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旅路 〜グランヌス・王宮〜
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いつの時代からか姿を現さなくなった火龍。
人は次第に火龍から得た恩恵を忘れて、自分達だけで国を盛り立ててきたと思い込んでいた。
灼熱の地層、いつ襲いかかってくるかも分からぬ溶岩、生命が呼吸をするのも難しい火山の国で、何故に人が生きて来られたのか。
本当は人など叶うはずもない果てしない力に護られていたのに・・・。
誰よりも、自分達を愛してくれていた守護者・火龍。
己が過ちに気がついたカンスケ爺やは目の前の赤い髪の男に頭を垂れた。
「火山の・・・グランヌスの守護者よ。
我らが不徳にお怒りか?
もはや、やり直しは効きませぬのか?」
ラーヴァはジッとカンスケ爺やを見下ろした。
「私はね。
人が好きなんだ。
笑い声も鳴き声も、優しいところも、愚かなところも・・・。
でも、偽りは嫌いだ。
今のグランヌスは偽りの塊だ。」
怒っているというよりかは、悲しそうなラーヴァをゼンが諌めるように寄り添った。
「君は優しい子だね。
君の主人も優しい子だ。
チビの小鳥ちゃんがね。
待てって言うんだ。
イオリなら何とかするからって。」
「だから、俺の様子を見に来たんですか?」
イオリが微笑むとラーヴァは頷いた。
「イオリなら前のグランヌスに戻す事が出来る?」
子供の様に縋るラーヴァの瞳に見つめられてもイオリの微笑みは変わらなかった。
「力の限りを尽くします。」
力む事なく頷くイオリにラーヴァの顔が晴々としていく。
「ありがとう!
リュオン様の愛し子!」
興奮したようにイオリを持ち上げてクルクルと回るラーヴァを見つめ、カンスケ爺やは溜息を吐いた。
「助かった・・・。」
そんなカンスケ爺やにゼンが近づいた。
『ラーヴァの事、許してね。
僕らは人が好きだけど、人の弱さを本当の意味で理解してないから。
ラーヴァは寂しかったんだ。』
過激な事を言った火龍を怖がるのではないかと心配していたゼンにカンスケ爺やは眉を下げた。
「ワシらは忘れとったんじゃ。
誰のお陰で、この地に住んでいられるのかを・・・。
謝らなければならないのは、ワシら人の方だ。
あの方を伝説と崇め、今を忘れた我らを、それでも愛してくださる火龍様・・・。
感謝しかない。」
祈るように手を合わせたカンスケ爺やをゼンは満足そうに見つめた。
「そうだ。
イオリ。
あの子、あの子。
気を失っちゃった子。
私がちょっと脅かしてやったんだ。」
「・・・ん?
あの子・・・あぁ、あの子かっ!」
高い高いをされていたイオリは、ラーヴァの言った“あの子”が姫巫女だと気付き驚いた声を上げた。
「ラーヴァ、ラーヴァ。
下ろしてください。
ラーヴァが気絶させたって本当ですか?」
「うん。
昨日の夜に王宮の空を飛んでたんだぁ。
そしたら、あの子が顔を出したから・・・イタズラしちゃった。」
イオリは昨夜、後宮に押し込んできた王が「姫巫女が目覚めない」と言っていた事を思い出した。
「本当に、気を失ってたんだ・・・。
ここまで国を崩壊させた人間が火龍の一睨みで?」
どこか納得のいかないと、イオリは首を傾げたのだった。
人は次第に火龍から得た恩恵を忘れて、自分達だけで国を盛り立ててきたと思い込んでいた。
灼熱の地層、いつ襲いかかってくるかも分からぬ溶岩、生命が呼吸をするのも難しい火山の国で、何故に人が生きて来られたのか。
本当は人など叶うはずもない果てしない力に護られていたのに・・・。
誰よりも、自分達を愛してくれていた守護者・火龍。
己が過ちに気がついたカンスケ爺やは目の前の赤い髪の男に頭を垂れた。
「火山の・・・グランヌスの守護者よ。
我らが不徳にお怒りか?
もはや、やり直しは効きませぬのか?」
ラーヴァはジッとカンスケ爺やを見下ろした。
「私はね。
人が好きなんだ。
笑い声も鳴き声も、優しいところも、愚かなところも・・・。
でも、偽りは嫌いだ。
今のグランヌスは偽りの塊だ。」
怒っているというよりかは、悲しそうなラーヴァをゼンが諌めるように寄り添った。
「君は優しい子だね。
君の主人も優しい子だ。
チビの小鳥ちゃんがね。
待てって言うんだ。
イオリなら何とかするからって。」
「だから、俺の様子を見に来たんですか?」
イオリが微笑むとラーヴァは頷いた。
「イオリなら前のグランヌスに戻す事が出来る?」
子供の様に縋るラーヴァの瞳に見つめられてもイオリの微笑みは変わらなかった。
「力の限りを尽くします。」
力む事なく頷くイオリにラーヴァの顔が晴々としていく。
「ありがとう!
リュオン様の愛し子!」
興奮したようにイオリを持ち上げてクルクルと回るラーヴァを見つめ、カンスケ爺やは溜息を吐いた。
「助かった・・・。」
そんなカンスケ爺やにゼンが近づいた。
『ラーヴァの事、許してね。
僕らは人が好きだけど、人の弱さを本当の意味で理解してないから。
ラーヴァは寂しかったんだ。』
過激な事を言った火龍を怖がるのではないかと心配していたゼンにカンスケ爺やは眉を下げた。
「ワシらは忘れとったんじゃ。
誰のお陰で、この地に住んでいられるのかを・・・。
謝らなければならないのは、ワシら人の方だ。
あの方を伝説と崇め、今を忘れた我らを、それでも愛してくださる火龍様・・・。
感謝しかない。」
祈るように手を合わせたカンスケ爺やをゼンは満足そうに見つめた。
「そうだ。
イオリ。
あの子、あの子。
気を失っちゃった子。
私がちょっと脅かしてやったんだ。」
「・・・ん?
あの子・・・あぁ、あの子かっ!」
高い高いをされていたイオリは、ラーヴァの言った“あの子”が姫巫女だと気付き驚いた声を上げた。
「ラーヴァ、ラーヴァ。
下ろしてください。
ラーヴァが気絶させたって本当ですか?」
「うん。
昨日の夜に王宮の空を飛んでたんだぁ。
そしたら、あの子が顔を出したから・・・イタズラしちゃった。」
イオリは昨夜、後宮に押し込んできた王が「姫巫女が目覚めない」と言っていた事を思い出した。
「本当に、気を失ってたんだ・・・。
ここまで国を崩壊させた人間が火龍の一睨みで?」
どこか納得のいかないと、イオリは首を傾げたのだった。
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