続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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はじまりの終わりと、はじまりの始まり

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「フフフ。
 あの後、凄い大変だったんだぞ。
 光の柱が消え去っても、お前達は目覚めないからヒューゴやマルクルが交互におぶって帰ったんだ。」

 ヴァルトはベットで横になり目を瞑ったイオリに語りかけた。
 4年間、眠りについたまま起きる事のないイオリは現在、ポーレット公爵家の邸に用意された客室で守られていた。

 毎日、様子を見に来るのはヴァルトだけじゃない。
 当主であるテオルドからオルガ夫人、長男のニコライに留まらず筆頭執事のクリストフや庭師のボーまでが、早く目覚めるようにとイオリに語りかけていた。

「帰れば帰るでギルマスは鼻水流して泣き出すし、叔父上・・・国王がポーレットに来るって騒いで、それなら自分達もと王子達やザックス・ヒル将軍まで押しかけて来そうだったんだ。
 それで、宰相・・・ターナー侯爵が発狂したらしい。」

 ヴァルトはベット脇に置かれた花瓶に生けられた花を指で弾くと顔を綻ばした。

「お前の家族も元気にしてるよ。
 双子は先日、依頼を受けて2人だけでアンティティラに向かったよ。
 ナギがいれば一飛びで行けるとパティが剥れていたが、同行するアウラが寂しがるとスコルが言ったら納得して出て行った。
 今頃はアンティティラの街を楽しんでいるだろう。」

 毎回、わちゃわちゃしている双子の出発を思い出し、ヴァルトは吹き出した。

「ヒューゴなら父上の指名依頼で兄上とデザリアに向かっていて、今頃は帰りの船の中だ。
 どうやら、兄上とデザリアの貴族令嬢の婚約が決まるらしい。
 母上が手ぐすね引いて待ってるよ。」

 最近、ニコライが相手を決めた事で機嫌の良い母オルガの標的が自分に移り始めている事は黙っておいたヴァルトだった。

「ナギは王都でココ嬢の本の制作の手伝いをしている。
 まぁ、毎日ポーレットに帰ってくるから忙しないもんだ。
 ギル兄様もディビットもお前が起きないから婚約者を待たせ結婚を延期してるんだぞ。
 早く起きてやれよ。
 オーブリー嬢とココ嬢が可哀想だろう。」

 ヴァルトはイオリの額を優しく小突くと、クスッと笑った。

「そうだ。
 ニナは魔法の特訓をしながら“日暮れの暖炉”で給仕の手伝いをしているよ。
 ちびっ子ベルと2人で人気の看板娘だと騒がれてる。
 店主のダンが厳しい目で客を威嚇すると、妻のローズが愚痴を言っていたぞ。」

 ヴァルトは苦笑するとイオリの隣で丸くなっている小さなゼンを抱き上げて優しく撫でた。

「クロムスが寂しがってるぞ。
 遊んでやってくれ。」

 イオリの顔の近くにゼンを戻すとヴァルトは2人を見下ろし微笑んだ。

「じゃあな。また明日。」

 ヴァルトが静かに部屋を出て行った後、優しく吹いた風に真っ白な毛がサワサワと撫でられた。

 ピクピクと耳を動かした小さな子狼は尻尾をプンプンと振ると小さな欠伸をしてパチパチ瞳を瞬いた。
 
 その美しいサファイア色の瞳に最初に写ったのは大好きな大好きな相棒だった。

 ペロペロ

 嬉しそうに頬擦りをすると顔を舐め回す子狼に誘われる様に青年の瞳が、ゆっくりと開いた。



 青年・・・イオリの目覚めを祝福する様に世界各地で降り注いだ光の玉が大騒ぎになった話は、また別の時に・・・。


『続・拾ったものは大切にしましょう~子狼に気に入られた男の転移物語』 完
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ーご挨拶ー

 最後まで御覧頂きました皆様に感謝申し上げます。
 
 2021年6月10日より投稿開始致しました本作品は、この話数をもちまして完結致しました。
 長い間お付き合い頂き有難う御座いました。

 やっとの完結を迎えまして安堵しております。

 “神の愛し子”としての力を失ったかも・・・なイオリでありますが、ここで一度休憩を頂きます。
 構想はあるのですが、未だ考えが纏まらずといったところです。
 
 最後にお知らせになりますが、明日より新作の投稿開始を予定しております。
 龍に愛された少女が王宮で騒ぎを起こす御話となっております。

 題名『溜息だって吐きたくなるわっ!~100賢人仕込みの龍姫は万年反抗期~』
 
 お時間ありましたら覗いてみてください。

 再び、イオリが皆様に会える日を願いまして・・・
 ここまで、お時間を頂戴しました事に重ねてお礼申し上げます。

 作者・ぽん
 

 
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