続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

愛し子の帰還

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「小麦に米でしょ。
　調味料も揃えたし・・・セドリックさんのお店でおやつも調達した。
　ギルドで肉の解体もしてもらった。
　牛乳とチーズもバッチリだし準備はできたかな？」

　満足そうなイオリにヒューゴが腰に手を当てて呆れた顔をした。

「お前の準備は何の準備だ？
　俺達は長旅の準備をしに来たんだぞ。
　俺にはお前が楽しい晩餐の準備をしている様に聞こえるが？」

「しまった」頭を掻くイオリを子供達はクスクスと笑った。

「全く、お前ってやつは・・・。
　普通の冒険者は食糧などは干し肉などの保存食に任せ、装備や道具に金をかけるんだ。
　ったく。
　道具は俺と子供達で揃えたから良いものを・・・子供達に笑われても仕方ないぞ。」

「スミマセンデシタ。
　アリガトウゴザイマス。」

　カタコトで謝るイオリを側で見ていたヴァルト達は苦笑した。

「あらあら。」

「まぁ、イオリだからな。」

「そうですね。イオリですから。」

「ヒューゴがしっかりしてくれて助かる。
　これからも頼むな。」

　ヒューゴは眉を下げ、笑うオルガ夫人とヴァルト、トゥーレ、マルクルに頭を下げた。

「怒られた・・・。」

　しゃがみ込み落ち込むイオリをゼンが擦り寄った。

『今回はイオリが悪いと思うよ。
　でも、僕はイオリのご飯が好きだから問題なし。』

「オレも！」
「パティも！」
「僕も！」
「ニナも！」

　ゼンと子供達に慰められるとイオリは気まずそうな顔で立ち上がった。

「よし！帰って、最後の準備をしよう。
　明日の早朝に出発だよ。」

「「「「はーい！！」」」」

「帰ったら父上がイルツクのギロック伯爵宛にお前達の紹介状を用意しているだろう。
　あちらにも騎士団が存在するし、各地から数人のSランク冒険者が集まるようだ。
　他にも高ランク冒険者が来ると聞いている。
　よもやとは思うが、問題が降りかかるとも限らないからな。
　気をつけて行くんだぞ。」

「はい。
　現役のSランク冒険者には会った事がないので楽しみです。
　そう言えば、ギロック伯爵は女性なんですね？
　なんでイルツク伯爵ではないんですか？」

　今まで出会った領主は土地の名前が付いていた。
　イオリの疑問に答えてくれたのはトゥーレだった。

「ポーレットなどは初代からポーレット公爵家が存在しますが、イルツクは違います。
　お察しの通り随分と前にイルツク家が存在したのです。
　しかし、流行病によりイルツク家の一族が被害に遭いました。
　時の国王がイルツク家より結婚で離れていた娘の子供・・・まぁ、イルツク家の当主の外孫にあたる人物をイルツク家の新たな当主に充てがったのです。
　本来なら名前も変えるところですが、流行病という事もあり縁起が悪いと名をギロックと新しく与えられたと言われています。
　まぁ、100年ほど前の事です。
　3代前程でしたでしょうか？」

　トゥーレの問いにオルガ夫人が答えた。

「えぇ、その位だったはずですよ。
　その後はギロック家がイルツクの守護をしています。
　イルツクという歴史ある街の名は残し、ギロック家という新たな一族が出来たのです。
　歴史が浅いからと言っても血筋は立派ですからね。
　誰の文句もありませんよ。
　今の当主はアナスタシアさんと言ったかしら、真面目に政務に励まれていると聞きます。
　騎士団長とご結婚されて、家族で街を守っているのです。
　前当主も御健在で後から2人を支えていると聞きますよ。」

　2人から聞くイルツクのイメージにイオリは良い印象を持った。
　家族が仲が良いのは喜ばしい事だ。

「へー。それは素敵な御家族ですね。
　お会いするのが楽しみです。」

　イオリ達は買い物を済ますと屋敷に戻った。
　明日は朝が早い。
　日が暮れるポーレットを見つめて、しばしば離れる街を目に焼き付けた。

「イルツクか・・・。
　レンさん達、元気かな。」