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117話 アリシア参戦

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 私はカインに『ファースト・キッス・ヒール』を使用したけれど、実はそれはセカンドキスだった。
 黙っていれば良かったのに、私はうっかり口を滑らせてしまう。

「ど、どういうことだよ! イザベラ嬢!!」

 私とファーストキスをしたと思ったら、実はセカンドキスだったと言われたカイン。
 困惑している様子だ。

「ふ、ふざけるなぁ! どこのどいつだ、俺のイザベラを誑かしたのは!」

「イザベラ殿に限ってそのようなことは……。おそらく、不埒な輩に襲われてしまったのでしょう!」

 私とカインのキスに動揺しつつも、治療行為だったとしてスルーに努めたエドワード殿下とオスカー。
 そこに追い打ちを受け、動揺が極まっている。

「僕だけのイザベラさんだったのに……。許すまじ……」

 静かながらも、闇の瘴気が増大しているフレッド。
 場はシッチャカメッチャカだ。

「み、みなさま、どうか落ち着いてください。私の話を聞いてくださ――」

「イザベラ様」

 必死に場を収めようとする私だったが、そこへ新たな登場人物が現れる。
 それは、見覚えのある一人の少女だった。
 他の誰でもない、アリシアさんだ。
 この『ドララ』世界のヒロインであり、私の親友でもある。
 そんな彼女は、なぜか一人でこちらへと近づいてくる。

「アリシアさん!?」

 私は思わず驚きの声を上げる。
 どうして彼女がここにいるのだろう。

「アリシアさん、あなたどうやってここへ来たの?」

「話は後です、イザベラ様。今はそれよりもするべきことがあります」

 アリシアさんが真剣な表情で言う。
 確かに彼女の言う通り、まずはこの状況を収めることが先決だ。
 エドワード殿下、カイン、オスカーは、とりあえず放っておこう。
 取り乱しているだけだから。
 何よりもまず対処するべきは、フレッドだ。
 闇の瘴気が増幅してしまっている。
 その瘴気は、広がり続けて今やエドワード殿下達にまで及んでいる。
 悪い影響がないといいけれど……。
 まぁ、まずはフレッドが先ね。

「アリシアさんの言う通りだわ。先にするべきことがある。私なんかの光魔法じゃ、あんなに強い闇は祓えなかったの」

 私はアリシアさんにそう説明する。
 いくら『ドララ』の知識を持つ転生者とはいえ、何でもできるわけじゃない。
 光魔法は、頑張って練習してもなかなか上達しなかったのだ。
 ここは正ヒロインの出番である。

「アリシアさん、お願い――むぐっ!?」

 私はアリシアさんに頼もうとしたのだが、それより先に彼女に抱き着かれた。
 そして、そのまま唇を奪われてしまったのだった。
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