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偽装工作に努めます

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「む、むりです!」
「そうだよなぁ?どうしようなぁ?どうしようかなぁ?」
「な、なんとかなりませんか?インクとか?」
「ならんな。婚姻誓約書に血判を押したときの血液と整合性が必要だ。帝国では魔道具で体液中の魔力を感知して、同一のものかを確認できるんだ」
「そんなぁ!?」

私は絶望した。しかし、陛下はニコッと笑いかけて「大丈夫」と言った。

「血であれば良いからな、なんとかなるさ。……よし、どこを切ろうか」
「えぅ!?」

あっさりと言うと、どこからともなくナイフを取り出した陛下は、ニヤニヤしながら近寄ってきた。
この方は嗜虐趣味の気があるのだろうか。怖い。だがそうも言っていられない。

「え、っと…ゆ、指先など?」
「それじゃあ不正しましたと言うような者だろう?見えないところがいいなぁ。たとえば……こことか」
「ひっ」

内腿をするりと撫でられて、睾丸がヒュンとなる。怖い。こんなところ切ったら絶対に痛い。

「うっ!そ、そんなところを!?」
「すこぉし切るだけだよ。秘蔵の魔道具ですぐ治療してやるから、そんなに痛みもないさ」
「うっ……!」

ペタペタと遊ぶように何度か真っ白の内腿を叩かれた後、切れ味の良いナイフで、すぅ、と薄く腿を切られた。

「うっ……ッ」

じっと耐えれば、ぽたりぽたりと血が垂れ落ちて、シーツに数滴の赤が滲む。

「うぅう……っ」
「ははっ、痛かったか。涙目で可哀想に。すぐ治してやるぞぉ白と赤がめっちゃエロいな」
「へ?」
「いや気にするな本音だ」

とても気になる台詞をサラリと流して、陛下はナイフを一振りして血を払うと、さっさと机の上に戻す。あれ、何用のナイフだったんだろう。

「お、あったあった」

そしてカタリと机の下から薄い布のようなものを取り出し、傷口にぺたりと貼り付ける。するとたちまち布が肌と同化して、痛みがすっとひいた。

「えっ、すごい!」
「はははっ、見事だろう。鎮痛効果と治癒促進効果があって、見た目も擬似的な皮膚のようになるんだ。傷自体が治る頃に、ぺらりと剥がれるぞ」
「わぁあー!」

凄すぎる。こんな技術のある国と戦って勝てるわけがない。早々にひれ伏して要求を飲んだ父上のご判断は、やはり賢明だった。あの方は緩いけれど、直感と危機察知能力だけは動物的に大層優れているから。

「……あれ?」

ふと、すぐ治療してくれるなら指でもよかったのではないか?と気づいたが、もう遅い。切って貼った後だ。指用の治療魔道具がなかったのかもしれないし、あまり気にしないことにしよう。

「さて、それじゃあ次は俺だな、もちろん手伝ってくれるな?」
「はい!もちろんでございます!……あ、え?何を?」
「そりゃあもちろん」

陛下が精悍な顔をにやりと邪悪に緩ませる。

「俺の精液をぶちまける、さ」
「…………は」

言われた内容が理解できず、唖然とする私に、陛下はとろりと甘い毒のような声で囁いた。

「なにをぼんやりしてる?……もちろん協力してくれるよな?嘘つき第一サマ?」
「は、はい!もちろんでございます!」

拒否権のない私は、元気にご命令を承ったのだった。




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