51 / 54
51 祝福
しおりを挟む
「ママ、りゅうしんおうって知ってる?」
「知っているわよ。お嫁さんを大切にしていた竜でしょう?昨日夢に出て来たわ」
「わたしも夢に出てきたの!!とてもかっこいい竜だった!」
ひとり、ふたりと夢に竜神王が出て来た!!と話し、噂は瞬く間に大陸中に広がった。
すぐに、竜神王の夢は祝福の夢と言われるようになる。
誰もが見るので、仲間外れもない。
また、舞台がベルファント王国の結婚式という設定も人々の心に祝福という意味をもたらす理由となった。
7月31日 くもり
明日はいよいよロイ様とロゼ様の結婚式。皆で目まぐるしく策略や準備に駆け回ったのが、走馬灯のように頭に駆け巡る、、、、って、それ死んじゃう時みたいじゃない!!縁起でもないわ。明日と明後日は私もしっかりお手伝いしますよー。花嫁さんって、あまりお食事が出来ないのよね。何かクッキーとか差し入れになるものでも持っていこうかな。よし、予定より少し早く起きて作ろう!!
「いよいよだな」
オレが明日結婚式を迎えようとする男に語りかける。
「ああ、もう終わったら一週間くらい眠りたい気分だよ」
ロイは嫌そうに答える。
「ロゼ嬢の方がオレは心配だったけどな」
オレは急な日程を組んでしまい、彼女には悪いことをしたと思っている。
「いやいやいや、ロゼはああ見えてタフなんだよ。時間が無いなりに準備に全力を注いでいた気がする」
「ベルファント王国というのは女性が強い傾向があるのか?」
オレは姫を思い出して笑った。
「ルイス、絶対マーゴットを思い出しただろう。妹は特殊だからね!別枠にしておいて。そういえばアズール君は大丈夫?元気にしているのかい」
「ああ、オレたちが心配する必要もないくらい仲がいいみたいだぞ」
「そうか、それは良かった。マーゴットの婚約も王都のパレードの日に発表するって言ってたから、ケガとかしていたらどうしようと心配していたんだ」
「ケガって、、、」
オレは笑いがツボに入った。
クックック、、、止まらない。
「ルイス様、大丈夫ですか?」
少し離れたところで、シータと話していたリゼが心配そうにやってきた。
「ルイスはマーゴットがツボみたいだ」
ロイが余計なことを言う。
「まぁ、マーゴット様は麗しい見た目と中身が脳筋のギャップが魅力ですからね」
「ぶっ、リゼそれは言ってはならない真実過ぎるだろう」
オレは涙目になりながら、リゼに言う。
「大丈夫です。ご本人が口にされてましたから」
リゼは何故かドヤ顔だ。
「それはさておき、君たちの用意してくれる演目なんだけど、内容は決まったのかい?」
俺たちはランドル王国からの贈り物として、王都パレードの企画と広場でのイベントを受け持った。
勿論、他国なので司教にも正教会の方々にも手伝ってもらった。
「演目は秘密の方が盛り上がるだろう。楽しみにしておけ」
「ふーん、そう。精霊とか出て来たりする?」
企んだ顔でロイが聞いてくる。
あっ!ロイは、リゼが精霊と関係あることを知っているのだったな。
「まぁ、それも秘密と言う事だ」
「分かった。楽しみにしておくよ」
ロイはそう言うとすんなり部屋を後にした。
本当に忙しいらしい。
今、オレたちはロイの結婚式の準備のため、ベルファント王国の離宮を使わせてもらっている。
ロイが去って、3人になったので、そろそろ他言無用の打ち合わせを始めてもいいだろう。
「踊りの練習は終わったみたいです」
リゼが言う。
「間に合って良かったな」
「ええ、マルが張り切ってました」
「ぼくは空から蒔くお菓子の準備が終わったよ。当たっても痛くないハートの形のマシュマロとか、小さめのクッキーとか、飴がけのナッツにした。ちゃんとラッピングしてあるんだ。金色のリボンも付けたよ」
「シータ、センス良いわね」
リゼがシータを褒める。
「ロゼ姉様にお菓子のシャワーはどんなのがいいと思う?って聞いたんだ」
「あら、ロゼ様にはバレちゃったのね」
「ううん、そうかも」
「まあ、それくらいは良いんじゃないか?」
「ありがとう。ルイス兄様」
「ねえ、そのルイス兄様って言うのが、とても引っかかるのだけど、シータ」
私はルイス様への兄様呼びが妙に気になって、シータに質問した。
シータは、ルイス様の顔色を伺う。
ルイス様が頷く。
「あのねー」
シータが私の耳にヒソヒソと話す。
「はぁー?兄弟!?」
驚いた私は口走る。
「リゼ、声がデカい」
ルイス様が口に人差し指を当てる。
「揃っちゃったのですね」
「ああ、3人揃ったな。そしてオレたちは何の問題も無いだろう。リゼ、もう乙女ゲームは気にしなくて大丈夫じゃないか?」
「ぼくも姉様と結婚したいとか全く思ってないよ」
シータが笑顔で言う。
「ま、まぁそう言うことでしたら、、、。もう気にしない事にします」
「ぼくにはね、2人の赤ちゃんが出来たら頂戴!」
「えええ、な、何をいうのシータ。そんな予言は要らないから」
私はシータの攻撃に狼狽える。
「シータ、それは言うなって言っただろう。歴代、王家には男しか産まれない。もし、娘が奇跡的に産まれたら、、、いや、嫌な予感しかしないから、約束しない」
ルイス様は慎重だ。
「そうよ、シータ。その時になって、シータとその子がお互いに好き合っているなら考えましょう。まだ先の話ね」
「うん、分かったよ。だから姉様はルイス兄様と幸せになってね」
シータの一言に、何だか分からない感情が湧き上がって来て、私の目から涙が滝のように流れて来た。
私の奥底に彼女の記憶でも残っていたのだろうか、、、。
「リゼ、何も心配は要らない。あとはいい時代を作ることがオレたち王族と竜神王の勤めだ。先ずは明日、明後日をしっかり頑張ろう」
「ぼくも頑張る!!」
私は止まらない涙で頷く事しか出来なかった。
新しい竜神王兄弟の物語はもう始まっていたのね。
「知っているわよ。お嫁さんを大切にしていた竜でしょう?昨日夢に出て来たわ」
「わたしも夢に出てきたの!!とてもかっこいい竜だった!」
ひとり、ふたりと夢に竜神王が出て来た!!と話し、噂は瞬く間に大陸中に広がった。
すぐに、竜神王の夢は祝福の夢と言われるようになる。
誰もが見るので、仲間外れもない。
また、舞台がベルファント王国の結婚式という設定も人々の心に祝福という意味をもたらす理由となった。
7月31日 くもり
明日はいよいよロイ様とロゼ様の結婚式。皆で目まぐるしく策略や準備に駆け回ったのが、走馬灯のように頭に駆け巡る、、、、って、それ死んじゃう時みたいじゃない!!縁起でもないわ。明日と明後日は私もしっかりお手伝いしますよー。花嫁さんって、あまりお食事が出来ないのよね。何かクッキーとか差し入れになるものでも持っていこうかな。よし、予定より少し早く起きて作ろう!!
「いよいよだな」
オレが明日結婚式を迎えようとする男に語りかける。
「ああ、もう終わったら一週間くらい眠りたい気分だよ」
ロイは嫌そうに答える。
「ロゼ嬢の方がオレは心配だったけどな」
オレは急な日程を組んでしまい、彼女には悪いことをしたと思っている。
「いやいやいや、ロゼはああ見えてタフなんだよ。時間が無いなりに準備に全力を注いでいた気がする」
「ベルファント王国というのは女性が強い傾向があるのか?」
オレは姫を思い出して笑った。
「ルイス、絶対マーゴットを思い出しただろう。妹は特殊だからね!別枠にしておいて。そういえばアズール君は大丈夫?元気にしているのかい」
「ああ、オレたちが心配する必要もないくらい仲がいいみたいだぞ」
「そうか、それは良かった。マーゴットの婚約も王都のパレードの日に発表するって言ってたから、ケガとかしていたらどうしようと心配していたんだ」
「ケガって、、、」
オレは笑いがツボに入った。
クックック、、、止まらない。
「ルイス様、大丈夫ですか?」
少し離れたところで、シータと話していたリゼが心配そうにやってきた。
「ルイスはマーゴットがツボみたいだ」
ロイが余計なことを言う。
「まぁ、マーゴット様は麗しい見た目と中身が脳筋のギャップが魅力ですからね」
「ぶっ、リゼそれは言ってはならない真実過ぎるだろう」
オレは涙目になりながら、リゼに言う。
「大丈夫です。ご本人が口にされてましたから」
リゼは何故かドヤ顔だ。
「それはさておき、君たちの用意してくれる演目なんだけど、内容は決まったのかい?」
俺たちはランドル王国からの贈り物として、王都パレードの企画と広場でのイベントを受け持った。
勿論、他国なので司教にも正教会の方々にも手伝ってもらった。
「演目は秘密の方が盛り上がるだろう。楽しみにしておけ」
「ふーん、そう。精霊とか出て来たりする?」
企んだ顔でロイが聞いてくる。
あっ!ロイは、リゼが精霊と関係あることを知っているのだったな。
「まぁ、それも秘密と言う事だ」
「分かった。楽しみにしておくよ」
ロイはそう言うとすんなり部屋を後にした。
本当に忙しいらしい。
今、オレたちはロイの結婚式の準備のため、ベルファント王国の離宮を使わせてもらっている。
ロイが去って、3人になったので、そろそろ他言無用の打ち合わせを始めてもいいだろう。
「踊りの練習は終わったみたいです」
リゼが言う。
「間に合って良かったな」
「ええ、マルが張り切ってました」
「ぼくは空から蒔くお菓子の準備が終わったよ。当たっても痛くないハートの形のマシュマロとか、小さめのクッキーとか、飴がけのナッツにした。ちゃんとラッピングしてあるんだ。金色のリボンも付けたよ」
「シータ、センス良いわね」
リゼがシータを褒める。
「ロゼ姉様にお菓子のシャワーはどんなのがいいと思う?って聞いたんだ」
「あら、ロゼ様にはバレちゃったのね」
「ううん、そうかも」
「まあ、それくらいは良いんじゃないか?」
「ありがとう。ルイス兄様」
「ねえ、そのルイス兄様って言うのが、とても引っかかるのだけど、シータ」
私はルイス様への兄様呼びが妙に気になって、シータに質問した。
シータは、ルイス様の顔色を伺う。
ルイス様が頷く。
「あのねー」
シータが私の耳にヒソヒソと話す。
「はぁー?兄弟!?」
驚いた私は口走る。
「リゼ、声がデカい」
ルイス様が口に人差し指を当てる。
「揃っちゃったのですね」
「ああ、3人揃ったな。そしてオレたちは何の問題も無いだろう。リゼ、もう乙女ゲームは気にしなくて大丈夫じゃないか?」
「ぼくも姉様と結婚したいとか全く思ってないよ」
シータが笑顔で言う。
「ま、まぁそう言うことでしたら、、、。もう気にしない事にします」
「ぼくにはね、2人の赤ちゃんが出来たら頂戴!」
「えええ、な、何をいうのシータ。そんな予言は要らないから」
私はシータの攻撃に狼狽える。
「シータ、それは言うなって言っただろう。歴代、王家には男しか産まれない。もし、娘が奇跡的に産まれたら、、、いや、嫌な予感しかしないから、約束しない」
ルイス様は慎重だ。
「そうよ、シータ。その時になって、シータとその子がお互いに好き合っているなら考えましょう。まだ先の話ね」
「うん、分かったよ。だから姉様はルイス兄様と幸せになってね」
シータの一言に、何だか分からない感情が湧き上がって来て、私の目から涙が滝のように流れて来た。
私の奥底に彼女の記憶でも残っていたのだろうか、、、。
「リゼ、何も心配は要らない。あとはいい時代を作ることがオレたち王族と竜神王の勤めだ。先ずは明日、明後日をしっかり頑張ろう」
「ぼくも頑張る!!」
私は止まらない涙で頷く事しか出来なかった。
新しい竜神王兄弟の物語はもう始まっていたのね。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
57
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる