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隣国ヘーラクレール編

37 国家戦争なんて起こる訳がない

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「うん、イグリス様も寝れるようになって回復したって。あとナリスニア家から薬草を送って欲しいって伝えておいたわよ」
「ありがとうございます、メリンダさん」

 毎朝の定期連絡でレッセルバーグのナリスニア家に伝言をお願いした。ポーション水を作る材料はヘーラクレールでも手に入るけれど、シロ様が美味しいといって飲む特級ポーションの材料が底を尽きそうだったんだ。

「なあ、シロ……それ、もう飲まなくてもいいんじゃねえか?」
「ンジ? (どして? これおいしいよ)」
「いやあ……なんていうかよ~それ、俺が欲しいな~って」
「ジジ? (まーがれったからもらったら?)」
「気軽にいうんじゃねえよ……まったく」

 カールさんがまたシロ様が飲んでいるポーションを見て苦々しい顔つきをしている。

「特級ポーションなら後でお渡ししますから、シロ様にたくさん飲ませてやってください」
「たくさん!? そういうこと気軽にいうなって! これ一つで国家間戦争が起きたって不思議じゃねえんだぞ」
「そんな訳ないじゃないですか~」

 ちょっと手に入りにくい材料があるだけのの特級ポーションなのに。戦争なんて起こるはずもない。カールさんはそうやってときたま私をからかうから、信じちゃいけないところだ。

「あるんだって! ほんと信じてないね!?」
「だって、一本も売れないんですよ?不人気商品なんですから、放っておいても味が落ちるだけですし」
「味!? 味なんて生きるか死ぬかの瀬戸際に味わってられないぞ!? 売れないのはたけえからだよ! 仕方がないんだよ!!」
「じゃあ、安くしましょう……」
「止めて!? 大混乱が起きるから止めて!!」
「い、一体どうすれば……」
「今まで通りでいいよ……あ、でも俺には一本ちょうだい」
「じゃあ、メリンダさんとトリルさんにも……」
「だからそういうのやめて!?」

 相変わらずカールさんは大げさだった。でもそうしたらたくさんできたらどうしたらいいんだろう?そうだ、アルティナ様に相談すればいいんだ。きっと良い案を授けてくださるに違いない……本当にレッセルバーグには頼りになる方がいっぱいいていつも助けられてばかり。私もいつか頼られる側になれるよう頑張らなくちゃ!

「いっぱい作るので安心してくださいね!」
「そういうところがあぶねえんだよお!」
「ジーッ! (ぼくもおてつだいする~~)」
「シロは大人しく シューの真似でもしてろーっ」
「ジッ!?」

 大丈夫ですよ、カールさんが心配するほど作りませんってば! ……きっと、多分……。
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