陰陽師と伝統衛士

花咲マイコ

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お盆時期の伝統衛士

16☆誓約のために★エンド★

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「そんな事件が起こってたのか……ハルの神と私は依代というよりも化身なのにそんな危険な時こそ私を使わせば霊的に生まれ変わらせることなど一瞬だったのに」
「霊的に生まれ変わるってのは、魂からの消滅を意味するんだよ。キリスト教の言霊では。ハルはそっち系だろ?私もだが……」
 神の化身たちがいない間にそんな事件があったことに晴房は不服そうに唸る。
「まぁ、ハルの神の計画のうちだとおもえばいいんじゃないかな?陛下に見届けられて御霊も幸せそうだったし」
 中務の宮はそういう。
「結果良ければ全てよしってところですな?」
「そのとおりだよ!」
 晴房と中務の宮は、「はっはっはー」と笑う。
「そういうところ気が合うんですね……」
 晴房の方が中務の宮を無意識に嫌厭しているが、根本的に似ているところがあると李流は思う。
「ハルの神のも言っていたが、特殊能力を持つ職員たちの気を引き締めるために仕組んだことだし、我々も物忌として休暇を楽しむことは難しくなったな。」
 瑠香は真剣にいう。
 神の化身だが所詮体は人の身、どうしても妻の墓参りには行きたいし、穢れを負うことは仕方がない。典掌寮ほど陰陽寮は穢れにきびしくない。むしろ穢れを請け負う寮でもある。
 穢れたら当然物忌しなくてはいけない。
 ゆるさに甘えるなと、ハルの神はいいたいのかもしれない。
 ハルの神の化身の晴房は子を成してしまった、神よりも人に近付いてしまったのだから。
 まだ穢れを知らない李流を依代にした方が宮中を守れるし晴房に同調しないと踏んだのだろうと瑠香は考察する。

「ハルの神が珍しくハルの行動を制限しなかったのは自由時間って事だ。今後はさらに引き締めて宮中をお守りするぞ。」
 瑠香はそう言って、晴房の背中を叩くと、晴房は眉根を寄せて瑠香を見る。
 困惑して泣きそうだ。
「せめて、子供が生まれるまで雪の元に……いたい。むしろ生まれたての我が子を抱きたい…」
「それは無理だな」
 瑠香は有無を言わせない強い調子だ。
「もうすぐ臨月なのにーーーーっ!」
と、宮中の神の化身ともあろう晴房は泣き叫ぶ。

「ハル様、先にその呪詛を探し出して霊的に生まれ変わらせば良いのではないでしょうか?」
 李流はそう進言した。
「ん?」
「そうすれば赤ちゃん抱けますよね?」
「ふむ。」
「やっちゃいましょうよ、さっさと宮中、陛下に仇なすものをさっさと霊的に片付けてしまいましょう?」
 李流の表情は笑顔が張り付いてかなりの怒りを抑え込んでいるのが晴房には分かった。
 そんな表情をする本気で怒る妻の雪や李流が怖く思う。
 容赦ないのだ。
 容赦なくていかないハルの神の化身が慄くほどに。
「まぁ、落ち着こう。向かう敵を打ち払う方が職員に負担ないからの。私は基本宮中と雪の家しか移動できぬしな」
「そうですか…残念です。」
 李流本当に残念そうにため息を吐く。
「だったら、宮中から離れないで呪詛は全て消滅させてくださいね?約束ですよ?」
「ああ、約束しよう。というか、私の役目だしな!はっ、はっはー」
 李流と義理父の晴房の会話を聞いていた薫は内心腹抱えて笑う。
《面白い親子だな!》
《ハルの神が李流くんを選んだのはこういうことだな、今後も頼もしいな》
《そうだな》
 と、親子は密かにテレパシーで語る。
「とにかく、いつも通り、それ以上に宮中の守りを強くしなくちゃね。それと、呪詛はのことだけど、学生の身の李流くん、薫くん篁くんにお願いして事前に押さえてもらった方がいいね。危険を予知察知占って取り除くのが陰陽寮の仕事でもあるからね。」
「はい。それはもちろん」
「私も陰陽寮を管理する中務の宮として、協力するからね」
 その一言に一番の力がこもってると一同思う。
「いや、それは遠慮…」
「陰陽寮を、管理する仕事の義務だからね!義務を怠った陰陽寮職員の、制裁を命じるのも私だからね!覚悟してね!」
と押し切られてしまった…
 この中で一番わがままで強情で有言実行なのは中務の宮なのだと改めて思う。
 次から襲い掛かるだろう呪詛がどのようなものなのか楽しみなだけの気がするが上が上の上司だから一同諦めることにした。
「まぁ、陛下への危険を早急に排除できるならそれに越したことはありませんよね」
 李流も中務の宮の命令は当然だが現実的に考えてそう結論だす。
「だな。これからも宮中守るために頑張ろうぜ!じいさんの嫌な予言も回避するくらいにさ!」
「ああ!」
 李流と薫はガシッと手を握って宮中の災難を防ぐことを誓い合う。
「私も混ぜてくれ!我が子を抱くために!」
 握り合った拳の上に晴房は両手で包む。
「どうしても子供を抱きたいんだな。気持ちはわかるが、私も手さらに気を引きめるよ」
 瑠香も、手を重ねる。
 中務の宮もニコニコして重ねて
「これは陛下をお守りするための誓約うけいだね。神の化身二人あるのだから強い誓約だ。呪詛に負けないように頑張ろ!」
 えいえいおー!気合いを入れて団結力を強めるのだった。

☆☆☆

「誓約ってなんだ?オヤジ」
「呪詛に勝てたら、さらなる神の守護が約束されるが、負けたら誓約を結んだものたちの命が代償にされるということかな。負けた時の言霊はないがそういうことだ」
「呪詛よりこわいな…」
「神との誓い、賭け事だからな……ハルの神はそれを賭けさせたかったらしいしな」
 審神者の瑠香は知っていたようだ。
「ま、勝てばいいってことだな!頑張ろうぜ李流!」
 李流は顎に手を当てて難しい顔をして考え込んでいた。
「……賭け事って品がない気が……」
「そこにこだわるんか⁉︎」
 薫は親友の新たな一面をどんどん知るのであった。
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