続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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旅路 〜グランヌス・王宮〜

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 火龍とドワーフの縁については、グランヌスが建国される前から話す必要がある。

 当時、静かに暮らしていた火龍のラーヴァは火山が人に荒らされる事を良く思っていなかった。
 
 荒ぶる風に沸き立つマグマ、植物も育たず生きとし生ける物が近寄ろうとしない世界。

 ラーヴァは、その静かな土地を愛していた。
 
 ラーヴァは、決して一人ぼっちではなかった。
 龍族として、各地に散らばる仲間がいた。
 数十年に1度にでも、何処かを寝ぐらとする仲間と会えば、それで良かった。

 それが、ある日を境に1人、また1人と火山を登ってくる人間達が現れた。

『こんな、地の果てに物好きがいたものだ。』

 この時は、まさか自分のお膝元で人間達が住み着き、国を造ろうと考えているなど思ってもいなかったラーヴァである。
 
 徐々に増えていく人の量にうんざりして、山頂の火口から咆哮して威嚇したりもした。
 慄く、人々を見て面白かった。
 ラーヴァが笑えば、火山が揺れた。

 人は、火山での困難な環境、そして火龍としてのラーヴァの存在を“試練”という言葉で自分達に苦行をかした。

 ラーヴァには意味が分からなかった。
 
 ラーヴァは火龍として火山を好んだ。
 生き物というのは、好んだ環境にいつくものだ。
 にも関わらず、人間達は困難を望んだ。

『人間とは実に馬鹿な生き物だ。』

 ラーヴァは静かな環境を乱されるのが嫌だった。
 それでも、人間は火山に住み着き、時にはラーヴァに戦いを挑んできたりした。

『私は、静かに暮らしたいんだ!
 ここで暮らすのなら、せめて私に挑むのはやめないさい。
 決して、お前達には敵わないのだから。』

 重症を負い、逃げ帰って行く人々は、次第にラーヴァの言葉に従った。

『あぁ、これで余計な戦いをする必要はないね。』

 とりあえずの安寧を手に入れたラーヴァに立て続けに苦難がやってきた。

 1年に1度、人族達が騒ぎ出す日があったのだ。
 それはラーヴァが特に嫌いな日だった。
 修行だ何だと、自分を律していたグランヌスの民達が大いに騒ぐ1日だった。

 ドンドン♪ ドドン♪ ドンドドン♪
 ドンドン♪ ドドン♪ ドンドドン♪

 至る所で鳴り響く太鼓の音が静かを求めるラーヴァの癇に障った。

 ドンドン♪ ドドン♪ ドンドドン♪
 ドンドン♪ ドドン♪ ドンドドン♪

『あぁー。
 うるさい。うるさい。
 なんて、腹の立つ音だろう。』

 ラーヴァは、耳を塞いで溶岩に潜る事で、この日を凌いでいた。

 月日が流れ、人間達がラーヴァの火山に“グランヌス”と名付け始めた頃。

 我慢の限界がきたラーヴァは今年こそは、邪魔をしてやると意気込んだ。

『地震か?
 いや、アイツらも地震には慣れてきただろう。
 じゃあ、溶岩かな?
 うーん。
 それじゃ、やりすぎか?
 可哀想だ。
 うーん。
 よし、人里に降りて吠えてやろう。
 きっと、驚くぞ。クククッ。』

 虎視眈々とイタズラを考えていたラーヴァであったが、溶岩の風呂から出た時に思わず大きな岩を踏み付けてしまった。

『ぎゃっ!
 痛たぁぁぁぁぁい!!』

 ダンダン  ダダン ダンダダン

 大きな岩はラーヴァの大きな足によって細かく砕かれ、その破片がラーヴァの足の裏に刺さって、これが痛いのなんの。

 終いにラーヴァは泣き始めた。

『痛いよぉぉ。
 痛いよぉぉ。』

 ラーヴァの大きな手では破片が、どうしても取れなかった。
 ラーヴァの涙は川になり、溶岩と交わり周囲が蒸気で覆われた。
 そんな中だった。
 姿が見えぬが、誰かが呼ぶ声がした。

「ぉーぃ。ぉーい。
 泣いてるのは誰だい?」

 これが、のちにラーヴァにとって最初の友達となった、ガンダルライドウォッシュボーンとの出会いだった。
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