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愛し子の帰還
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瞳を開けたイオリは心配そうなゼンと目を合わせた。
『危険なところにイオリを行かせたくない。
でもイオリが行くと決めたら、何処だろうと僕はついていくよ。』
「知ってるさ。
俺とゼンは一心同体。
何処に行くのも一緒だよ。
それに、俺達には仲間がいる。
そうだろう?」
『うん!』
イオリが仲間達と教会を後にする頃・・・。
__________
イルツクの屋敷にてーーーーー
「ダンジョンに向かった兵士からの連絡は?」
「途絶えました・・・。」
「途絶えた・・・?
各地からの救援はどうです?」
「はい。
王都からも兵士を送ると連絡がありました。
冒険者ギルドからも各地にいる高ランク冒険者達がイルツクに向かい出したと報告がありました。」
「我が街の冒険者達も疲弊しているでしょう。
なんとかして、ダンジョンが持ち堪えてくれれば良いのですが・・・。」
苦渋の顔をしているのはイルツクの領主アナスタシア・ギロック伯爵と腹心であり夫でもあるディエゴ・ギロック騎士団長である。
北の地を守護するギロック家に生まれたアナスタシアは女でありながら唯一の血統として、国王アルフレッド・アースガイルより伯爵の位を任されていた。
幼い頃から自身の街を愛し、領民にも敬愛されるアナスタシアは身も心もイルツクの街に捧げた。
そんな彼女を守るべく婚姻を結んだのがディエゴ・マルゴーという男だった。
マルゴー家とはギロック家とイルツクを守る騎士団の家系であり、ディエゴはアナスタシアの幼馴染として互いを親友と認め、2人は街を守る為にお互いを高め合ってきた。
その為に2人は王都の学院に通い、アナスタシアは政治経済学をディエゴは騎士学を専攻し晴れて帰還した年に結婚し家督も継いだのだ。
そんな2人をダンジョンに強行侵入した“エルフの里の戦士”達が頭を悩ませていた。
「我々と彼ら考えの違いはありますが、何よりも戦闘力が違います。
30名ほどの兵士を3人のエルフが薙ぎ倒したとあれば、無謀に戦いを挑んではなりません。
各地より猛者が集まり出したら、私も出立します。」
「・・・。分かりました。
ディエゴ、どうか無事に帰ってきてください。」
ギロック伯爵は心配そうな顔で夫を見つめた。
「当主が、そのような顔をしてはなりません。
皆が心配します。
どんな状況であろうと、貴方は泣いてはいけないのです。」
「分かっています。
・・・貴方の前だけです。」
神妙な雰囲気の夫婦の元に知らせが入った。
「失礼します!
ポーレットよりポーレット公爵専属冒険者“イオリ”とそのパーティーを送ると報告が!
この者は先のミズガルドのクーデター事件に尽力した御仁と見られます。
“エルフの里の戦士”を一瞬で取り押さえたとか、天を覆う程の大蛇を討伐したなど噂されています!」
部下のヘラルドの報告を2人は唖然として聞いていた。
「3年前に唐突に消えた“黒狼”が舞い戻った?
それは吉報です。」
「しかし、伯爵。
噂はあくまで噂です。
伝わる話ほどの力量があるかは期待してはいけません。
それでも力にはなってくれるでしょう。
Sランク冒険者が集まるのです。
あやつらは自己流の戦いに自信を持っていますから、問題も発生する事でしょう。
私も気を抜けません。
それではアナスタシア様、私は一度騎士団に戻りダンジョンの状況を確認して参ります。」
部下と共に去っていく夫をアナスタシアは見送った。
立ち上がり、自分が愛する街を見つめたアナスタシアは一筋の涙を流した。
「本当に、かつての大戦が・・・
忌まわしき歴史が繰り返されようとしているの?
どうか・・・騎士団長を・・・ディエゴを・・夫を無事に返して。」
今だけは領主としてではなく妻として夫の身を案じるアナスタシアであった。
『危険なところにイオリを行かせたくない。
でもイオリが行くと決めたら、何処だろうと僕はついていくよ。』
「知ってるさ。
俺とゼンは一心同体。
何処に行くのも一緒だよ。
それに、俺達には仲間がいる。
そうだろう?」
『うん!』
イオリが仲間達と教会を後にする頃・・・。
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イルツクの屋敷にてーーーーー
「ダンジョンに向かった兵士からの連絡は?」
「途絶えました・・・。」
「途絶えた・・・?
各地からの救援はどうです?」
「はい。
王都からも兵士を送ると連絡がありました。
冒険者ギルドからも各地にいる高ランク冒険者達がイルツクに向かい出したと報告がありました。」
「我が街の冒険者達も疲弊しているでしょう。
なんとかして、ダンジョンが持ち堪えてくれれば良いのですが・・・。」
苦渋の顔をしているのはイルツクの領主アナスタシア・ギロック伯爵と腹心であり夫でもあるディエゴ・ギロック騎士団長である。
北の地を守護するギロック家に生まれたアナスタシアは女でありながら唯一の血統として、国王アルフレッド・アースガイルより伯爵の位を任されていた。
幼い頃から自身の街を愛し、領民にも敬愛されるアナスタシアは身も心もイルツクの街に捧げた。
そんな彼女を守るべく婚姻を結んだのがディエゴ・マルゴーという男だった。
マルゴー家とはギロック家とイルツクを守る騎士団の家系であり、ディエゴはアナスタシアの幼馴染として互いを親友と認め、2人は街を守る為にお互いを高め合ってきた。
その為に2人は王都の学院に通い、アナスタシアは政治経済学をディエゴは騎士学を専攻し晴れて帰還した年に結婚し家督も継いだのだ。
そんな2人をダンジョンに強行侵入した“エルフの里の戦士”達が頭を悩ませていた。
「我々と彼ら考えの違いはありますが、何よりも戦闘力が違います。
30名ほどの兵士を3人のエルフが薙ぎ倒したとあれば、無謀に戦いを挑んではなりません。
各地より猛者が集まり出したら、私も出立します。」
「・・・。分かりました。
ディエゴ、どうか無事に帰ってきてください。」
ギロック伯爵は心配そうな顔で夫を見つめた。
「当主が、そのような顔をしてはなりません。
皆が心配します。
どんな状況であろうと、貴方は泣いてはいけないのです。」
「分かっています。
・・・貴方の前だけです。」
神妙な雰囲気の夫婦の元に知らせが入った。
「失礼します!
ポーレットよりポーレット公爵専属冒険者“イオリ”とそのパーティーを送ると報告が!
この者は先のミズガルドのクーデター事件に尽力した御仁と見られます。
“エルフの里の戦士”を一瞬で取り押さえたとか、天を覆う程の大蛇を討伐したなど噂されています!」
部下のヘラルドの報告を2人は唖然として聞いていた。
「3年前に唐突に消えた“黒狼”が舞い戻った?
それは吉報です。」
「しかし、伯爵。
噂はあくまで噂です。
伝わる話ほどの力量があるかは期待してはいけません。
それでも力にはなってくれるでしょう。
Sランク冒険者が集まるのです。
あやつらは自己流の戦いに自信を持っていますから、問題も発生する事でしょう。
私も気を抜けません。
それではアナスタシア様、私は一度騎士団に戻りダンジョンの状況を確認して参ります。」
部下と共に去っていく夫をアナスタシアは見送った。
立ち上がり、自分が愛する街を見つめたアナスタシアは一筋の涙を流した。
「本当に、かつての大戦が・・・
忌まわしき歴史が繰り返されようとしているの?
どうか・・・騎士団長を・・・ディエゴを・・夫を無事に返して。」
今だけは領主としてではなく妻として夫の身を案じるアナスタシアであった。
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