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季節は廻り秋となった、だが残暑厳しい日々は続く。
ストーカー被害にあっていた姉弟だったが、夏の終わりには気味悪い手紙が投函されることが無くなっていた。
引っ越すことも考えたが学生の身では資金はないし、これ以上親の脛を齧るのも気が引けた。
「きっと田舎にもどれと言われるしね」
「あり得るな」
ちゃんと卒業をしたかったし、被害者側が一方的に困窮するのも悔しいと思ったのだ。

「なによりヲタ活したいからね!」
「……やっぱそれかよ、気を付けてくれよな」
早朝から男装して張り切る姉さとみは何処から見ても男だった。とあるゲームキャラのコスプレ併せとやらに参加するらしい。さすがに衣装は着ていないが胸は潰して肩パットを仕込んだシャツを着用していた。

「なんだっけ、アイドルなんちゃらの」
「架空アイドルのゲームキャラだよ、私のコスは赫神リョウタ!」
「うわぁ……中二っぽい」
赤と黒のグラデのウィッグを出してこれを着用して写真を撮るのだと楽しそうに笑う。一人での活動ではないというので弟は許可を出した。男らしさ全開の彼女をワザワザ襲うとも思えなかった。サングラスの下に隠れているが赤いコンタクトをつけて濃い目のメイクをしていた”さとみ”は別人である。

「15時には帰るからね」
「うん、気を付けて。俺はバイトの日だから20時頃帰る」
さとみは元気に衣装を詰め込んだトランクをガラガラと引いて駅へと向かった。駅にはサークル仲間でコス仲間の友人が到着していた。

「うえーい!久々の併せ会だねぇ!てか、あんた半分くらい仕上がってんじゃない」
「えへ、私は不器用だからさベースくらい作っておきたかったんだ」
白いシャツにジーンズの姿はコスプレには見えない、悪目立ちがしない程度には抑えていた。

「でもさイケメンが過ぎて注目されてない?」
同行する友人は背が低いので女子モブ参加とカメコを担当する、荷物の多さはあるがかなり地味である。
「そっかな、サングラスは意外と目立つのかも」
カラコンだけにしておけば良かったと彼女はいまさら後悔していた。


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