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Ⅱ 魔王国の改革
10節 宰相の受難 ⑨
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「さてノクト、出番だぞ」
上階にさえも響いてくる戦闘音に、流石に異常だと判断しすっ飛んできたら、エイジが暴走して今まさに必殺技を放とうとしている大変なことになっていて。間一髪死者を出さずに済んで、胸を撫で下ろしたベリアルであった。
「おわ~、これは結構ひどいねえ……」
負傷者は百人以上の規模。魔術の流れ弾の煽りを受けた者から、エイジに切り刻まれたり、石化したり、体の一部が欠損したりと重傷致命傷も多い。
「ええと……エイジクン曰く、負傷度合いごとにタグを付けるといいんだっけ……さあみんな、仕事だぁ! タグについてのお勉強はもう済ませたよね? じゃ、やろう」
ノクトの指示の下、テキパキと負傷者の仕分けが始まる。絶命一歩手前は即ノクトの目の前に運ばれ、一瞬で安定領域まで治療されていく。
「全員の治療には、どのくらいかかりそうか?」
「ええと~、この調子なら二時間かからないけど……うん、精神やられている人が多いね。そっちのケアまでやるとなると、今日いっぱい」
「そうか……全くやってくれたな」
「エイジクンのこと?」
「いや? エイジは悪くない。コイツらだ。あちこちに散々迷惑をかけ、エイジにちょっかいかけて逆鱗に触れては、反撃でボコボコにされた挙句こちらの後処理まで増やしおって……けしからん」
「エイジクンに罪はない、と。ボク、てっきりエイジクンのこと引っ叩くかと思ったよ」
そんなことを話しながらも二人の手は止まらない。自分の職務をこなしつつ、部下達に素早くわかりやすく正確に指示を下していく。
「アンタらホントに作業が速いな……」
ベリアルの付き添いでレイヴンも来ていた。しかし、やることもないので見学中。
「そんなんだったら、お前らが今までの事件の対応すればよかったじゃないか」
すると二人から、お前何言ってんの、みたいな目で見られてしまうレイヴン。
「いやいや、エイジクンがしたからこそ意味があるんだよ」
「そうだ。このような事件に対応することで経験を積み、成長できる。彼奴はまだ若いからな。ま、そういう意味では少しだけなら此奴らに感謝してもいいだろう」
「あんたら……ホントにエイジが大好きなんだな」
肯定するかのようにベリアルは朗らかな空気になり、ノクトはウインクした。
「あの、私たちはどうすればよろしいでしょうか……残った方がいいですか?」
そこへ、おずおずと声をかけられる。シルヴァとダッキだ。
「いや、それよりエイジのケアに行ってくれ。落ち込んでるだろうからな。事情聴取は後でいい」
「はい。承知しました」
二人はエイジの後を追うように、やや速足で出ていった。
「にしても……相当な被害だな。エイジはほぼ無傷だったが、上級魔族すら手も足も出ずに蹂躙されるとは」
「うん。あ、そいつ、上級の中でも結構強い奴だよ。でも、かな~り酷くやられてるね。じわじわと甚振られたようだ」
「ふむ……もしやエイジの戦闘力は既に幹部級、いや、お前ら二人に肉薄しているレベルかもしれんな」
「いや、これは超えてるよ」
魔族の中でもベリアルとレイヴン、そしてノクトは、上級魔族とは全く格が違うレベルの戦闘力がある。それさえも現時点で凌ぐとは、末恐ろしい。
「技能や戦闘経験に関してはまだ未熟だが……この短期間で魔術や魔力に慣れて、そして0からここまで武術の腕を上げた」
「それに、異世界の発展した知識があり、頭が切れて想像力もある」
「これは将来有望だねぇ」
皮肉にも、宰相エイジの失脚を狙った反乱分子は、エイジの優秀さを証明し支、持をより強固にする結果に終わったのだった。
上階にさえも響いてくる戦闘音に、流石に異常だと判断しすっ飛んできたら、エイジが暴走して今まさに必殺技を放とうとしている大変なことになっていて。間一髪死者を出さずに済んで、胸を撫で下ろしたベリアルであった。
「おわ~、これは結構ひどいねえ……」
負傷者は百人以上の規模。魔術の流れ弾の煽りを受けた者から、エイジに切り刻まれたり、石化したり、体の一部が欠損したりと重傷致命傷も多い。
「ええと……エイジクン曰く、負傷度合いごとにタグを付けるといいんだっけ……さあみんな、仕事だぁ! タグについてのお勉強はもう済ませたよね? じゃ、やろう」
ノクトの指示の下、テキパキと負傷者の仕分けが始まる。絶命一歩手前は即ノクトの目の前に運ばれ、一瞬で安定領域まで治療されていく。
「全員の治療には、どのくらいかかりそうか?」
「ええと~、この調子なら二時間かからないけど……うん、精神やられている人が多いね。そっちのケアまでやるとなると、今日いっぱい」
「そうか……全くやってくれたな」
「エイジクンのこと?」
「いや? エイジは悪くない。コイツらだ。あちこちに散々迷惑をかけ、エイジにちょっかいかけて逆鱗に触れては、反撃でボコボコにされた挙句こちらの後処理まで増やしおって……けしからん」
「エイジクンに罪はない、と。ボク、てっきりエイジクンのこと引っ叩くかと思ったよ」
そんなことを話しながらも二人の手は止まらない。自分の職務をこなしつつ、部下達に素早くわかりやすく正確に指示を下していく。
「アンタらホントに作業が速いな……」
ベリアルの付き添いでレイヴンも来ていた。しかし、やることもないので見学中。
「そんなんだったら、お前らが今までの事件の対応すればよかったじゃないか」
すると二人から、お前何言ってんの、みたいな目で見られてしまうレイヴン。
「いやいや、エイジクンがしたからこそ意味があるんだよ」
「そうだ。このような事件に対応することで経験を積み、成長できる。彼奴はまだ若いからな。ま、そういう意味では少しだけなら此奴らに感謝してもいいだろう」
「あんたら……ホントにエイジが大好きなんだな」
肯定するかのようにベリアルは朗らかな空気になり、ノクトはウインクした。
「あの、私たちはどうすればよろしいでしょうか……残った方がいいですか?」
そこへ、おずおずと声をかけられる。シルヴァとダッキだ。
「いや、それよりエイジのケアに行ってくれ。落ち込んでるだろうからな。事情聴取は後でいい」
「はい。承知しました」
二人はエイジの後を追うように、やや速足で出ていった。
「にしても……相当な被害だな。エイジはほぼ無傷だったが、上級魔族すら手も足も出ずに蹂躙されるとは」
「うん。あ、そいつ、上級の中でも結構強い奴だよ。でも、かな~り酷くやられてるね。じわじわと甚振られたようだ」
「ふむ……もしやエイジの戦闘力は既に幹部級、いや、お前ら二人に肉薄しているレベルかもしれんな」
「いや、これは超えてるよ」
魔族の中でもベリアルとレイヴン、そしてノクトは、上級魔族とは全く格が違うレベルの戦闘力がある。それさえも現時点で凌ぐとは、末恐ろしい。
「技能や戦闘経験に関してはまだ未熟だが……この短期間で魔術や魔力に慣れて、そして0からここまで武術の腕を上げた」
「それに、異世界の発展した知識があり、頭が切れて想像力もある」
「これは将来有望だねぇ」
皮肉にも、宰相エイジの失脚を狙った反乱分子は、エイジの優秀さを証明し支、持をより強固にする結果に終わったのだった。
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