!!」
「きゃー!」
少し遠くから叫び声が上がる。
「ん?何事だ!!お前確認してこい」
党首ローランは部下に怒鳴りつける。
「はっ、見て参ります」
部下は、声の方へ走って行った。
「一体、何が起きたのだ?」
部下の報告を待っているが、一向に帰ってこない。
党首ローランは何やら宮殿内の様子がおかしいと思い始める。
すると辺りの喧騒が急に遠のいて静かになった。
「刺客か?」
引き出しの中から、護身用のナイフを取り出した。
何かが、何処からか近づいてくる気配がする。
「な、な、何なんだ!お前は」
目の前に現れたのは、大きな白狼だった。
どう見ても、普通の狼ではない。
妖怪か?精霊か?
恐怖で言葉も出ない。
「あなたはリベラ共和国の党首ローランで間違いないですね」
近づいて来た大きな白狼は言葉を話した。
党首ローランは、はいと答えるべきか、シラを切るべきか分からず黙り込む。
「わたしは精霊王の眷属キリと申します。あなた宛に我が主、竜神王様からの書状を預かって参りました」
そう言い終えると、大きな白狼はいつのまにか書状を咥えていた。
党首ローランは恐怖で立っているのが精一杯だ。
大きな白狼は一歩ずつ間合いを詰めてくる。
党首ローランはジリジリと壁に当たるまで下がった。
結局、白狼から書状を受け取れる距離まで追い詰められた。
恐る恐る、党首ローランは書状を受け取る。
すると白狼は消えた。
今のは何だったのだ?幻想か?
いや、この書状があるのだから現実か。
党首ローランは受け取った書状をまじまじと見る。
書状には竜の紋章を押した金色の封蝋がしてあった。
ローランは息を整えて、書状を開く。
彼は内容を読み青ざめた。
『リベラ共和国 党首ローラン殿
我はこの大陸の守護を預かる竜神王である。
貴殿に最後通告を申し渡す。
貴殿の治めるリベラ共和国は他国へ意図的に不利益をもたらした。
貴殿の配下にはすでに罰を与えた。
貴殿に諫言を吐き、人々を摩耶かした占星術師ノアは被害の状況を確認した後に罰を与える。
貴殿は国を預かる責任者として、不適格である。
貴殿は共和国民のために速やかに共和国の今後の道筋を立てよ。
己の罪を顧みて責任を取ることを命じる。
期日は今月末までとする。
大陸歴5010年7月8日 竜神王ルイス』
配下はすでに処分しただと、、、。
党首ローランは膝から崩れた。
竜神王ルイスなどと、戯けたことを!誰の悪戯なのか?
タダでは置かないぞ!!と怒りが湧いてくる。
イライラしていると次第に宮殿内へ喧騒が戻って来た。
バタバタバタ、、、。
足音が近づいてくる。
気合を入れて立ち上がり、平静と見せかける。
「党首、大変です」
部下が走り込んできた。
「騒々しいぞ、何だ!」
「カナル地方で占星術師ノアが、ランドル王国の国宝窃盗の容疑で逮捕されました。また領主ゴーンたちは詐欺罪で騎士団に引き渡されました」
「何だと、、、」
党首ローランは先ほどの書状が思い浮かんだ。
「お前、さっきの白狼は見たか?」
党首ローランは部下に問う。
「白狼でございますか?いえ、見ておりません」
部下は首をひねる。
「そんな筈はない!この書状を見てみろ」
ローランは手に握った書状を見せようと腕を上げる。
しかし、手のひらには何も残ってなかった。
思わず、ローランは手の表裏を確認する。
なっ!手の甲に書状の封蝋と同じ紋章が浮かび上がっているではないか!!
これは逃げれないかもしれない、、、と思うと、さっきまでの怒りは一気に遠退いて、背筋に冷たい汗が流れて来た。
竜神王とは御伽話では無かったのか?
金儲けのために竜神王を持ち出したが、とんでもない事に足を突っ込んでしまったことに彼は今更気付いたのであった。
最初は党首ローランが、ランドル王国の王子の婚約者の美しさに惹かれて横取りを目論み襲撃したという話が出回った。
民衆はその野蛮な行為に拒絶反応を見せ、党首ローランを批判し始めた。
次に党首ローランが、占星術師ノアという女に入れ込んでいるという噂が新たに出始めた。
党首ローランは占星術師ノアの言いなりで、彼女が占う通りに政治を進めており、突如、鉱山を閉鎖し旧ヨーク公国を破滅に追い込んだのも、その女の進言だと言うものだった。
度重なるスキャンダルに翻弄された民衆の気持ちは、こんな野蛮なやつに党首をさせたのは失敗だ!から、この国は本当に滅亡するのでは?という絶望に変わっていく。
「おい、アーサーからの連絡はどうなっている?アイツらは何をやっているんだ。逃げたのか?」
党首のローランは荒れている。
数日前から、彼はベルファント王国に潜入させていた諜報機関のメンバーと連絡が取れなくなった。
それ故、この連日振りまかれるスキャンダルに対応出来ず、焦っていた。
「申し訳ございません。党首、連絡がつき次第ご報告いたし、、」
それは部下が胃が痛そうな表情で答えている途中に起こった。
「うわー!!」
「きゃー!」
少し遠くから叫び声が上がる。
「ん?何事だ!!お前確認してこい」
党首ローランは部下に怒鳴りつける。
「はっ、見て参ります」
部下は、声の方へ走って行った。
「一体、何が起きたのだ?」
部下の報告を待っているが、一向に帰ってこない。
党首ローランは何やら宮殿内の様子がおかしいと思い始める。
すると辺りの喧騒が急に遠のいて静かになった。
「刺客か?」
引き出しの中から、護身用のナイフを取り出した。
何かが、何処からか近づいてくる気配がする。
「な、な、何なんだ!お前は」
目の前に現れたのは、大きな白狼だった。
どう見ても、普通の狼ではない。
妖怪か?精霊か?
恐怖で言葉も出ない。
「あなたはリベラ共和国の党首ローランで間違いないですね」
近づいて来た大きな白狼は言葉を話した。
党首ローランは、はいと答えるべきか、シラを切るべきか分からず黙り込む。
「わたしは精霊王の眷属キリと申します。あなた宛に我が主、竜神王様からの書状を預かって参りました」
そう言い終えると、大きな白狼はいつのまにか書状を咥えていた。
党首ローランは恐怖で立っているのが精一杯だ。
大きな白狼は一歩ずつ間合いを詰めてくる。
党首ローランはジリジリと壁に当たるまで下がった。
結局、白狼から書状を受け取れる距離まで追い詰められた。
恐る恐る、党首ローランは書状を受け取る。
すると白狼は消えた。
今のは何だったのだ?幻想か?
いや、この書状があるのだから現実か。
党首ローランは受け取った書状をまじまじと見る。
書状には竜の紋章を押した金色の封蝋がしてあった。
ローランは息を整えて、書状を開く。
彼は内容を読み青ざめた。
『リベラ共和国 党首ローラン殿
我はこの大陸の守護を預かる竜神王である。
貴殿に最後通告を申し渡す。
貴殿の治めるリベラ共和国は他国へ意図的に不利益をもたらした。
貴殿の配下にはすでに罰を与えた。
貴殿に諫言を吐き、人々を摩耶かした占星術師ノアは被害の状況を確認した後に罰を与える。
貴殿は国を預かる責任者として、不適格である。
貴殿は共和国民のために速やかに共和国の今後の道筋を立てよ。
己の罪を顧みて責任を取ることを命じる。
期日は今月末までとする。
大陸歴5010年7月8日 竜神王ルイス』
配下はすでに処分しただと、、、。
党首ローランは膝から崩れた。
竜神王ルイスなどと、戯けたことを!誰の悪戯なのか?
タダでは置かないぞ!!と怒りが湧いてくる。
イライラしていると次第に宮殿内へ喧騒が戻って来た。
バタバタバタ、、、。
足音が近づいてくる。
気合を入れて立ち上がり、平静と見せかける。
「党首、大変です」
部下が走り込んできた。
「騒々しいぞ、何だ!」
「カナル地方で占星術師ノアが、ランドル王国の国宝窃盗の容疑で逮捕されました。また領主ゴーンたちは詐欺罪で騎士団に引き渡されました」
「何だと、、、」
党首ローランは先ほどの書状が思い浮かんだ。
「お前、さっきの白狼は見たか?」
党首ローランは部下に問う。
「白狼でございますか?いえ、見ておりません」
部下は首をひねる。
「そんな筈はない!この書状を見てみろ」
ローランは手に握った書状を見せようと腕を上げる。
しかし、手のひらには何も残ってなかった。
思わず、ローランは手の表裏を確認する。
なっ!手の甲に書状の封蝋と同じ紋章が浮かび上がっているではないか!!
これは逃げれないかもしれない、、、と思うと、さっきまでの怒りは一気に遠退いて、背筋に冷たい汗が流れて来た。
竜神王とは御伽話では無かったのか?
金儲けのために竜神王を持ち出したが、とんでもない事に足を突っ込んでしまったことに彼は今更気付いたのであった。
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