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本編
13 こんな弾けてブチ飛んだ手紙、ダメに決まってんだろうがああああ!
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――衝撃の新事実発覚に始まり、色気爆発のショック療法に終わった休日から一夜明けた翌日。
俺は実家への手紙を書こうとしていた。自由時間に調理場で。
なにゆえに調理場なのかというと、目利きスキルのない俺ですら、うっわあ高そう! なんて思うくらい豪華な部屋でインクポトリなんてしてみろ! 考えたくもないわっ!
ということで、白い石板で作られた調理台でレターセットを広げている。床も石板だから、どこにインクポトリしても布切れで拭き取れば、ほーら元通り! なんという安心感でしょう!
……妙な安心感に浸ってる場合じゃないな。
夕べは食後の後片付けを終えた辺りから、眠くて堪らなかった。ふらふらしながらシャワーを浴びて、そのままベッドに直行しちゃったんだよな……。疲れすぎだろ!
でも、嫌な夢も見ないで、ぐっすり深く眠れたからよかった。
……うーん、それにしても、どう書けばいいんだろ。衝撃の真事実をいきなりぶっ込むのはマズそうだし。必要最低限で、騎士団の宿舎に今住んでいないことを伝えるくらいか。うがー! ぐだぐだ悩むより、まず書いてみようそうしよう。
よれっとした羽ペンにインクを付けて、カリカリと。
『――父さん、母さん久しぶり。元気かな。
ロタとメルシャも元気にしてる?
俺は、元気だよ。凄く!
手紙と小包、送り返されちゃったのごめん。
今、実は宿舎に住んでいないんだよ。
ちょっと色々あって、連絡しそびれてた。
ちゃんと飯は食ってるから大丈夫。
当分の間、宿舎の方には手紙を送らないで欲しい。
落ち着いたら、俺から手紙を書くから。
それじゃ、また。』
「……近況が不鮮明すぎる!」
セルフでツッコミ入れるレベル。し、仕方ないだろ! ぼかさないとやばそうなワードばっかりなんだから! 馬鹿正直に書くとしたら、多分こうなる。
『ひさしぶり! 元気にしてるかな? 俺は超元気!
意味わかんない理由付けられて、騎士団クビになっちゃったんだよ!
びっくりだね!
落ち込んで酒場で飲んだくれてたら、凄い人に会った。
あの有名なカムロ・ディザートさんだよ!
なんでか分かんないけど気に入られて、雇ってもらえた!
でっかいお屋敷で、住み込み家政夫してまーす!』
……なんて手紙を送るのか? いやいやいやいや! さすがに弾けすぎだろ!
逆にビビり散らかす勢いで、心配されると思う。お前、頭は大丈夫か? 的な意味でな! 弟のロタ辺りなんか、爆笑するんじゃないかな。アイツ、笑いのツボが変なところにあるからなぁ……。
こんなトンデモ手紙は、ちょっとどうかと思う。
騎士団をクビになって、カムロさんと出会うくだりが秀逸すぎる。元気だってことをアピールしながら、気分に任せて馬鹿正直に考えるとこうなっちゃうんだよ! 俺に文才はない!
「……ダメだなこれ! 不鮮明な方がマシだ!」
俺はその手紙の案を、心のゴミ箱にクシャポイした。
――こんな弾けてブチ飛んだ手紙、ダメに決まってんだろうがああああ!
俺は実家への手紙を書こうとしていた。自由時間に調理場で。
なにゆえに調理場なのかというと、目利きスキルのない俺ですら、うっわあ高そう! なんて思うくらい豪華な部屋でインクポトリなんてしてみろ! 考えたくもないわっ!
ということで、白い石板で作られた調理台でレターセットを広げている。床も石板だから、どこにインクポトリしても布切れで拭き取れば、ほーら元通り! なんという安心感でしょう!
……妙な安心感に浸ってる場合じゃないな。
夕べは食後の後片付けを終えた辺りから、眠くて堪らなかった。ふらふらしながらシャワーを浴びて、そのままベッドに直行しちゃったんだよな……。疲れすぎだろ!
でも、嫌な夢も見ないで、ぐっすり深く眠れたからよかった。
……うーん、それにしても、どう書けばいいんだろ。衝撃の真事実をいきなりぶっ込むのはマズそうだし。必要最低限で、騎士団の宿舎に今住んでいないことを伝えるくらいか。うがー! ぐだぐだ悩むより、まず書いてみようそうしよう。
よれっとした羽ペンにインクを付けて、カリカリと。
『――父さん、母さん久しぶり。元気かな。
ロタとメルシャも元気にしてる?
俺は、元気だよ。凄く!
手紙と小包、送り返されちゃったのごめん。
今、実は宿舎に住んでいないんだよ。
ちょっと色々あって、連絡しそびれてた。
ちゃんと飯は食ってるから大丈夫。
当分の間、宿舎の方には手紙を送らないで欲しい。
落ち着いたら、俺から手紙を書くから。
それじゃ、また。』
「……近況が不鮮明すぎる!」
セルフでツッコミ入れるレベル。し、仕方ないだろ! ぼかさないとやばそうなワードばっかりなんだから! 馬鹿正直に書くとしたら、多分こうなる。
『ひさしぶり! 元気にしてるかな? 俺は超元気!
意味わかんない理由付けられて、騎士団クビになっちゃったんだよ!
びっくりだね!
落ち込んで酒場で飲んだくれてたら、凄い人に会った。
あの有名なカムロ・ディザートさんだよ!
なんでか分かんないけど気に入られて、雇ってもらえた!
でっかいお屋敷で、住み込み家政夫してまーす!』
……なんて手紙を送るのか? いやいやいやいや! さすがに弾けすぎだろ!
逆にビビり散らかす勢いで、心配されると思う。お前、頭は大丈夫か? 的な意味でな! 弟のロタ辺りなんか、爆笑するんじゃないかな。アイツ、笑いのツボが変なところにあるからなぁ……。
こんなトンデモ手紙は、ちょっとどうかと思う。
騎士団をクビになって、カムロさんと出会うくだりが秀逸すぎる。元気だってことをアピールしながら、気分に任せて馬鹿正直に考えるとこうなっちゃうんだよ! 俺に文才はない!
「……ダメだなこれ! 不鮮明な方がマシだ!」
俺はその手紙の案を、心のゴミ箱にクシャポイした。
――こんな弾けてブチ飛んだ手紙、ダメに決まってんだろうがああああ!
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