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49 翡翠館
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俺とマーゴットは占星術師ノアの足取りを先日から堂々と追っている。
『堂々と』と、いうのは俺たちは身分をしっかり出して、領主に面会の約束を取り、ランドル王国からの逮捕令状を持って聞いてまわっているからだ。
逮捕令状に記載されたランドル王国で『妖精のピアス』という魔道具が盗まれたという話は、実は殿下が作った話だ。
ちょうどタイミングよく宝物庫から無くなったらしい。
そして、それを盗んだのは占星術師ノアという筋書きにした。
今、俺たちはリベラ共和国のカナル地方で領主ゴーンと面会をしている。
「ランドル王国の宝物庫で『妖精のピアス』と言う品物が盗まれたと言うことですね。それはどんな魔道具なのでしょうか」
領主ゴーンが質問する。
「『妖精のピアス』は人の心を読み取る魔道具です。おそらく、その占星術師ノアは相手の心を読んで自分の都合の良い様に話を進めたりしているのではないかと思われます。ゴーン氏は占星術師ノアと面識はありますか?」
オレの代わりにマーゴットが切れ味よく回答する。
彼女はオレの婚約者だが、ベルファント王国の王女でもあるので、一領主が敵う相手ではない。
「あ、あー、いえ会ったことはないですね」
分かり易く、目を泳がせて言ってやがる。
「もし、ゴーン氏の領地に彼女が立ち寄ることが有れば、ランドル王国へご一報下さい」
「えっええ、それは勿論。そんな大変なものを盗むとはトンデモナイ悪党ですね」
オイオイ、あんた明らかに動揺しているよ、、、。
まさかここに居るんじゃないか???
いやいや、そんな簡単に行くわけないか。
「アズ様、そろそろわたくし達はお暇いたしましょう」
タイミング良くマーゴットが話しかけてくる。
「ああ、そうだな。では、ゴーン氏大切なお時間をいただきありがとうございました。私達はまだ先を急ぐので失礼します」
2人でさっさと挨拶をし、その場を離れた。
領主と面会した役場からかなり離れて、街を見下ろせる高台まで来た。
ここなら聞き耳も心配しなくていい。
「マーゴット、どうだろう?」
「多分、この街に居ると思う」
「だよな。俺もそう思う。あの領主、動揺の仕方がおかしいだろ」
「ここにしばらく滞在してみては?」
「ああ、そうしよう。街が気に入ったー!とか言っておくか」
「案外、不真面目で仕事をしていない素ぶりの方が油断するかも知れないわ」
「おっ!それ良いね。それで行こう」
俺たちは再び街へ戻り、一番高級な宿は何処かと聞いてまわった。
地元の人々が、それなら翡翠館だ!と口を揃えて言うので、そこへ向かう。
辿り着くと何というか成金主義のようなゴテゴテした建物が見えて来た。
俺たちは早速入ってみることにした。
「いらっしゃいませ、ご宿泊ですね。ニ名様でいらっしゃいますか?」
フロントで聞かれる。
俺は偉そうに口を開く。
「ランドル王国の王子の使いでこちらへ来た。俺は公爵家のアズール・バッファエル、彼女は婚約者でベルファント王国のマーゴット王女だ。この宿で一番良い部屋を用意してくれ」
出来るだけ圧を掛ける。
突如、フロント係が慌て出す。
「少々お待ちください。ご用意して参ります」
その係員は早歩きで立ち去った。
そりゃ、突然王女が来たら慌てるだろうよ。
「あの、アズ様」
マーゴットが耳打ちしてくる。
「ん、何?」
「アタリかも知れないです。一番良いお部屋にターゲットがいるのでは?」
「はぁ?うそ、そんな感じがしたの?マーゴット?」
「はい、しました。アズ様、捕獲のチャンスかも知れないので気を抜かないで下さい」
「分かった。でもそれならご用意するとか口走ったらダメだよな」
「追い出せるのでしょうかね?」
「その対応でも人物像が分かりそうだよな」
「ええ」
俺とマーゴットはフロント横のソファーに座り、雑談をしながら待つ。
十分後、支配人を名乗る男が現れた。
「大変申し訳ございません。一番広いお部屋にいらっしゃるお客様のご気分が悪いようで、お部屋を変わっていただくことが難しい次第でして、二番目に良いお部屋でしたらすぐにご案内出来ますが、いかがでしょうか?」
俺はマーゴットに目配せをする。
マーゴットが頷く。
「具合が悪いならば、仕方ない。その部屋で構わないから案内してくれ」
「ありがとうございます。この田舎のお宿に高貴な方がお見えになられるのは初めてでして、至らぬ点などございましたら遠慮なく仰ってください」
支配人は深々と礼をした。
だけどさ、高貴な方が来ても気にしない人が、その部屋にいるわけだよね。
間違いなく怪しい。
その後、四階建ての翡翠館の三階の客室に案内された。
このフロアに客室はニ部屋。
その片方だということだ。
恐らく一番いい部屋というのは四階ワンフロアだと予想できる。
支配人が去り、オレは早速、上の部屋のサーチを始めた。
女性が一名と男性が五名か、男は護衛か?
「マーゴット、女性が一名と男性が五名いる」
俺は上を指さしながら、伝えた。
「豪族の令嬢などでも、必ず女性の従者がいるはずですから、親子などでない限りは、やはりアタリかもしれませんね」
「もう少しサーチしてみる」
俺は上にいる女性と男性をさらに詳しく調べた。
段々と姿が脳裏に浮かんでくる。
顔にベールを被った女性と、ごろつきのような男が二名とゴーン氏!?と護衛が二名」
「マーゴット!ゴーン氏がいるぞ」
「素早いですね。私たちのことを伝えに来たのでしょうか?」
「いや、何か揉めてるみたいだ。何を話しているのか聞いてみよう」
「ええ、聞きたいですけど、屋根にでも上がりますか?」
「そんなことしなくても、大丈夫」
俺はそう言うとマーゴットの手を取る。
「えっ、何を!?」
俺の手から自分の手を引き抜こうと物凄く抵抗された。
「えっと、変な意味ではなく、俺と手を繋いで目を閉じて集中してみて」
疑心暗鬼な様子ながらも、マーゴットは応じた。
「え、えっ!すごい!!上の部屋の様子が見えます。お話も、、、、」
その頃、上の階では、、、。
「ノア様、困ります。カナル地方から出て行っていただきたい。また、この宿の代金の支払いも今すぐお願いします」
「あら、わたくしが貢献したことを無しにする気なの?あなたに何か不幸が訪れるようにすることも、わたくしには容易いことなのに」
必死な領主に比べ、占星術師ノアは傍若無人な態度だ。
「あなた様は今や指名手配犯なのですぞ。私たちはあなたを匿うことは出来ません」
「指名手配ですって、何かの間違いじゃないかしら、私はその様な罪など侵さなくても未来が見えますのよ」
「どうせ盗んだ魔道具で見ているのでしょう?とにかく、今日中に出て行ってください。この町には来賓も来ているので、私はあなたに構っている暇はないのです」
一緒に掴まりたくないのか、領主も必死だな。
俺にこれだけ覗かれていても気付かないところを見ると、占星術師ノアは魔術師でもなさそうだ。
コンコン、ん?上の階に誰か来たようだ。
「あら、どなたかしら?」
「ゴーン様に至急お伝えしたい事があり参上いたしました」
「あなたに御用みたいよ」
ガシャっとドアを開ける音がする。
「ゴーン様、我が国がランドル王国に併合されるという話が入ってきました」
「何だと?」
領主は慌てる。
「あらら、、」
占星術師ノアは他人ごとだ。
「何が、どうして併合などと言う話が出たのだ?」
「党首がランドル王国の王子の婚約者にちょっかいを掛けたので、ランドル王国の逆鱗に触れたと、、、」
領主がノアを見る。
「あなたの仕業なのか?」
「さあ?私は占いしかしておりません」
「他にも、そそのかしたのか?」
あ、領主が切れそうだ。そろそろ潮時か?
「マーゴット、行けるか?」
「はい、いつでも」
俺はマーゴットの手を握ったまま、上の階に転移した。
「はい、そこまで!全員捕獲」
俺はそう宣言し、即座に魔術で全員を縛り上げた。
横でマーゴットが「わたくしの出番は?」と呟く。
「ごめん、スピードが大事なんだ」と俺は謝った。
直ぐに念話で殿下に連絡する。
「殿下~、捕獲した。どうしたらいい」
「アズ、早いな。誰を捕獲した?」
「占星術師ノアと、カナル地方領主ゴーンと護衛関係五名だから、合わせて七名です」
「占星術師ノアだけ連れて帰ってこい。後の奴らは解放していい」
「了解」
俺は手を繋いだままのマーゴットに殿下の指令を伝える。
「殿下が占星術師ノアだけ連れてこいって言ってる」
「そうですか、他の六名は制裁していいですか?」
「そうだな、領主は嘘をついていたからな。死なない程度にならいいぞ」
「了解です。アズ様が行って帰ってくる間に片付けます」
ニコッとしながら、相棒はとても恐ろしいことを笑顔で言いやがるが、面白いから良しとする。
「じゃ、一度魔塔に行って帰ってくる。マーゴット、無理するなよ」
「はい」
俺は魔術で身動きを取れなくて悔しい顔をしている占星術師ノアを掴み転移した。
「アズ兄ちゃん、おかえり」
「アズお疲れ」
俺が戻った先にシータと殿下がいた。
エリーゼはいなかった。
まぁ、殿下は血なまぐさいのはエリーゼに見せないだろうな。
「魔塔の牢に幽閉する。被害を受けた国に聞き取りをして裁判をする」
殿下が宣言した。
「アレ?処分しないの?」
「手順を踏んで処分する。ランドル王国は法治国家だからな」
「分かったよ」
俺たちは3人で魔塔の地下の牢へと降りた。
占星術師ノアは言霊を使う可能性もあるとシータが言うので、言葉も封じた。
今は悔しそうな表情しか分からない。
そして、この牢は異空間になっているため、よほどの魔力を持った魔術師でないと脱獄は不可能だ。
一通りの作業を迅速に終わらせ、俺は帰り支度を始める。
「アズ、何をそんなに焦っているんだ?」
殿下が訝しむ。
「いや、早く帰らないとマーゴットが領主たちの命を取ってしまうかもしれないから~」
俺が状況を説明すると殿下が頭を抱えた。
「お前は大丈夫なのか?」
「何が?」
「殴られたりとか、、、」
「いや、そういうのは全然ない。むしろ可愛いと思うことは沢山あるけど」
「いいコンビだな」
「ぼくの勘がよかったよね」
シータが横から割り込む。
「ああ、シータのおかげだな」
俺は肘でシータを小突いた。
「じゃ、戻るわ」
「ああ、お疲れアズ」
「兄ちゃん早く帰って来てね」
俺は二人の見送りに手を挙げて返事をし、転移した。
「ただいま」
あー、伸びてる。
いかつい奴を含む、男性六名が伸びてる。
でも部屋は綺麗なままだな。
「おかえりなさい、アズ様」
マーゴットが満面の笑みで答える。
猛烈に笑いがこみ上げる。
堪えきれず声に出して笑ってしまった。
マーゴットが不思議そうな顔で俺を見ている。
ようやく笑いが収まった俺は言った。
「さあ、この町の騎士団に伝えに行こう。無事に占星術師ノアは捕獲出来ましたーって」
「はい!」
ハイ、任務完了。
『堂々と』と、いうのは俺たちは身分をしっかり出して、領主に面会の約束を取り、ランドル王国からの逮捕令状を持って聞いてまわっているからだ。
逮捕令状に記載されたランドル王国で『妖精のピアス』という魔道具が盗まれたという話は、実は殿下が作った話だ。
ちょうどタイミングよく宝物庫から無くなったらしい。
そして、それを盗んだのは占星術師ノアという筋書きにした。
今、俺たちはリベラ共和国のカナル地方で領主ゴーンと面会をしている。
「ランドル王国の宝物庫で『妖精のピアス』と言う品物が盗まれたと言うことですね。それはどんな魔道具なのでしょうか」
領主ゴーンが質問する。
「『妖精のピアス』は人の心を読み取る魔道具です。おそらく、その占星術師ノアは相手の心を読んで自分の都合の良い様に話を進めたりしているのではないかと思われます。ゴーン氏は占星術師ノアと面識はありますか?」
オレの代わりにマーゴットが切れ味よく回答する。
彼女はオレの婚約者だが、ベルファント王国の王女でもあるので、一領主が敵う相手ではない。
「あ、あー、いえ会ったことはないですね」
分かり易く、目を泳がせて言ってやがる。
「もし、ゴーン氏の領地に彼女が立ち寄ることが有れば、ランドル王国へご一報下さい」
「えっええ、それは勿論。そんな大変なものを盗むとはトンデモナイ悪党ですね」
オイオイ、あんた明らかに動揺しているよ、、、。
まさかここに居るんじゃないか???
いやいや、そんな簡単に行くわけないか。
「アズ様、そろそろわたくし達はお暇いたしましょう」
タイミング良くマーゴットが話しかけてくる。
「ああ、そうだな。では、ゴーン氏大切なお時間をいただきありがとうございました。私達はまだ先を急ぐので失礼します」
2人でさっさと挨拶をし、その場を離れた。
領主と面会した役場からかなり離れて、街を見下ろせる高台まで来た。
ここなら聞き耳も心配しなくていい。
「マーゴット、どうだろう?」
「多分、この街に居ると思う」
「だよな。俺もそう思う。あの領主、動揺の仕方がおかしいだろ」
「ここにしばらく滞在してみては?」
「ああ、そうしよう。街が気に入ったー!とか言っておくか」
「案外、不真面目で仕事をしていない素ぶりの方が油断するかも知れないわ」
「おっ!それ良いね。それで行こう」
俺たちは再び街へ戻り、一番高級な宿は何処かと聞いてまわった。
地元の人々が、それなら翡翠館だ!と口を揃えて言うので、そこへ向かう。
辿り着くと何というか成金主義のようなゴテゴテした建物が見えて来た。
俺たちは早速入ってみることにした。
「いらっしゃいませ、ご宿泊ですね。ニ名様でいらっしゃいますか?」
フロントで聞かれる。
俺は偉そうに口を開く。
「ランドル王国の王子の使いでこちらへ来た。俺は公爵家のアズール・バッファエル、彼女は婚約者でベルファント王国のマーゴット王女だ。この宿で一番良い部屋を用意してくれ」
出来るだけ圧を掛ける。
突如、フロント係が慌て出す。
「少々お待ちください。ご用意して参ります」
その係員は早歩きで立ち去った。
そりゃ、突然王女が来たら慌てるだろうよ。
「あの、アズ様」
マーゴットが耳打ちしてくる。
「ん、何?」
「アタリかも知れないです。一番良いお部屋にターゲットがいるのでは?」
「はぁ?うそ、そんな感じがしたの?マーゴット?」
「はい、しました。アズ様、捕獲のチャンスかも知れないので気を抜かないで下さい」
「分かった。でもそれならご用意するとか口走ったらダメだよな」
「追い出せるのでしょうかね?」
「その対応でも人物像が分かりそうだよな」
「ええ」
俺とマーゴットはフロント横のソファーに座り、雑談をしながら待つ。
十分後、支配人を名乗る男が現れた。
「大変申し訳ございません。一番広いお部屋にいらっしゃるお客様のご気分が悪いようで、お部屋を変わっていただくことが難しい次第でして、二番目に良いお部屋でしたらすぐにご案内出来ますが、いかがでしょうか?」
俺はマーゴットに目配せをする。
マーゴットが頷く。
「具合が悪いならば、仕方ない。その部屋で構わないから案内してくれ」
「ありがとうございます。この田舎のお宿に高貴な方がお見えになられるのは初めてでして、至らぬ点などございましたら遠慮なく仰ってください」
支配人は深々と礼をした。
だけどさ、高貴な方が来ても気にしない人が、その部屋にいるわけだよね。
間違いなく怪しい。
その後、四階建ての翡翠館の三階の客室に案内された。
このフロアに客室はニ部屋。
その片方だということだ。
恐らく一番いい部屋というのは四階ワンフロアだと予想できる。
支配人が去り、オレは早速、上の部屋のサーチを始めた。
女性が一名と男性が五名か、男は護衛か?
「マーゴット、女性が一名と男性が五名いる」
俺は上を指さしながら、伝えた。
「豪族の令嬢などでも、必ず女性の従者がいるはずですから、親子などでない限りは、やはりアタリかもしれませんね」
「もう少しサーチしてみる」
俺は上にいる女性と男性をさらに詳しく調べた。
段々と姿が脳裏に浮かんでくる。
顔にベールを被った女性と、ごろつきのような男が二名とゴーン氏!?と護衛が二名」
「マーゴット!ゴーン氏がいるぞ」
「素早いですね。私たちのことを伝えに来たのでしょうか?」
「いや、何か揉めてるみたいだ。何を話しているのか聞いてみよう」
「ええ、聞きたいですけど、屋根にでも上がりますか?」
「そんなことしなくても、大丈夫」
俺はそう言うとマーゴットの手を取る。
「えっ、何を!?」
俺の手から自分の手を引き抜こうと物凄く抵抗された。
「えっと、変な意味ではなく、俺と手を繋いで目を閉じて集中してみて」
疑心暗鬼な様子ながらも、マーゴットは応じた。
「え、えっ!すごい!!上の部屋の様子が見えます。お話も、、、、」
その頃、上の階では、、、。
「ノア様、困ります。カナル地方から出て行っていただきたい。また、この宿の代金の支払いも今すぐお願いします」
「あら、わたくしが貢献したことを無しにする気なの?あなたに何か不幸が訪れるようにすることも、わたくしには容易いことなのに」
必死な領主に比べ、占星術師ノアは傍若無人な態度だ。
「あなた様は今や指名手配犯なのですぞ。私たちはあなたを匿うことは出来ません」
「指名手配ですって、何かの間違いじゃないかしら、私はその様な罪など侵さなくても未来が見えますのよ」
「どうせ盗んだ魔道具で見ているのでしょう?とにかく、今日中に出て行ってください。この町には来賓も来ているので、私はあなたに構っている暇はないのです」
一緒に掴まりたくないのか、領主も必死だな。
俺にこれだけ覗かれていても気付かないところを見ると、占星術師ノアは魔術師でもなさそうだ。
コンコン、ん?上の階に誰か来たようだ。
「あら、どなたかしら?」
「ゴーン様に至急お伝えしたい事があり参上いたしました」
「あなたに御用みたいよ」
ガシャっとドアを開ける音がする。
「ゴーン様、我が国がランドル王国に併合されるという話が入ってきました」
「何だと?」
領主は慌てる。
「あらら、、」
占星術師ノアは他人ごとだ。
「何が、どうして併合などと言う話が出たのだ?」
「党首がランドル王国の王子の婚約者にちょっかいを掛けたので、ランドル王国の逆鱗に触れたと、、、」
領主がノアを見る。
「あなたの仕業なのか?」
「さあ?私は占いしかしておりません」
「他にも、そそのかしたのか?」
あ、領主が切れそうだ。そろそろ潮時か?
「マーゴット、行けるか?」
「はい、いつでも」
俺はマーゴットの手を握ったまま、上の階に転移した。
「はい、そこまで!全員捕獲」
俺はそう宣言し、即座に魔術で全員を縛り上げた。
横でマーゴットが「わたくしの出番は?」と呟く。
「ごめん、スピードが大事なんだ」と俺は謝った。
直ぐに念話で殿下に連絡する。
「殿下~、捕獲した。どうしたらいい」
「アズ、早いな。誰を捕獲した?」
「占星術師ノアと、カナル地方領主ゴーンと護衛関係五名だから、合わせて七名です」
「占星術師ノアだけ連れて帰ってこい。後の奴らは解放していい」
「了解」
俺は手を繋いだままのマーゴットに殿下の指令を伝える。
「殿下が占星術師ノアだけ連れてこいって言ってる」
「そうですか、他の六名は制裁していいですか?」
「そうだな、領主は嘘をついていたからな。死なない程度にならいいぞ」
「了解です。アズ様が行って帰ってくる間に片付けます」
ニコッとしながら、相棒はとても恐ろしいことを笑顔で言いやがるが、面白いから良しとする。
「じゃ、一度魔塔に行って帰ってくる。マーゴット、無理するなよ」
「はい」
俺は魔術で身動きを取れなくて悔しい顔をしている占星術師ノアを掴み転移した。
「アズ兄ちゃん、おかえり」
「アズお疲れ」
俺が戻った先にシータと殿下がいた。
エリーゼはいなかった。
まぁ、殿下は血なまぐさいのはエリーゼに見せないだろうな。
「魔塔の牢に幽閉する。被害を受けた国に聞き取りをして裁判をする」
殿下が宣言した。
「アレ?処分しないの?」
「手順を踏んで処分する。ランドル王国は法治国家だからな」
「分かったよ」
俺たちは3人で魔塔の地下の牢へと降りた。
占星術師ノアは言霊を使う可能性もあるとシータが言うので、言葉も封じた。
今は悔しそうな表情しか分からない。
そして、この牢は異空間になっているため、よほどの魔力を持った魔術師でないと脱獄は不可能だ。
一通りの作業を迅速に終わらせ、俺は帰り支度を始める。
「アズ、何をそんなに焦っているんだ?」
殿下が訝しむ。
「いや、早く帰らないとマーゴットが領主たちの命を取ってしまうかもしれないから~」
俺が状況を説明すると殿下が頭を抱えた。
「お前は大丈夫なのか?」
「何が?」
「殴られたりとか、、、」
「いや、そういうのは全然ない。むしろ可愛いと思うことは沢山あるけど」
「いいコンビだな」
「ぼくの勘がよかったよね」
シータが横から割り込む。
「ああ、シータのおかげだな」
俺は肘でシータを小突いた。
「じゃ、戻るわ」
「ああ、お疲れアズ」
「兄ちゃん早く帰って来てね」
俺は二人の見送りに手を挙げて返事をし、転移した。
「ただいま」
あー、伸びてる。
いかつい奴を含む、男性六名が伸びてる。
でも部屋は綺麗なままだな。
「おかえりなさい、アズ様」
マーゴットが満面の笑みで答える。
猛烈に笑いがこみ上げる。
堪えきれず声に出して笑ってしまった。
マーゴットが不思議そうな顔で俺を見ている。
ようやく笑いが収まった俺は言った。
「さあ、この町の騎士団に伝えに行こう。無事に占星術師ノアは捕獲出来ましたーって」
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