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14 その変なおじさんは偉い人

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「この家の空気、全部吸う」

「変なおじさん」

 カイリとキーチェの匂いしかしないボロ家の中でリオウは深呼吸してる。長年探し続けたつがいの匂い、それだけで心が体が湧きたつ。そして息子だという自分に似ている匂い。見た事もない息子の匂いだがなんとも愛おしい。

「服を……全部失敬して……」

「おじさん、変!!」

「では下着だけでも」

「おじさん変態!!カイリに殴られるよ!!」

 扉の前には犬獣人のヘンリーがおろおろしながら立っている。ヘンリーには息子達が変態だと罵る男の正体が分かっている。虎の獣人であり、仕立てのいい服。そして置いてきぼりにしているが供の者が数人付き従い、見えない場所から警護だろう者達が辺りを警戒しつつカイリのベッドに飛び込んで怒られている男を見ている。

「……偉い人が来たよう……!」

 息子達がとても失礼な事を言いまくっているので、自分の首が胴からオサラバすることに恐怖しつつも口を挟まず見守るしかなかった。

「君がヘンリーだね?ありがとう、カイリを助けてくれて」

「は、はいっ!!」

 カイリの家を堪能してやっとリオウはヘンリーに頭を下げた。

「君がいなければ私は只の屍だった。ありがとう、本当にありがとう」

 何度も何度も本心でヘンリーに頭をさげるリオウの実直さにヘンリーは好意を持った。どうせ偉い人なんて平民のヘンリーを適当に扱うはずだと思っていたから。

「所でカイリの事を詳しく教えて欲しい。6年前の事から全て……と、言いたいがまず、「魔石の充電」とはどういうことなんだ?」

「ええと……」

 内緒にしろと言われたことはない。ヘンリーは自分に分かる範囲で、カイリの作ったものと魔石の充電についてリオウに包み隠さず伝えた。この男ならば信用できると直感で信じたからだった。

「……私のカイリは天才か?可愛くて良い匂いでたまらん上に頭もいいだと?」

「あは、ははは……性格も優しいですよ」

「欠点がないのが欠点という奴か……!」

 ヘンリーはカイリを称賛するリオウをやっぱりいい奴だと確信した。この男にならばカイリとキーチェを任せても良さそうだと。


 そうしてリオウは王都へ帰って行った。

「今は静かに見守ってカイリの決断を待ちたい。もしカイリが俺を否定するなら、素直に身を引く。しかしこのカイリの「再充電」の技術は広めたい。世界が変わるぞ」

「……それもカイリ待ちですか?」

「ああ、カイリが嫌がるなら……仕方がない事だ。もう無理やりはしない、絶対に」

 カイリの家から服や下着数枚が新品に取り替えられ、古い物は誰かのポケットに納められたが、小さな町は日常を取り戻していった。



 
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