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「──……でも、本当に良いの?ガーネット」
つい先ほど、ぱっと花が咲いたような笑顔を浮かべたアネッサだけれど、今の表情はとても暗いもの。
それは、自分の厄災が親友の元に移動してしまうからであって。やはり、自由の身を手に入れたことを手放しで喜ぶことができないのであった。
けれど、ガーネットはそんなアネッサを見てカラカラと笑う。
「あら?大丈夫よ。ふふっ。しっかり、教育してあげるから」
そう言って、ガーネットはポキリと指の関節を鳴らした。
余談であるが、ガーネットは武芸に秀でている。そして、女性であるので、口も達者。頭も良いので、回転も速い。
だから理攻めで、力づくで、ライオットを再教育するのは、造作もないこと。
ちなみにガーネットには兄が2人いる。
長男は既に家督を継いでおり、もう一人は、軍人として国の為に剣を捧げている。が、妹の為に、その剣をライオットに向けることは合法であるとも思っている。
ま、下世話な表現で言うなら、超が付くほどのシスコンである。
そんなある意味、最強である侯爵令嬢は、アメジスト色の瞳を猫のように細めて、こう言った。
「これまで、弄ばれた女性たちの恨み、そして、虐げられたあなたの苦しみは、私がしっかり晴らして差し上げるわ。ライオットにはいっそ殺してくれと言いたくなるようなこの世の地獄を見せてあげるっ」
意気込むガーネットであっても、ライオットと結婚する気はない。
ある程度教育と言う名の制裁を与えたら、即座に捨てるつもりである。
なにせライオットは、伯爵家。格下だ。文句は言わせないし、そもそも、身分の低い下種な男がガーネットに求婚することなど恥知らずも良いところ。
例え、婚約破棄という噂が立ったとしても、笑い話として処理されるだけ。ガーネットの名が汚れることなどない。
……ということを、ガーネットは丁寧にアネッサに説明をする。
そうすれば、やっとアネッサは心からの笑みを浮かべた。
「じゃあ、乾杯しましょう」
そう言って、ガーネットはテーブルに置かれたままのティーカップを持ち上げた。
アネッサも、それに倣う。
「アネッサの明るい未来に乾杯!」
「二人の友情に乾杯!」
キンッと音を立ててティーカップが合わさる。
ここは一発、ウオッカやジン。いやいやテキーラくらいのパンチの利いたアルコールを一気飲みしたいところ。
けれど、淑女らしく香り高い紅茶で乾杯するところが、妙に育ちの良さを感じる。
そして、二人は満面の笑みを浮かべて、紅茶を飲み干した。
少し西に傾いた秋の日差しが窓から差し込み、友情をより深めた二人を、キラキラと輝かせていた。
さて、気になるライオットのその後であるが、彼はガーネットの教育的指導によりこれまでの悪行を悔い改め……爵位を返上し、雀の涙ほどの財産を全て孤児院へと寄付する。そして、聖職者への道を歩むことになる。
え?アネッサとガーネットのその後は、どうなったかと?
それは愚問である。なぜなら、彼女たちは自分の力で幸せを得ることを知っているのだから。
そんな二人の未来は、明るいものに決まっている。
◇◆◇◆おわり◆◇◆◇
つい先ほど、ぱっと花が咲いたような笑顔を浮かべたアネッサだけれど、今の表情はとても暗いもの。
それは、自分の厄災が親友の元に移動してしまうからであって。やはり、自由の身を手に入れたことを手放しで喜ぶことができないのであった。
けれど、ガーネットはそんなアネッサを見てカラカラと笑う。
「あら?大丈夫よ。ふふっ。しっかり、教育してあげるから」
そう言って、ガーネットはポキリと指の関節を鳴らした。
余談であるが、ガーネットは武芸に秀でている。そして、女性であるので、口も達者。頭も良いので、回転も速い。
だから理攻めで、力づくで、ライオットを再教育するのは、造作もないこと。
ちなみにガーネットには兄が2人いる。
長男は既に家督を継いでおり、もう一人は、軍人として国の為に剣を捧げている。が、妹の為に、その剣をライオットに向けることは合法であるとも思っている。
ま、下世話な表現で言うなら、超が付くほどのシスコンである。
そんなある意味、最強である侯爵令嬢は、アメジスト色の瞳を猫のように細めて、こう言った。
「これまで、弄ばれた女性たちの恨み、そして、虐げられたあなたの苦しみは、私がしっかり晴らして差し上げるわ。ライオットにはいっそ殺してくれと言いたくなるようなこの世の地獄を見せてあげるっ」
意気込むガーネットであっても、ライオットと結婚する気はない。
ある程度教育と言う名の制裁を与えたら、即座に捨てるつもりである。
なにせライオットは、伯爵家。格下だ。文句は言わせないし、そもそも、身分の低い下種な男がガーネットに求婚することなど恥知らずも良いところ。
例え、婚約破棄という噂が立ったとしても、笑い話として処理されるだけ。ガーネットの名が汚れることなどない。
……ということを、ガーネットは丁寧にアネッサに説明をする。
そうすれば、やっとアネッサは心からの笑みを浮かべた。
「じゃあ、乾杯しましょう」
そう言って、ガーネットはテーブルに置かれたままのティーカップを持ち上げた。
アネッサも、それに倣う。
「アネッサの明るい未来に乾杯!」
「二人の友情に乾杯!」
キンッと音を立ててティーカップが合わさる。
ここは一発、ウオッカやジン。いやいやテキーラくらいのパンチの利いたアルコールを一気飲みしたいところ。
けれど、淑女らしく香り高い紅茶で乾杯するところが、妙に育ちの良さを感じる。
そして、二人は満面の笑みを浮かべて、紅茶を飲み干した。
少し西に傾いた秋の日差しが窓から差し込み、友情をより深めた二人を、キラキラと輝かせていた。
さて、気になるライオットのその後であるが、彼はガーネットの教育的指導によりこれまでの悪行を悔い改め……爵位を返上し、雀の涙ほどの財産を全て孤児院へと寄付する。そして、聖職者への道を歩むことになる。
え?アネッサとガーネットのその後は、どうなったかと?
それは愚問である。なぜなら、彼女たちは自分の力で幸せを得ることを知っているのだから。
そんな二人の未来は、明るいものに決まっている。
◇◆◇◆おわり◆◇◆◇
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人や限り→一夜限り
父親への制裁はないのですか?
返信が遅くなり申し訳ありません(><)
感想ありがとうございます!
書き終わった時は、まったく考えてなかったのですが……パパリンざまぁも盛り込みたいなと、思う今日この頃……。
もしかして続編を書くかもしれませんので、その時は良かったら読んでもらえたら幸いです(o*。_。)oペコッ
男の友情優先したとーちゃんへのざまあも欲しかったかもしれません。
返信が遅くなり申し訳ありません(><)
感想ありがとうございます!
初めての短編で、今読み返してみると確かに、パパリンへのざまぁも入れた方が良かったですね(;^ω^)
もしかして……本当に、もしかしてですが、それを盛り込んだ続編を書くかもしれません。
その時は、良かったら読んでくださいm(_ _"m)