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第16話 目指せ淑女の鏡
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翌朝、食事の間でローゼン公爵と顔を合わせたクリストフは、何やら気まずくて挨拶もそこそこに用意された朝食のパンに齧り付いた。
一晩明けてみれば昨夜の自分の子どものような行動が恥ずかしく、ただただ感情に任せてぶつかった自分の話をまともに聞き入れてくれたローゼン公爵への申し訳なさが募った。
ローゼン公爵はそんなクリストフの様子に軽く左眉を持ち上げただけで、何も言ってこない。静かな朝食だった。
「明日――」
静けさを破ってローゼン公爵が切り出した。
「フランティエ侯爵夫人をこちらにお招きしたいのですが、よろしいでしょうか」
「うん……」
曖昧な返事をしながら、頭の中で貴族名鑑のページをめくる。しかしクリストフにはその女性の情報は思い出せなかった。
「何かあるの?」
気まずさを引きずったまま、ちらとローゼン公爵を見てクリストフは尋ねた。
「私が淑女になるための講師を務めていただきます」
「ふぅん……」
緑色のスープを眺めながらクリストフは考えた。淑女……淑女とは……。ローゼン公爵は言葉を続けた。
「昨日、無事婚約の儀も済みました。半年後には婚姻の儀がございます。今後は夜会への招待もあるでしょう。社交界で貴方様に恥をかかせぬよう、正式な妻になる前に一人前の淑女として」
スープを口に運び、飲み込もうとして思わずクリストフは吹き出した。
「何とはしたない……」
ローゼン公爵は顔をしかめた。
「そっちが」
クリストフは作法もどこへやら、口元を袖で拭って非難の声を上げた。
「そっちがわけ分かんないこと言うからだろ!」
クリストフの侍女エレナが慌ててナプキンを持ってクリストフに駆け寄った。
「淑女って女の人のことでしょ!?あんたはなれないじゃん!」
「そのような理屈にこだわっている場合ではございません。夫を支えることのできる妻となるには、まず淑女としての嗜みを身につけなければ」
「別にあんたの支えなんかいらないよ」
「妻の行動が夫の評価にも繋がるのです。私が一人前の淑女にならねば、貴方様の評判に傷が」
「俺の評判なんてどうでもいいよ!」
「どうでも良くはありません」
ローゼン公爵は強く訴えた。
「貴方様を立派な紳士とするためには淑女たる妻の支えが」
「何だよ紳士って!そんなものにならないよ俺!」
「貴方様のお立場を」
「そんなの知らない!」
「人の上に立つ者は」
「立たない!」
「殿下、よろしいですか?」
「よろしくない!」
エレナに口元を拭われながら、クリストフは昨夜の反省も余所にむきになって口答えをした。ローゼン公爵はやれやれとため息をつきながら首を振った。
「とにかく、私とハーマン子爵令嬢はフランティエ侯爵夫人の講義を受け、家名に恥じぬ淑女としてこのアルムウェルテン王国の礎となる夫を支え」
「あんたも淑女になるの?」
ローゼン公爵の演説を無視してクリストフはエレナへと問いかける。エレナは力強く頷いた。
「公爵閣下のお気持ちを聞き、わたくしは目が覚めました。今までは、お仕えする殿下のこともお助けできないような頼りないわたくしでしたが」
その視線がローゼン公爵の侍従アルベルトへ向けられ、すぐに戻される。胸の前で固く握り締めた右手がエレナの決意を表していた。
「殿下と……お、夫となる人を支えるため、もっと立派な淑女になります!」
アルベルトの姉イルザはエレナを見てから弟であるアルベルトを見た。アルベルトはパンの山を見つめて何やら口元を動かしている。パンの数を数えているらしい。
「素晴らしい心がけです。ハーマン子爵令嬢」
ローゼン公爵は満足そうに頷いた。
「わけ分かんないよ……」
ぶつぶつ言いながら頭を抱えたクリストフを着替えさせるため、イルザに脇腹をつつかれたアルベルトがクリストフを食事の間から連れ出した。
翌日から早速淑女講座が始まったようだ。
クリストフが研究所から戻ってくると、フランティエ侯爵夫人らしきふくよかな女性が白花の館を去るところだった。フランティエ侯爵夫人はクリストフの姿を認めると優雅な礼を披露した。クリストフが戸惑ってもじもじとしていると、フランティエ侯爵夫人の後ろから現れたローゼン公爵にじろりと睨みつけられた。
「こ、こんにちは」
クリストフは慌てて挨拶をした。市井にいた時のような挨拶になってしまった。不思議と威厳のあるフランティエ侯爵夫人の佇まいに、思わず頭を下げるとローゼン公爵が額に手を当てて呆れているのが見えた。フランティエ侯爵夫人はにっこりと微笑んだ。他には何をすればいいのか分からない。クリストフはとりあえず名乗ろうとした。
「俺……ぼ、僕、私は……ク、クリストフ・ローナ・ランベール・アリュム」
舌が回らなかった。
大体、この名前は長すぎるのだ。王宮に来るまではただのクリストフだったのに、王族の姓であり、国の名前でもある「アルムウェルテン」を家名としてつけなければならず、さらに先祖である何代目かの王の名前を入れろと提案された。そのときの書記官だとかいう男の表情が偉そうで気に食わなかったのもあるが、いくら王様だったから、英雄だったからだと言われても、知らない男の名前が自分の名前と並ぶのは違和感しかない。
だから母の名前の「ローナ」と、手伝いをしていた孤児院の院長の姓「ランベール」を加えた。院長は優しく冗談のうまい男だったが、クリストフが他の孤児達と共にいたずらをしたとき、こっぴどく怒られた記憶もある。いつも腰に手を当てていたが、彼の腰痛は治ったのだろうか。
黙り込んだクリストフに焦れたのか、ローゼン公爵が一歩前に進み出て自らクリストフをフランティエ侯爵夫人に紹介した。フランティエ侯爵夫人は頷きクリストフに対して丁寧に名乗ってくれた。
「フランティエ侯爵家当主が妻、ベアトリス・エヴリーヌ・フランティエと申します。このような場でのご挨拶をお許しください。アルムウェルテン王国の新たなる黄金の獅子、第三王子殿下にお目にかかれますこと大変光栄でございます」
クリストフは黄金の獅子になったつもりはなかったが、とにかく頷いてみせた。こんなとき、あの忌々しい王太子レオンハルトなら堂々とこの場に合った言葉などを返すのだろうか。フランティエ侯爵夫人はクリストフの戸惑いや不作法も包み込むような笑顔を浮かべ、再度礼をし、去って行った。
淑女講座とやらは大いにローゼン公爵に刺激を与えたらしい。夕食の席でローゼン公爵は饒舌に今日の勉強について語った。
「全く恐れ入りました。『淑女』とは、所作や振る舞いだけにとどまらず、女性の生き方、在り方を表す思想そのものだったのです」
甚く感動したローゼン公爵は、今度は淑女会に参加するという。何でも高貴な身分のご夫人やらご令嬢やらが集まり、大いに語らい学び合う場だということだが、いまいちクリストフは釈然としない。ローゼン公爵はご夫人でもなければご令嬢でもないのだ。そんな場に参加して邪魔にならないのだろうか。
さらに、ローゼン公爵は優秀な淑女たる女性達を家庭に埋もれさせるのは国家的損失であると言い始めた。多様な視点を国の運営にもたらすための機会が失われているというのだ。フランティエ侯爵夫人が相当な博識の持ち主で、下手などこぞの貴族の当主よりよっぽど話が合ったらしい。早速女性の登用を推し進めるべく政策を提案することにしたという。
奇しくも、ローゼン公爵が祝福の花嫁として選ばれたことで、何とローゼン公爵家ではアレクシアが女公爵として跡を継ぐことになるとのことだ。自分の娘の後ろ盾となってくれそうな女性と知り合うこともできてローゼン公爵はご機嫌だった。
しかし、アルムウェルテン王国ではまだまだ女性は家庭に入るものという考えが根強い。それをローゼン公爵はどうするつもりなのだろうか。クリストフは疑問に思ったが、ローゼン公爵は意気込みはとどまるところを知らないようだ。何と女性の騎士団まで作るつもりらしい。
だが需要は間違いなくある、とローゼン公爵は説明する。確かに、護衛の騎士とご令嬢の恋についてエレナが話していたのをクリストフも聞いたことがある。娘の護衛に雇ったつもりで、逆に変な虫がつくことになれば貴族も困るだろう。
「いいんじゃないの」
こればっかりはクリストフも賛成である。働ける人間が働けばいいのだ。誰が稼ごうと食べられればいい。何気なくそう答えたつもりだった。ところが次に聞こえたのは予想もしない褒め言葉だった。
「貴方様の柔軟なお考えは素晴らしいものです」
ローゼン公爵は鼻歌でも歌いそうな勢いでメインディッシュの魚にナイフを入れている。いつもの嫌味な言葉も冷たい視線もない。クリストフは急な恥ずかしさに襲われて、蒸された長い殻の貝を手に取った。
小言ばかりかと思いきや急に褒めたり、クリストフのやりたいことをやらせてみたり、ローゼン公爵は一体どういうつもりなのか。茹でられて弾力が増した貝の中身を引っ張りながら考える。もしかすると、これも妻としての務めなのだろうか。
やっと中身が取り出せると思いきや、反動で殻があらぬ方向へ飛んで行き一直線にローゼン公爵の眼鏡に当たった。冷たい視線がクリストフを射抜く。
その後しばらく、夕食からはメインディッシュが消え、連日同じ貝が出ることになった。そしてクリストフはローゼン公爵に張り付かれながら貝の食べ方について逐一指導を受けた。毎晩、皿一杯の貝を食べ終わるまでクリストフが許されることはなかった。
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一晩明けてみれば昨夜の自分の子どものような行動が恥ずかしく、ただただ感情に任せてぶつかった自分の話をまともに聞き入れてくれたローゼン公爵への申し訳なさが募った。
ローゼン公爵はそんなクリストフの様子に軽く左眉を持ち上げただけで、何も言ってこない。静かな朝食だった。
「明日――」
静けさを破ってローゼン公爵が切り出した。
「フランティエ侯爵夫人をこちらにお招きしたいのですが、よろしいでしょうか」
「うん……」
曖昧な返事をしながら、頭の中で貴族名鑑のページをめくる。しかしクリストフにはその女性の情報は思い出せなかった。
「何かあるの?」
気まずさを引きずったまま、ちらとローゼン公爵を見てクリストフは尋ねた。
「私が淑女になるための講師を務めていただきます」
「ふぅん……」
緑色のスープを眺めながらクリストフは考えた。淑女……淑女とは……。ローゼン公爵は言葉を続けた。
「昨日、無事婚約の儀も済みました。半年後には婚姻の儀がございます。今後は夜会への招待もあるでしょう。社交界で貴方様に恥をかかせぬよう、正式な妻になる前に一人前の淑女として」
スープを口に運び、飲み込もうとして思わずクリストフは吹き出した。
「何とはしたない……」
ローゼン公爵は顔をしかめた。
「そっちが」
クリストフは作法もどこへやら、口元を袖で拭って非難の声を上げた。
「そっちがわけ分かんないこと言うからだろ!」
クリストフの侍女エレナが慌ててナプキンを持ってクリストフに駆け寄った。
「淑女って女の人のことでしょ!?あんたはなれないじゃん!」
「そのような理屈にこだわっている場合ではございません。夫を支えることのできる妻となるには、まず淑女としての嗜みを身につけなければ」
「別にあんたの支えなんかいらないよ」
「妻の行動が夫の評価にも繋がるのです。私が一人前の淑女にならねば、貴方様の評判に傷が」
「俺の評判なんてどうでもいいよ!」
「どうでも良くはありません」
ローゼン公爵は強く訴えた。
「貴方様を立派な紳士とするためには淑女たる妻の支えが」
「何だよ紳士って!そんなものにならないよ俺!」
「貴方様のお立場を」
「そんなの知らない!」
「人の上に立つ者は」
「立たない!」
「殿下、よろしいですか?」
「よろしくない!」
エレナに口元を拭われながら、クリストフは昨夜の反省も余所にむきになって口答えをした。ローゼン公爵はやれやれとため息をつきながら首を振った。
「とにかく、私とハーマン子爵令嬢はフランティエ侯爵夫人の講義を受け、家名に恥じぬ淑女としてこのアルムウェルテン王国の礎となる夫を支え」
「あんたも淑女になるの?」
ローゼン公爵の演説を無視してクリストフはエレナへと問いかける。エレナは力強く頷いた。
「公爵閣下のお気持ちを聞き、わたくしは目が覚めました。今までは、お仕えする殿下のこともお助けできないような頼りないわたくしでしたが」
その視線がローゼン公爵の侍従アルベルトへ向けられ、すぐに戻される。胸の前で固く握り締めた右手がエレナの決意を表していた。
「殿下と……お、夫となる人を支えるため、もっと立派な淑女になります!」
アルベルトの姉イルザはエレナを見てから弟であるアルベルトを見た。アルベルトはパンの山を見つめて何やら口元を動かしている。パンの数を数えているらしい。
「素晴らしい心がけです。ハーマン子爵令嬢」
ローゼン公爵は満足そうに頷いた。
「わけ分かんないよ……」
ぶつぶつ言いながら頭を抱えたクリストフを着替えさせるため、イルザに脇腹をつつかれたアルベルトがクリストフを食事の間から連れ出した。
翌日から早速淑女講座が始まったようだ。
クリストフが研究所から戻ってくると、フランティエ侯爵夫人らしきふくよかな女性が白花の館を去るところだった。フランティエ侯爵夫人はクリストフの姿を認めると優雅な礼を披露した。クリストフが戸惑ってもじもじとしていると、フランティエ侯爵夫人の後ろから現れたローゼン公爵にじろりと睨みつけられた。
「こ、こんにちは」
クリストフは慌てて挨拶をした。市井にいた時のような挨拶になってしまった。不思議と威厳のあるフランティエ侯爵夫人の佇まいに、思わず頭を下げるとローゼン公爵が額に手を当てて呆れているのが見えた。フランティエ侯爵夫人はにっこりと微笑んだ。他には何をすればいいのか分からない。クリストフはとりあえず名乗ろうとした。
「俺……ぼ、僕、私は……ク、クリストフ・ローナ・ランベール・アリュム」
舌が回らなかった。
大体、この名前は長すぎるのだ。王宮に来るまではただのクリストフだったのに、王族の姓であり、国の名前でもある「アルムウェルテン」を家名としてつけなければならず、さらに先祖である何代目かの王の名前を入れろと提案された。そのときの書記官だとかいう男の表情が偉そうで気に食わなかったのもあるが、いくら王様だったから、英雄だったからだと言われても、知らない男の名前が自分の名前と並ぶのは違和感しかない。
だから母の名前の「ローナ」と、手伝いをしていた孤児院の院長の姓「ランベール」を加えた。院長は優しく冗談のうまい男だったが、クリストフが他の孤児達と共にいたずらをしたとき、こっぴどく怒られた記憶もある。いつも腰に手を当てていたが、彼の腰痛は治ったのだろうか。
黙り込んだクリストフに焦れたのか、ローゼン公爵が一歩前に進み出て自らクリストフをフランティエ侯爵夫人に紹介した。フランティエ侯爵夫人は頷きクリストフに対して丁寧に名乗ってくれた。
「フランティエ侯爵家当主が妻、ベアトリス・エヴリーヌ・フランティエと申します。このような場でのご挨拶をお許しください。アルムウェルテン王国の新たなる黄金の獅子、第三王子殿下にお目にかかれますこと大変光栄でございます」
クリストフは黄金の獅子になったつもりはなかったが、とにかく頷いてみせた。こんなとき、あの忌々しい王太子レオンハルトなら堂々とこの場に合った言葉などを返すのだろうか。フランティエ侯爵夫人はクリストフの戸惑いや不作法も包み込むような笑顔を浮かべ、再度礼をし、去って行った。
淑女講座とやらは大いにローゼン公爵に刺激を与えたらしい。夕食の席でローゼン公爵は饒舌に今日の勉強について語った。
「全く恐れ入りました。『淑女』とは、所作や振る舞いだけにとどまらず、女性の生き方、在り方を表す思想そのものだったのです」
甚く感動したローゼン公爵は、今度は淑女会に参加するという。何でも高貴な身分のご夫人やらご令嬢やらが集まり、大いに語らい学び合う場だということだが、いまいちクリストフは釈然としない。ローゼン公爵はご夫人でもなければご令嬢でもないのだ。そんな場に参加して邪魔にならないのだろうか。
さらに、ローゼン公爵は優秀な淑女たる女性達を家庭に埋もれさせるのは国家的損失であると言い始めた。多様な視点を国の運営にもたらすための機会が失われているというのだ。フランティエ侯爵夫人が相当な博識の持ち主で、下手などこぞの貴族の当主よりよっぽど話が合ったらしい。早速女性の登用を推し進めるべく政策を提案することにしたという。
奇しくも、ローゼン公爵が祝福の花嫁として選ばれたことで、何とローゼン公爵家ではアレクシアが女公爵として跡を継ぐことになるとのことだ。自分の娘の後ろ盾となってくれそうな女性と知り合うこともできてローゼン公爵はご機嫌だった。
しかし、アルムウェルテン王国ではまだまだ女性は家庭に入るものという考えが根強い。それをローゼン公爵はどうするつもりなのだろうか。クリストフは疑問に思ったが、ローゼン公爵は意気込みはとどまるところを知らないようだ。何と女性の騎士団まで作るつもりらしい。
だが需要は間違いなくある、とローゼン公爵は説明する。確かに、護衛の騎士とご令嬢の恋についてエレナが話していたのをクリストフも聞いたことがある。娘の護衛に雇ったつもりで、逆に変な虫がつくことになれば貴族も困るだろう。
「いいんじゃないの」
こればっかりはクリストフも賛成である。働ける人間が働けばいいのだ。誰が稼ごうと食べられればいい。何気なくそう答えたつもりだった。ところが次に聞こえたのは予想もしない褒め言葉だった。
「貴方様の柔軟なお考えは素晴らしいものです」
ローゼン公爵は鼻歌でも歌いそうな勢いでメインディッシュの魚にナイフを入れている。いつもの嫌味な言葉も冷たい視線もない。クリストフは急な恥ずかしさに襲われて、蒸された長い殻の貝を手に取った。
小言ばかりかと思いきや急に褒めたり、クリストフのやりたいことをやらせてみたり、ローゼン公爵は一体どういうつもりなのか。茹でられて弾力が増した貝の中身を引っ張りながら考える。もしかすると、これも妻としての務めなのだろうか。
やっと中身が取り出せると思いきや、反動で殻があらぬ方向へ飛んで行き一直線にローゼン公爵の眼鏡に当たった。冷たい視線がクリストフを射抜く。
その後しばらく、夕食からはメインディッシュが消え、連日同じ貝が出ることになった。そしてクリストフはローゼン公爵に張り付かれながら貝の食べ方について逐一指導を受けた。毎晩、皿一杯の貝を食べ終わるまでクリストフが許されることはなかった。
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