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はじまりの終わりと、はじまりの始まり
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ーーー“明けない魔の森”に光の柱が現れた。
その報告は冒険者ギルドから齎された。
この頃の冒険者ギルドはギルマスであるコジモを筆頭に折に触れては“明けない魔の森”に足を運び、変化を敏感に観察していた。
元々が魔獣達の楽園である魔の森はスタンピードなどの様々な危険を孕んでいる。
“明けない魔の森”で起こった爆発が生態系に変化を与えていないか調査をするのは冒険者ギルドの重要な仕事だった。
そんな中の光の柱の出現はポーレット公爵家にとっても落ち着いてはいられない情報だった。
もしかして・・・。
未知の情報の中にも希望を見たヴァルトは、父・テオルドに許可を得た後にヒューゴや子供達に声を掛けて“明けない魔の森”に向かった。
実はこれまでも何度か泉を目指し魔の森に入った事があった。
しかし、まるで拒否されるように辿り着く事なく森の入り口に戻される事が続いていたのだ。
やっぱり、今回も・・・。
不安な気持ちを押し殺すヴァルトの背後で子供達が嬉しそうに笑っている。
イオリが帰ってくると信じて疑わない子供達に勇気をもらい従者2人とヒューゴ達を引き連れて“明けない魔の森”に向かった。
ポーレット公爵家の屋敷からも見えていた光の柱は近づけば近づく程に輝きを増していた。
“明けない魔の森”の入り口には多くの冒険者達が集まり、一様に空を見上げている。
その先頭にいたのがギルマス・コジモとサブマス・エルノールだった。
2人の表情からも戸惑いを感じられたヴァルトは挨拶もそこそこに“明けない魔の森”の奥を見据えた。
ーーー行こうか。
そう呟いたヴァルトの頭上を真っ赤な塊が通り過ぎた。
ピチチチ!
それは小さく何度も旋回する真っ赤な小鳥・・・ソルが、まるで着いて来いと言っているかのようだった。
誘導されるがままに“明けない魔の森”に足を進めたヴァルト達を見送ったギルマスとサブマスは柄にもなく祈った。
ヴァルト達は不思議な気持ちに包まれていた。
警戒していたにも関わらず、歩いても歩いても魔獣に会う事がない。
それどころか木々や岩が避けていく様に道を作り、ただただ森の中を一直線に進んでいる感覚だった。
ヴァルトは焦る気持ちを力に足早に前進していく。
魔の森の異常性を感じていたのはヴァルトだけじゃない。
1人1人が、今日は何かが違うとハッキリと理解していた。
ソルが誘導する先に目が眩む様な光が見えた時。
押し殺していた希望が確信に変わっていた。
ーーーイオリ!!
飛び出した木々の先の見慣れた泉。
一帯を光で覆われた、その中心に真っ黒な衣装を身に纏った青年と小さい小さい子狼が真綿の様な光に包まれて浮かんでいた。
ーーーこれはもう、絶対神の思し召しでしょう。
従魔のルチアを言葉にヴァルトは何も言えずに、ただただ頷いた。
その頬は涙で濡れていたのだった。
_________
その報告は冒険者ギルドから齎された。
この頃の冒険者ギルドはギルマスであるコジモを筆頭に折に触れては“明けない魔の森”に足を運び、変化を敏感に観察していた。
元々が魔獣達の楽園である魔の森はスタンピードなどの様々な危険を孕んでいる。
“明けない魔の森”で起こった爆発が生態系に変化を与えていないか調査をするのは冒険者ギルドの重要な仕事だった。
そんな中の光の柱の出現はポーレット公爵家にとっても落ち着いてはいられない情報だった。
もしかして・・・。
未知の情報の中にも希望を見たヴァルトは、父・テオルドに許可を得た後にヒューゴや子供達に声を掛けて“明けない魔の森”に向かった。
実はこれまでも何度か泉を目指し魔の森に入った事があった。
しかし、まるで拒否されるように辿り着く事なく森の入り口に戻される事が続いていたのだ。
やっぱり、今回も・・・。
不安な気持ちを押し殺すヴァルトの背後で子供達が嬉しそうに笑っている。
イオリが帰ってくると信じて疑わない子供達に勇気をもらい従者2人とヒューゴ達を引き連れて“明けない魔の森”に向かった。
ポーレット公爵家の屋敷からも見えていた光の柱は近づけば近づく程に輝きを増していた。
“明けない魔の森”の入り口には多くの冒険者達が集まり、一様に空を見上げている。
その先頭にいたのがギルマス・コジモとサブマス・エルノールだった。
2人の表情からも戸惑いを感じられたヴァルトは挨拶もそこそこに“明けない魔の森”の奥を見据えた。
ーーー行こうか。
そう呟いたヴァルトの頭上を真っ赤な塊が通り過ぎた。
ピチチチ!
それは小さく何度も旋回する真っ赤な小鳥・・・ソルが、まるで着いて来いと言っているかのようだった。
誘導されるがままに“明けない魔の森”に足を進めたヴァルト達を見送ったギルマスとサブマスは柄にもなく祈った。
ヴァルト達は不思議な気持ちに包まれていた。
警戒していたにも関わらず、歩いても歩いても魔獣に会う事がない。
それどころか木々や岩が避けていく様に道を作り、ただただ森の中を一直線に進んでいる感覚だった。
ヴァルトは焦る気持ちを力に足早に前進していく。
魔の森の異常性を感じていたのはヴァルトだけじゃない。
1人1人が、今日は何かが違うとハッキリと理解していた。
ソルが誘導する先に目が眩む様な光が見えた時。
押し殺していた希望が確信に変わっていた。
ーーーイオリ!!
飛び出した木々の先の見慣れた泉。
一帯を光で覆われた、その中心に真っ黒な衣装を身に纏った青年と小さい小さい子狼が真綿の様な光に包まれて浮かんでいた。
ーーーこれはもう、絶対神の思し召しでしょう。
従魔のルチアを言葉にヴァルトは何も言えずに、ただただ頷いた。
その頬は涙で濡れていたのだった。
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