【本編完結】オマケ転移だった俺が異世界で愛された訳

鏑木 うりこ

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13 順調な旅路

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「きれー」

「キーチェが上手にスライムを仕留めたからね」

 小指の先程のスライムの魔石もカイリの研磨技術にかかればキラキラと輝く。それに穴を開けずに針金を器用に巻き付けて止め、キーチェに小さなブレスレットを作って上げた。

「ママ、上手ー!」

「ありがとう、キーチェ」

 移動中の馬車の中で作っていたものだから、周りの大人いや、キーチェくらいの子供達が目をキラキラさせて見ている。

「凄ーい!」

「はは……ありがとう」

「俺も欲しい!」

 そうだね、子供はそう思うよね。どう断ろうかと思っていたらキーチェが鼻息荒くしたり顔をする。

「これはねー、僕がスライムをやっつけてそれで採れた魔石で作って貰ったんだよ!材料がないと作れないんだよ~?お兄ちゃん達知らないの?」

「スライムの魔石がそんなにきれいなわけないだろ!」

 そうだね、普通は小さな小石みたいなものが採れるか採れないか。色も濁っていてキラキラなんかしていない。でも俺が丁寧に磨けば結構高確率でキラキラ光り出す。

「ママは腕が良いんだもん!」

「そうなんだ!お前の母さん凄いな!」

「へへっ!」

 良かった、子供同士だからこそ丸く収まった。大人なら買ってでも持って来てこちらの手間賃など考えずに安く作れ!なんて吹っかけてくる輩がいない事もない。王都までの旅費がない訳じゃないけれど、行商人のようにあちこちの町で磨いた魔石を売りながら行くのもいいかもしれないな。

「ばいばーい!」

 少し大きな街につき、馬車の中で仲良くなった子供達とキーチェは手を振って別れた。

「さて、キーチェ。魔石屋さんに行こう」

「うん」

 地図や街の人を頼りに魔石屋へ行く。普通魔石は使い捨てなので、中に入っている魔力を使い切ると捨てられる。魔石屋の裏にはそんな空魔石の捨て場が大抵併設されている。

「すみません」

 遠慮がちに魔石屋の扉を開く。

「何のようだい?」

 流石商売人。俺達が客じゃないと気が付いたのか態度は冷たい。でもそれでいい。

「裏の捨てる魔石、何個か頂いていいでしょうか?」

「あー構わんよ。好きなだけ持っていけ」

「ありがとうございます」

 主人に礼を言って商売の邪魔にならないうちに退散する。捨てる魔石にはほんの少し魔力が残っている物もあって、それを利用する人間もいる。だから俺みたいに捨てる魔石を欲しがる人間は一定数いるんだ。

 キーチェと一緒に裏の捨て場へ周り、辺りに散らかさないように使い勝手の良さそうな空の魔石を物色していく。

「ママーこれおっきい!」

 巨大な魔石をキーチェはよろよろと持ち上げるけど、それは大きすぎるなあ。

「大きすぎると商品にしたって持ち歩くのが大変だよ。旅なんだからね?」

「そうだった!じゃあこれ!」

 キーチェの手のひら位の大きさだ。これだってちょっと大きすぎる。

「もっと小さい方が売りやすいかな?」

「じゃあこっち!」

「あ、いいねえ」

 こうして俺達は10個前後の空の魔石を手に入れ、今日泊る宿屋へ着く。そして人目がない部屋で魔石に魔力を再充電していくのだ。

「この世界の人は使い終わった魔石は捨てるしかしないからなあ。また入れればいいのに」

 自分の魔力だけだとすぐに空になっちゃうから、空気中からゆっくり集めて行く。いっぺんに集めると息苦しくなることを知っているんだ。

「よし、そしてピカピカに磨こう」

「ママー!こっちの小っちゃいのにもじゅうでんしたよー」

「キーチェありがとう」

 キーチェも空の魔石に魔力を再充電できるようになっていた。さっすが俺の子だけの事はある!

「ピカピカきれいだねえ~」

「そうだね、大切に使えばずっと使えるもんね」

 俺のこの作業を見るのがキーチェは好きみたいでずっと見ている。

「ふにゃ……」

「ふふ、お休み、キーチェ」

 ベッドの上で横になりながら見ていたキーチェはいつの間にか睡魔に襲われたようで夢の世界へ旅立っていた。

「ぱぱぁ……へへ」

 王都へ着いても会えるわけがないと分かっているけれど、もしかしたら。そう思って手触りのいいキーチェの髪の毛を撫でた。

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