118 / 241
118話 消毒
しおりを挟む
エドワード殿下、カイン、オスカー、フレッド。
みんなで大騒ぎしているところに駆けつけてくれたアリシアさん。
彼女がこの場を収める救いの女神になってくれるのかと思ったのだけれど――。
「むぐぅ……ん~、ん……ぷはぁ!」
アリシアさんは、しばらくキスを続けた後にようやく離れてくれる。
「えっと……アリシアさん? これは一体……」
私は呆然としながら尋ねる。
いきなりキスをされて思考停止状態なのだ。
「ごめんなさい、イザベラ様。でも、こうしないといけなかったんです」
アリシアさんは申し訳なさそうな顔をして謝った。
「どういうことなの?」
アリシアさんのことだ。
何か深い理由があるに違いない。
彼女は希少な光魔法の使い手だし、入学後の頑張りで座学とかでも好成績を収めているからね。
『ドララ』のゲーム知識があるのに四苦八苦している私なんかとは違うのだ。
「だって、イザベラ様に汚らしい男の唾なんて付いてほしくありませんもの。だから、私が消毒したのです」
「えっ?」
アリシアさんの言葉に戸惑う私。
汚らしい男?
ひょっとしてカインのこと?
「カインさんとフレッドさんのことです。私が着替えている間に、よりにもよってイザベラ様の唇を奪うだなんて許せません! 私のイザベラ様なのに……」
アリシアさんは怒った顔で言った。
カインとフレッドは、特に不潔なわけではない。
むしろ、かなりの清潔感がある。
なにせ、『ドララ』の攻略対象のイケメンだからね。
「でも、アリシアさんが気にするようなことじゃないと思うのだけれど……」
貴族家の淑女が、婚約者でもない男とキスをする。
しかも、一人だけではなく二人も。
どう考えてもアウトである。
とはいえ、それは私の両親などアディントン侯爵家の関係者や、あるいはその上位者――王族などから言われることである。
私とアリシアさんは親友だけれど、誰とキスをするかどうかを深く突っ込まれるのには違和感を覚える。
「イザベラ様はわたしのものです。ほら、見てください。既にわたしとイザベラ様は半ば一体となったようなものですよ」
アリシアさんがうっとりとした表情で告げる。
彼女は自分の身を抱きしめるかのように手を回している。
何だろう。
嫌な予感しかしない。
「私とアリシアさんが一体? どういう意味――って、ああっ!!」
そこで私はようやく気付いた。
彼女が着ているドレスは、私のお古なのだ。
「そ、それは私のドレスよね? どこでそれを……?」
私は動揺しつつも、アリシアさんにそう問いかけたのだった。
みんなで大騒ぎしているところに駆けつけてくれたアリシアさん。
彼女がこの場を収める救いの女神になってくれるのかと思ったのだけれど――。
「むぐぅ……ん~、ん……ぷはぁ!」
アリシアさんは、しばらくキスを続けた後にようやく離れてくれる。
「えっと……アリシアさん? これは一体……」
私は呆然としながら尋ねる。
いきなりキスをされて思考停止状態なのだ。
「ごめんなさい、イザベラ様。でも、こうしないといけなかったんです」
アリシアさんは申し訳なさそうな顔をして謝った。
「どういうことなの?」
アリシアさんのことだ。
何か深い理由があるに違いない。
彼女は希少な光魔法の使い手だし、入学後の頑張りで座学とかでも好成績を収めているからね。
『ドララ』のゲーム知識があるのに四苦八苦している私なんかとは違うのだ。
「だって、イザベラ様に汚らしい男の唾なんて付いてほしくありませんもの。だから、私が消毒したのです」
「えっ?」
アリシアさんの言葉に戸惑う私。
汚らしい男?
ひょっとしてカインのこと?
「カインさんとフレッドさんのことです。私が着替えている間に、よりにもよってイザベラ様の唇を奪うだなんて許せません! 私のイザベラ様なのに……」
アリシアさんは怒った顔で言った。
カインとフレッドは、特に不潔なわけではない。
むしろ、かなりの清潔感がある。
なにせ、『ドララ』の攻略対象のイケメンだからね。
「でも、アリシアさんが気にするようなことじゃないと思うのだけれど……」
貴族家の淑女が、婚約者でもない男とキスをする。
しかも、一人だけではなく二人も。
どう考えてもアウトである。
とはいえ、それは私の両親などアディントン侯爵家の関係者や、あるいはその上位者――王族などから言われることである。
私とアリシアさんは親友だけれど、誰とキスをするかどうかを深く突っ込まれるのには違和感を覚える。
「イザベラ様はわたしのものです。ほら、見てください。既にわたしとイザベラ様は半ば一体となったようなものですよ」
アリシアさんがうっとりとした表情で告げる。
彼女は自分の身を抱きしめるかのように手を回している。
何だろう。
嫌な予感しかしない。
「私とアリシアさんが一体? どういう意味――って、ああっ!!」
そこで私はようやく気付いた。
彼女が着ているドレスは、私のお古なのだ。
「そ、それは私のドレスよね? どこでそれを……?」
私は動揺しつつも、アリシアさんにそう問いかけたのだった。
0
お気に入りに追加
2,167
あなたにおすすめの小説

私に婚約者がいたらしい
来栖りんご
恋愛
学園に通っている公爵家令嬢のアリスは親友であるソフィアと話をしていた。ソフィアが言うには私に婚約者がいると言う。しかし私には婚約者がいる覚えがないのだが…。遂に婚約者と屋敷での生活が始まったが私に回復魔法が使えることが発覚し、トラブルに巻き込まれていく。
【完結】悪役令嬢は婚約者を差し上げたい
三谷朱花
恋愛
アリス・デッセ侯爵令嬢と婚約者であるハース・マーヴィン侯爵令息の出会いは最悪だった。
そして、学園の食堂で、アリスは、「ハース様を解放して欲しい」というメルル・アーディン侯爵令嬢の言葉に、頷こうとした。

悪役令嬢がヒロインからのハラスメントにビンタをぶちかますまで。
倉桐ぱきぽ
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生した私は、ざまぁ回避のため、まじめに生きていた。
でも、ヒロイン(転生者)がひどい!
彼女の嘘を信じた推しから嫌われるし。無実の罪を着せられるし。そのうえ「ちゃんと悪役やりなさい」⁉
シナリオ通りに進めたいヒロインからのハラスメントは、もう、うんざり!
私は私の望むままに生きます!!
本編+番外編3作で、40000文字くらいです。
⚠途中、視点が変わります。サブタイトルをご覧下さい。
訳ありな家庭教師と公爵の執着
ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝名門ブライアン公爵家の美貌の当主ギルバートに雇われることになった一人の家庭教師(ガヴァネス)リディア。きっちりと衣装を着こなし、隙のない身形の家庭教師リディアは素顔を隠し、秘密にしたい過去をも隠す。おまけに美貌の公爵ギルバートには目もくれず、五歳になる公爵令嬢エヴリンの家庭教師としての態度を崩さない。過去に悲惨なめに遭った今の家庭教師リディアは、愛など求めない。そんなリディアに公爵ギルバートの方が興味を抱き……。
※設定などは独自の世界観でご都合主義。ハピエン🩷
※稚拙ながらも投稿初日(2025.1.26)からHOTランキングに入れて頂き、ありがとうございます🙂 最高で26位(2025.2.4)。
※断罪回に残酷な描写がある為、苦手な方はご注意下さい。
悪役令嬢に転生しましたが、行いを変えるつもりはありません
れぐまき
恋愛
公爵令嬢セシリアは皇太子との婚約発表舞踏会で、とある男爵令嬢を見かけたことをきっかけに、自分が『宝石の絆』という乙女ゲームのライバルキャラであることを知る。
「…私、間違ってませんわね」
曲がったことが大嫌いなオーバースペック公爵令嬢が自分の信念を貫き通す話
…だったはずが最近はどこか天然の主人公と勘違い王子のすれ違い(勘違い)恋愛話になってきている…
5/13
ちょっとお話が長くなってきたので一旦全話非公開にして纏めたり加筆したりと大幅に修正していきます
5/22
修正完了しました。明日から通常更新に戻ります
9/21
完結しました
また気が向いたら番外編として二人のその後をアップしていきたいと思います

【完結】毒殺疑惑で断罪されるのはゴメンですが婚約破棄は即決でOKです
早奈恵
恋愛
ざまぁも有ります。
クラウン王太子から突然婚約破棄を言い渡されたグレイシア侯爵令嬢。
理由は殿下の恋人ルーザリアに『チャボット毒殺事件』の濡れ衣を着せたという身に覚えの無いこと。
詳細を聞くうちに重大な勘違いを発見し、幼なじみの公爵令息ヴィクターを味方として召喚。
二人で冤罪を晴らし婚約破棄の取り消しを阻止して自由を手に入れようとするお話。

無事にバッドエンドは回避できたので、これからは自由に楽しく生きていきます。
木山楽斗
恋愛
悪役令嬢ラナトゥーリ・ウェルリグルに転生した私は、無事にゲームのエンディングである魔法学校の卒業式の日を迎えていた。
本来であれば、ラナトゥーリはこの時点で断罪されており、良くて国外追放になっているのだが、私は大人しく生活を送ったおかげでそれを回避することができていた。
しかしながら、思い返してみると私の今までの人生というものは、それ程面白いものではなかったように感じられる。
特に友達も作らず勉強ばかりしてきたこの人生は、悪いとは言えないが少々彩りに欠けているような気がしたのだ。
せっかく掴んだ二度目の人生を、このまま終わらせていいはずはない。
そう思った私は、これからの人生を楽しいものにすることを決意した。
幸いにも、私はそれ程貴族としてのしがらみに縛られている訳でもない。多少のわがままも許してもらえるはずだ。
こうして私は、改めてゲームの世界で新たな人生を送る決意をするのだった。
※一部キャラクターの名前を変更しました。(リウェルド→リベルト)

転生令嬢の涙 〜泣き虫な悪役令嬢は強気なヒロインと張り合えないので代わりに王子様が罠を仕掛けます〜
矢口愛留
恋愛
【タイトル変えました】
公爵令嬢エミリア・ブラウンは、突然前世の記憶を思い出す。
この世界は前世で読んだ小説の世界で、泣き虫の日本人だった私はエミリアに転生していたのだ。
小説によるとエミリアは悪役令嬢で、婚約者である王太子ラインハルトをヒロインのプリシラに奪われて嫉妬し、悪行の限りを尽くした挙句に断罪される運命なのである。
だが、記憶が蘇ったことで、エミリアは悪役令嬢らしからぬ泣き虫っぷりを発揮し、周囲を翻弄する。
どうしてもヒロインを排斥できないエミリアに代わって、実はエミリアを溺愛していた王子と、その側近がヒロインに罠を仕掛けていく。
それに気づかず小説通りに王子を籠絡しようとするヒロインと、その涙で全てをかき乱してしまう悪役令嬢と、間に挟まれる王子様の学園生活、その意外な結末とは――?
*異世界ものということで、文化や文明度の設定が緩めですがご容赦下さい。
*「小説家になろう」様、「カクヨム」様にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる