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旅路 〜グランヌス・王宮〜
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「母上っ!
父上は?」
母である、ソウビ王妃が部屋から出てきたのを見てムネタカが走り寄った。
「大丈夫だ。
一度、目を覚ました際に、私をソウビと呼ばれた。
体が重いとも申された。
今は再び、眠りにつかれたところだ。」
嬉しそうな母にムネタカは安堵して、ホッと肩を撫で下ろした。
「良かったです。本当に、良かった。」
「ムネタカ、戦いは終わってはいないぞ。
弟と妹達を・・・国を取り戻すのだ。」
「はい。」
力強い瞳の息子に成長を感じ、ソウビ王妃は微笑んだ。
「イオリ殿は如何している?」
ソウビ王妃は、昨夜イオリの肩から飛び立った真紅の小鳥が成獣と変化し、夫に光り輝く玉を降らせるのを、呆然として見つめていた。
禍々しく怒りを纏った夫に悲しさと虚しさを感じていたソウビ王妃にとって、実に幻想的な光景だった。
それまでの憑き物が落ちたかのように、眠る夫を見下ろした、優しく微笑むイオリを思わず祈った程だった。
夫の魅了が解けたと確信できた今、するべき事はまだまだある。
「イオリ殿は如何した?」
「庭で朝食を取られています。」
「庭で?」
訝しげる母にムネタカはクスッと笑った。
「イオリさん、料理も上手なんです。
それも超一流の。
“ルーシュピケ”からグランヌスまで、食べた事のない物ばかりを頂きました。」
「・・・ほう。
確かに菓子も美味だったな。」
2人は微笑み合うと、連れ立って庭を目指した。
「「「「キャハハハハ!!」」」」
高貴な後宮の庭を子供達が楽しそうに走り回っている。
「待て待て~!」
それを真っ赤な長い髪をクネらせた男が満面の笑みで追いかけていた。
「・・・何じゃこれは?」
「・・・何でしょう?」
王妃と王子が現れて、侍女達が慌てて走り寄ってきた。
「これは何事じゃ?」
王妃の問いに侍女達が困ったように口籠った。
「あの者の正体は分かりかねますが、頭目が心配いらないと申されますので・・・。」
隠密の長である父が言うのなら問題ないだろうと、近づいた2人は男が実に大男だと言う事に気がついた。
肩に乗せられたニナが猫のようだった。
「イオリさん。
お客様ですか?」
そう尋ねたムネタカも男の正体を聞き、ど肝を抜かされる事になる。
王妃共々、開いた口が閉まらずにカンスケ爺やと同じくグランヌスの王族としてラーヴァの出現に悔いいる思いを滲ませた。
「もういいよ・・・。」
何度も謝られ、流石に居心地が悪くなってきたのかラーヴァは大きな体を隠すようにイオリの後に身を縮まらせた。
そんな男を見てムネタカは自国の守護者が優しい性格なのだと嬉しくなったのだった。
「火龍様といえば、ドワーフ達に会わせてあげたいものですね。」
賑やかな4人のドワーフを想い、ムネタカが微笑んだ。
「「「「あぁぁぁ!!」」」」
ムネタカの一言で子供達が思い出したように騒ぎ出した。
「ボク、迎えに行ってくる!!」
「あぁー、待て待て!
1人で行くな。
俺も行く。」
暴走しそうなナギをヒューゴが捕まえた。
これから、何が起ころうとしているのか分からないラーヴァはイオリの肩をギュッと掴んだ。
父上は?」
母である、ソウビ王妃が部屋から出てきたのを見てムネタカが走り寄った。
「大丈夫だ。
一度、目を覚ました際に、私をソウビと呼ばれた。
体が重いとも申された。
今は再び、眠りにつかれたところだ。」
嬉しそうな母にムネタカは安堵して、ホッと肩を撫で下ろした。
「良かったです。本当に、良かった。」
「ムネタカ、戦いは終わってはいないぞ。
弟と妹達を・・・国を取り戻すのだ。」
「はい。」
力強い瞳の息子に成長を感じ、ソウビ王妃は微笑んだ。
「イオリ殿は如何している?」
ソウビ王妃は、昨夜イオリの肩から飛び立った真紅の小鳥が成獣と変化し、夫に光り輝く玉を降らせるのを、呆然として見つめていた。
禍々しく怒りを纏った夫に悲しさと虚しさを感じていたソウビ王妃にとって、実に幻想的な光景だった。
それまでの憑き物が落ちたかのように、眠る夫を見下ろした、優しく微笑むイオリを思わず祈った程だった。
夫の魅了が解けたと確信できた今、するべき事はまだまだある。
「イオリ殿は如何した?」
「庭で朝食を取られています。」
「庭で?」
訝しげる母にムネタカはクスッと笑った。
「イオリさん、料理も上手なんです。
それも超一流の。
“ルーシュピケ”からグランヌスまで、食べた事のない物ばかりを頂きました。」
「・・・ほう。
確かに菓子も美味だったな。」
2人は微笑み合うと、連れ立って庭を目指した。
「「「「キャハハハハ!!」」」」
高貴な後宮の庭を子供達が楽しそうに走り回っている。
「待て待て~!」
それを真っ赤な長い髪をクネらせた男が満面の笑みで追いかけていた。
「・・・何じゃこれは?」
「・・・何でしょう?」
王妃と王子が現れて、侍女達が慌てて走り寄ってきた。
「これは何事じゃ?」
王妃の問いに侍女達が困ったように口籠った。
「あの者の正体は分かりかねますが、頭目が心配いらないと申されますので・・・。」
隠密の長である父が言うのなら問題ないだろうと、近づいた2人は男が実に大男だと言う事に気がついた。
肩に乗せられたニナが猫のようだった。
「イオリさん。
お客様ですか?」
そう尋ねたムネタカも男の正体を聞き、ど肝を抜かされる事になる。
王妃共々、開いた口が閉まらずにカンスケ爺やと同じくグランヌスの王族としてラーヴァの出現に悔いいる思いを滲ませた。
「もういいよ・・・。」
何度も謝られ、流石に居心地が悪くなってきたのかラーヴァは大きな体を隠すようにイオリの後に身を縮まらせた。
そんな男を見てムネタカは自国の守護者が優しい性格なのだと嬉しくなったのだった。
「火龍様といえば、ドワーフ達に会わせてあげたいものですね。」
賑やかな4人のドワーフを想い、ムネタカが微笑んだ。
「「「「あぁぁぁ!!」」」」
ムネタカの一言で子供達が思い出したように騒ぎ出した。
「ボク、迎えに行ってくる!!」
「あぁー、待て待て!
1人で行くな。
俺も行く。」
暴走しそうなナギをヒューゴが捕まえた。
これから、何が起ころうとしているのか分からないラーヴァはイオリの肩をギュッと掴んだ。
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