陰陽師と伝統衛士

花咲マイコ

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お盆時期の伝統衛士

15☆眠る夫婦神と復縁

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 威津那が闇落ちしていた時に、陛下がお作りになるものと逆のものを数人の日和を憎むものに渡したという恐ろしい呪詛の存在を聞かされた。

「一千年の昔だったら極刑ですよ!」
 李流はあまりのことに怒髪天だった。
 フーッ!フッー!と猫のように怒りで方で息をして荒い。
 阿倍野屋敷の異界には瑠香の香の力で眠らされて李流の夢見の能力と眠る威津那の異界にすんなりと入れた。
 異界に出る時は目が覚めれば異界で永遠に彷徨うようなことはない安全だとルカの神が保証をしてくれた。
「まぁまぁ、極刑に近い状態に転生は叶わないんだから、落ち着こう、李流くん、ね?」
 皇室愛の強い李流は怒りに興奮する背中を中務の宮にポンポンと優しく宥められて落ち着きを戻す。

《李流くんの怒りは咲羅子姐さんにそっくりね》
 橘は懐かしく嬉しそうにいう。

《その当時はそれほど未来が見えないほど闇堕ちしていたんだ……。》
 威津那の声は当時の事を思って悲しげで辛さが滲む。
《同じ気持ちを持つ者に同調したくて愚かなことをしたと思っているよ……死してからの未来は見えなかったからね、その時はその時と配慮も欠けていた。黒御足の力のせいで狂ってしまったためにね…申し訳なかった。》
 威津那は反省を本気でしているようだった。
「今回の呪詛が今後また起きたらと思うと怒りでどうにかなってしまいそうです!どうにかする方法はないんですか⁉︎」
 当時の事を反省してても現在進行形の責任や謝罪を李流はしてほしい。
 むしろ神に近いなら呪詛全て回収してほしい。
 
《君たちなら打ち勝つ未来は見えたから大丈夫だよ》

「なっ⁉︎」
 李流の怒りにまた油を注ぐ言い方をする威津那に、
《威津那さん!揶揄うのはダメよ!》

「……その言い方だと、俺たちがその呪詛をどうにかするしかないってことか?」

《そういう、勘の良いところ、高良くんに似てていいね。薫》
 威津那の姿は闇の中で声だけしか雰囲気が伝わらないが、いたずらっ子の子供のようなワクワク感が伝わってきて反省の色を感じない。
 心が筒抜けの空間だからだろうか?
「まぁ、な。てか、じーさん…反省してんのか?してねぇだろ?」
 李流の怒りの激しさに自分の怒りも冷めてしまっていたが下火だった怒りが沸々と湧きそうだ。

《君たち若者が未来を切り開くんだ。
良い夢を見られることを僕たちは望むよ…きっと陛下もそう願っておられるよ》

「それは充分承知しております!原因を作った人に言われたくないです!」
「李流くんが怒るなんて意外だね。僕は威津那が仕掛けた呪詛が楽しみで仕方がないんだけどね」
「中務の宮…っ!」
 李流くん複雑な絶望の涙目の戸惑う表情をした。
「あははは、冗談だよ。」
 ポンポンとまた背中を叩いて李流を落ち着かせる。

《うふふ、ほんと姐さんに似てるわね。》
 橘は李流の祖母のことを思う。
 とても大好きで大切な親友だったから、威津那が全ての縁を切ったせいで桜庭家とも接点がなくなってしまった。
 けれど、今や復縁し心から嬉しい。
《薫はスッと怒りを抑えて冷静になるところは高良似だけど、私と同じ半妖で親友同士が孫の代で繋がるなんて嬉しいわ。末長く仲良くよろしくしてね》
「は、はい。」
「あたりめーだろ!唯一無二の親友だ!」
 そう言って李流の首に腕を回して引き寄せて仲良しぶりを見せつけたが、力余って、腕で首を締めてしまった。
「グェ。夢の中でも力強い…夢から覚めそうだ。」
「あ、やべ」
「ちょうど時間ってことかもね残念だけど」
「じーさんと中務の宮って楽しむポイント似てるよな…」
「まぁ、遠い親戚みたいだしね、仕方ないかな」
 李流も薫もある程度中務の宮の性分を知っていたが、夢の中なので本性でてるなと思った。
 あととんでもない暴露までされたが目覚めた時には忘れるように威津那は細工した。

《……またなにかあったら、僕が今度は呼ぶかもしれないからその時こそ覚悟しておいてね》
 その声は陽気ではなく、慎重で真剣だった。
「……じーさん、不吉なこと言うなって……」
《ふふ、頑張って未来を勝ち取るんだよ。未来は明るいのだから…》
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