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5 予想通りと予想外

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「アンゼリカ、予想通りかい?」

「貴方が来ている以外は予想通りよ」

 表に止まっていた馬車にはフィリッツが纏めてくれた重要書類が積んである。

「残りはまとめ次第お持ちいたします」

「ええ、頼んだわ」

 フィリッツに微笑みかけ、私達はお祖父様のお屋敷に向かうのでした。今日の日のために全て用意してあるのですから。

「所でアンゼリカ。治水事業なんだが」

「セルドア、私は婚約破棄され、さらに家を追い出されて傷心なのよ。そんな時に商売の話はよして頂戴」

 全くデリカシーのカケラもない男。だから嫌なのよ。

「何言ってんだか!これから目の上のたんこぶもなくなって派手にやるんだろ?乗らなくてどうすんだよ。たんこぶじゃなくてタコだったか?」

 セルドアは肩をすくめて笑い飛ばす。

「そうね、タコね……高くつくわよ?」

「それ以上に儲けさせてくれるんだろ?」

「……当たり前じゃない」

 あの時証言してくれると約束した4人は友人でもあり、出資者でもあり、商売仲間なのだ。
 友情と金という二つのぶっとい絆で結ばれた私達は多分裏切る事はない。

 ……私の投資がコケて大赤字でも出したら、終わるだろうけどね。結構お祖父様のお屋敷に着くまでセルドアと投資の話をして盛り上がってしまった。
 ま、良い儲け話になりそうだったけれど。結局好きなのよ、私も儲け話は!

 何事もなくお祖父様の家につくと、エントランスにお祖父様が出迎えにやって来られた。

「お祖父様、ザザーランから縁を切られましたの」

「よく無事に戻った!アンゼリカ。わしの見る目のなさにアントワーヌには申し訳ない事をしてしもうた」

 アントワーヌはお母様です。お祖父様もお祖母様もご健在なのですが、二人とも涙を流して下さいました。お祖父様とお祖母様に思う事もありますが、いくらお母様と私をラグージ家に戻せと詰め寄っても、首を縦に振らなかったタコが居たのですよ。ラグージ家からの支援が惜しかったようなのです。

「……ザザーランの全てを奪う絶好の機会ですもの。一切の手は抜きません。それも亡きお母様の遺言ですから」

「おーこわ」

 ついて来たセルドアが態とらしく震えてみせますが、あなたも一枚も二枚も噛んでいるでしょうに!

「ああ、雑草一つ生えぬつるっぱげにしてやるわい」

 お祖父様もニヤリと人の悪い笑顔を浮かべたのでした。まあ使用人達は既に動いていますけれどもね?

 お祖父様にしてみれば可愛い娘の命を縮めた憎いタコ。私とお母様が訴えてから、やっと本格的にザザーラン家の内情を調べ、とんでもないと分かって激しく後悔したようでしたけれど。


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