続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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愛し子の帰還

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 朝霧が街を覆う中、1組のパーティーが冒険者ギルドの扉を開いた。

 いくら冒険者達の朝が早いとはいえ、この時間はフロアに人も少なく静かだった。

 パーティーの一同は空いている受付で声をかけた。

「ラーラさん、おはようございます。」

「「「「おはようございます!」」」」

「みんな、おはよう!
 イオリさん、ヒューゴさん。
 おはようございます。
 出立ですか・・・。
 寂しくなります。」

 受付に立つラーラは眉を下げた。

「復帰してから1度もポーレットで依頼を受けてないのが心苦しいです。」

 申し訳なさそうなイオリにラーラは首を振った。

「希少な討伐魔獣を売って下さいました。
 十分です。
 これからは長旅と聞いています。
 どうぞお気をつけて。」

「ありがとうございます。
 これ、公爵からの依頼状です。」

 イオリはポーレット公爵テオルドから受け取った依頼状と自身のカードをラーラに差し出した。

「確かに受け取りました。
 カードをお預かりします。
 公爵家とギルドからの推薦のデータを書き足しておきますね。
 国内だけでなく国外でも役立つはずです。」

「ありがとうございます。
 ギルマスは・・・。」

「居るぞ。」

 階段から降りてきたギルマス・コジモとサブマス・エルノールに子供達は大興奮だった。

「ギルマス、早起きだね!」
「お土産買ってくるね。」
「サブマス、行ってきます。」
「ニナも!」

 ギルマス、サブマスの2人は子供達をクシャクシャに撫で回すとイオリとヒューゴに視線を向けた。

「まぁ、なんだ。
 お前達なら大丈夫だ。
 どこに出しても恥ずかしくないさ。
 ついでだ。
 ヒューゴもSの称号を持っていけ。
 お前もそれだけの力がある。」

 唖然とするヒューゴの肩をイオリは嬉しそうに叩き。
 子供達は大騒ぎだ。

 ラーラから新しいカードを貰うとヒューゴは信じられない顔でギルマスを見た。

「本来なら、もっと早くやりたかったがギルドがポンポンとSランクを出すわけには行かないからな。
 満を辞してって事だ。
 これでイオリと同じ場に立つ事が出来る。
 このパーティーの要はお前だ。
 頼むぞ。」

「・・・はい。
 ありがとうございます。」

「本来なら派手に祝いたいところだが、そうもいかんだろう。
 まぁ、これもお前達らしいだろう。
 双子もランクを上げてやりたいが、あまり目立つのも良くない。
 スマンな。」

 ギルマスの言葉に興奮中の双子は首をブンブンと振った。

「そんなの良いよ!!
 イオリ達にも急ぐなって言われてるし、面倒だもの!
 それより、ヒューゴにSランクくれて、ありがとう!!
 凄いよ!やったー!!」

「Sランクだよ!
 ヒューゴ!!やった!やった!
 嬉しいよ!
 パティはスコルと一緒なら何でもいいよ。」

 自分の事は二の次にヒューゴがSランクに昇格した事に喜ぶ双子にヒューゴだけでなくギルマスもサブマスも微笑んでいた。

「そうか・・・。
 そうだな。お前達はそーだった。
 良い子達だな。イオリ。」

 ギルマスに褒められイオリはニッコリと頷いた。

「えぇ、そうでしょう?
 ・・・ありがとうございます。
 心強いです。」

「期待に応えられるように頑張ります。」

 イオリとヒューゴの言葉にギルマスは照れたように顔を顰めて無言で頷いた。

「イオリさん。お気をつけて・・・。
 エルフとやりあう時は・・・教えましたね?」
 
「はい。覚えてます。
 ありがとうございます。」

 サブマス・エルノールはイオリの真剣な顔に満足そうに頷いた。

「ナギ。貴方は立派な冒険者です。
 自信を持って行きなさい。
 ニナ。貴方の笑顔がみんなを支えます。
 笑顔を忘れないで下さい。
 2人とも、大いなる経験をしてきて下さい。
 帰ってくるのを待っています。」

「「はい!!」」

 ナギとニナの2人は師匠であるエルノールに抱きついた。

「ほら、早く行け。
 そろそろ人も増えて騒ぎになる。
 ヒューゴ。
 指輪を持ってけ。
 お前も俺が自信を持って送り出す冒険者だ。」

 イオリと同じ指輪を渡されるとヒューゴは指にはめた。

「うっす。
 ありがとうございます。
 行ってきます。」

 ヒューゴは子供達とアウラを連れてギルドを後にした。

「・・・それじゃ。
 皆さんお元気で・・・。
 時折、連絡入れますよ。」

 イオリは公爵から貰っていた指輪を煌めかせるとニッコリした。

「あぁ・・・。
 しっかりな。
 まずはイルツクだ。
 あっちのギルドは随分、混乱しているらしい。
 気をつけて行けよ。」

「はい。
 それじゃ!」

 イオリの後を真っ白な狼・・・ゼンが続き、挨拶変わりに一吠えした。

「バウッ!!」

 ギルドにいた冒険者が驚いたように見つめる中、ギルマスは大笑いした。

「おお!行ってこい!
 お前も元気でな!」

 狼と会話するギルマスを冒険者達は怪訝そうに見つめるのだった。
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